渡辺美里「ココロ銀河」(07年)
2007年9月27日 渡辺美里 コメント (2)
(1)その手をつないで
(2)KISS & CRY
(3)私のカルテ
(4)ココロ銀河
(5)熱情
(6)青い鳥
(7)輝く道
(8)夏だより
(9)Cosmic Girl
(10)風待草 〜かぜまちぐさ〜
(11)また、明日
(12)おねがい太陽 〜夏のキセキ〜(album mix)
「ココロ銀河」は19枚目のオリジナル・アルバム(ベスト・アルバム、ミニ・アルバム、ライブ・アルバムは除いた数。カバー・アルバム「Cafe mocha 〜うたの木〜」は含めた)だ。まもなくアルバムをともなった「ココロ銀河ツアー」が始まる。この時期を逃したら作品の感想を書けそうもないし、この日の日記に載せようと思う。
その前に私が渡辺美里のどのような聴き手なのかを長々と述べさせてほしい。「渡辺美里のどこが好きなの?」という質問をされたら、迷わず「声」と答えている。私としてはその声を聴いて気持ちよくなっていればそれで十分なのだ。それ以外は特に求めるものはない。そんな人間だから現在にいたるまでファンを続けていられてきたのだろうと自分なりに分析している。今回はその彼女の「声」についての思いを色々書きながら「ココロ銀河」の感想につなげることを試みる。
本音を言うと、彼女の声で最も好きな時期はアルバム「BREATH」(87年)あたりからシングル”いつかきっと”(93年2月)までである。単に力強いだけでなくしなやかな部分も兼ね備えた当時の彼女を超える表現者は、誰に何と言われようと、自分の中には存在しない。あれは92年8月18日(当時の私は高校1年だった)、北海道は真駒内アイスアリーナで初めて体験した彼女のステージは、100以上のライブを観た現在でも最高のものである。当時の映像作品でも確認できるけれど、会場全体に生の声を響き渡らせるパフォーマンスなど、その表現力に圧倒されたことはいまでも生々しく記憶に残っている。この時の私は自他ともに認める彼女の「信者」であったのは間違いない。もしかしたら音楽ファンとして最も「幸せ」(あくまでカッコつき)だった頃かもしれない。
そんな思いが変わったのは、忘れもしない93年6月30日、シングル”BIG WAVEやってきた”の出荷日だった。高校から帰る途中のCDショップでシングルを買い、家に戻ってすぐ聴いてみたのは言うまでもない。これまでの作品は聴いた瞬間から引き込まれるような状態だったけれど、今回は具合が違っていた。曲が自分の中にスッと入ってこないのである。カップリング曲の”素直に泣ける日笑える日”についても同様の印象だった。結局その日は10回ほど繰り返し聴いたけれど、その思いは消えることがない。
彼女の声が変わったのでは?、という認識をもったのは実にこの時からである。しかし、実際のところ何がどうなったのか自分には説明ができない。録音の仕方なのか、歌い方なのか、それとも歌声が衰えてきたのか。とにかく、一言でいえば「彼女らしさ」が薄れていった、というのが率直な印象である。
理由はどうあれ、翌年のアルバム「Baby Faith」(94年)が、”BIG WAVEやってきた”を含む前作「BIG WAVE」(93年)の半分ほどのセールスになってしまったから、私と同じような思いを持った人も少なくなかったといえよう。この時、ファンというのはそんなにバカでもないんだな、とセールスが落ちたのを妙に納得したものである。
それから95年のベスト盤「She loves you」をはさみ、「Spirits」(96年)、「ハダカノココロ」(98年)とアルバムを出すも、売り上げもスケールも着実に落ちていく。私ですら、新作を聴くのも嫌になっていた時期があった。
ともかく転機は93年だった。「BIG WAVE」において無理に自分のスタイルを破壊して「彼女らしさ」を失い、それが原因で売り上げが落ちていく。売り上げの低下を受けて、また無理に試行錯誤をしてますます「彼女らしさ」を失い、さらなる売り上げの低下・・・という繰り返しが渡辺美里の現在までにいたる10数年間だった、というのが私の中での仮説である。
この文章を書くにあたり、過去10年のオリジナル・アルバム(「ハダカノココロ」から「ココロ銀河」まで)をダーッと聴いてみた(こんなことをしているのは日本で自分だけだろうな)。この期間で私のベストは00年の「Love GO! GO!」という思いは今でも変わらない。この「Love GO! GO!」は、失いつつあった彼女の力強さや可愛らしさ、さきほど述べた「彼女らしさ」がいくぶん回復したように思えたからである。
しかし、続く「ソレイユ」(01年)、「ORANGE」(03年)、「Blue Butterfly」(04年)は、また低迷したような感がある。けっこう気に入っている前作「Sing and Roses」(05年)にしても、いま聴き返してみれば歌声はこれまでと顕著な差はない。
「Love GO! GO!」のところで「力強さ」という表現を使ってしまったが、、別に「Love GO! GO!」も、いま聴いてみた限りでは、”BIG WAVEやってきた”以前の「力強さ」があるわけではない。では、何が違うのだろうか。そう考えながらCDを聴いているうちに、今度は彼女の声の「伸び」が気になってきた。
この10年ほどの彼女は自分らしい歌い方ができてなかったと感じる。それが結果として「彼女らしさ」を失わせたのではないか。時には、自信がなさそうに歌っているような印象を受けることもあった。端的に言えば、萎縮して歌っている、とでも言えば良いだろうか。「Love GO! GO!」はそうした声の「伸び」が、ここ数年の作品と比べればの話だが、よく出ているように思える。
