下村誠「路上のイノセンス」(93年、シンコーミュージック)
佐野元春の過去の作品について書くための参考に、高校生の頃(93年か94年のどちらか)買ったこの本を引っぱり出し、いま読み直している。

「路上のイノセンス」はサブ・タイトルに「佐野元春ドキュメント Early Times Of Motoharu Sano」と付いているように、彼が10代にどのような青春を送り、いかなる経緯でプロのミュージシャンになり、そしてブレイクした直後になぜか渡米する83年までの軌跡を追ったものである。

著者は佐野と近いところにいる人だけあって、書かれていることや佐野自身の発言は実に生々しい。中学生の時トランジスタ・ラジオで聴いた英米のロックン・ロールに夢中になってギターを持ち、16歳になると同時にモーターバイクを乗りまわす。そんな多感な時期に停学、家出、初恋、失恋などの様々な経験をしていく・・・絵に描いたようなティーンエイジャーの青春である。

それと同時に、ミュージシャンとしての成長過程も実に興味深い。高校生の時点で10人編成のバンドを作りコンテストで賞を取ったり、新しいタイプのミュージシャンとしてデビューしてから成功するまでの困難な道のりなど、本当に色々な話が出てきて読む者を飽きさせない。ミュージシャンの伝記の大半はつまらないけれど、そうしたものとは一線を画する内容となっている。その理由はひとえに佐野元春の残している逸話の豊かさにあるのだろう。これほどロック・ミュージシャンらしいエピソードを持っている人はいない。

佐野元春というミュージシャンをよりよく理解するためには最高の一冊である。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索