大きく回り道をしてしまったけれど、では今回の「ココロ銀河」はどうかといえば、この10年の作品ではもっとも彼女らしく歌えた作品といえるのではないだろうか。力強さはやはり求めるべくもないが、自分の持ち味を出すような歌い方にはなっている気がする。平たく言えば、のびのびと歌っているのだ。聴いている側にもそれが伝わって気持ちが良い。ここ最近の作品では珍しいくらいにCDを繰り返し聴いているのはそうした理由からだと自分では思っている。
また、本作の楽曲はこの10数年で最も充実している作品ではないだろうか。「名曲だらけ!」とまでは言うつもりもないが(そんなことは、ちっとも思ってない)、そこそこの水準の曲は揃っている。アルバム全体を評価する場合にこういう点は重要だ。
ただ個人的に川村結花の楽曲はあまり好きではない。タイトル曲”ココロ銀河”は奈良の薬師寺ライブで聴いた時にもピンとこなかったが、CDでも同じ印象である。邦楽どころか演歌のようなニオイまでもするこの曲を気に入る日はこないような気がする。美里本人は、川村との相性がバッチリ!と言っているようだが、私は同意しかねる。
ではどの曲が好きかといえば、桑村達人の提供した2曲”KISS & CRY””輝く道”がパッと挙がる。”KISS & CRY”は流れるようなストリングスが”サマータイムブルース”を連想させる。個人的にはアルバムのベスト・トラックだ。”輝く道”はサビで”Catch!”とか”GO!”とか歌う部分が可愛らしい。
それ以外も、地味かもしれないが”夏だより””Cosmic Girl””風待草 〜かぜまちぐさ〜”などなかなか良い曲が並んでいる。しかしこの辺は楽曲の水準の問題ではなく、彼女の歌の状態が良いためかもしれない。
冷静になってこのアルバムを評価すれば、最近のものではかなりマシな作品、というくらいが妥当だろうか。”サンキュ”のような極めつけの名曲は無いものの、トータルなアルバムとしてはそこそこ充実した内容といえる。ライブでも永く歌い継がれるスタンダードがこのアルバムから出てくることを願う。
アルバムがこの出来なら秋のツアーもそれなりの内容になるのではないだろうか。それくらいの淡い期待だけは持って神戸と大阪の会場に足を運びたい。
(2)KISS & CRY
(3)私のカルテ
(4)ココロ銀河
(5)熱情
(6)青い鳥
(7)輝く道
(8)夏だより
(9)Cosmic Girl
(10)風待草 〜かぜまちぐさ〜
(11)また、明日
(12)おねがい太陽 〜夏のキセキ〜(album mix)
「ココロ銀河」は19枚目のオリジナル・アルバム(ベスト・アルバム、ミニ・アルバム、ライブ・アルバムは除いた数。カバー・アルバム「Cafe mocha 〜うたの木〜」は含めた)だ。まもなくアルバムをともなった「ココロ銀河ツアー」が始まる。この時期を逃したら作品の感想を書けそうもないし、この日の日記に載せようと思う。
その前に私が渡辺美里のどのような聴き手なのかを長々と述べさせてほしい。「渡辺美里のどこが好きなの?」という質問をされたら、迷わず「声」と答えている。私としてはその声を聴いて気持ちよくなっていればそれで十分なのだ。それ以外は特に求めるものはない。そんな人間だから現在にいたるまでファンを続けていられてきたのだろうと自分なりに分析している。今回はその彼女の「声」についての思いを色々書きながら「ココロ銀河」の感想につなげることを試みる。
本音を言うと、彼女の声で最も好きな時期はアルバム「BREATH」(87年)あたりからシングル”いつかきっと”(93年2月)までである。単に力強いだけでなくしなやかな部分も兼ね備えた当時の彼女を超える表現者は、誰に何と言われようと、自分の中には存在しない。あれは92年8月18日(当時の私は高校1年だった)、北海道は真駒内アイスアリーナで初めて体験した彼女のステージは、100以上のライブを観た現在でも最高のものである。当時の映像作品でも確認できるけれど、会場全体に生の声を響き渡らせるパフォーマンスなど、その表現力に圧倒されたことはいまでも生々しく記憶に残っている。この時の私は自他ともに認める彼女の「信者」であったのは間違いない。もしかしたら音楽ファンとして最も「幸せ」(あくまでカッコつき)だった頃かもしれない。
そんな思いが変わったのは、忘れもしない93年6月30日、シングル”BIG WAVEやってきた”の出荷日だった。高校から帰る途中のCDショップでシングルを買い、家に戻ってすぐ聴いてみたのは言うまでもない。これまでの作品は聴いた瞬間から引き込まれるような状態だったけれど、今回は具合が違っていた。曲が自分の中にスッと入ってこないのである。カップリング曲の”素直に泣ける日笑える日”についても同様の印象だった。結局その日は10回ほど繰り返し聴いたけれど、その思いは消えることがない。
彼女の声が変わったのでは?、という認識をもったのは実にこの時からである。しかし、実際のところ何がどうなったのか自分には説明ができない。録音の仕方なのか、歌い方なのか、それとも歌声が衰えてきたのか。とにかく、一言でいえば「彼女らしさ」が薄れていった、というのが率直な印象である。
理由はどうあれ、翌年のアルバム「Baby Faith」(94年)が、”BIG WAVEやってきた”を含む前作「BIG WAVE」(93年)の半分ほどのセールスになってしまったから、私と同じような思いを持った人も少なくなかったといえよう。この時、ファンというのはそんなにバカでもないんだな、とセールスが落ちたのを妙に納得したものである。
それから95年のベスト盤「She loves you」をはさみ、「Spirits」(96年)、「ハダカノココロ」(98年)とアルバムを出すも、売り上げもスケールも着実に落ちていく。私ですら、新作を聴くのも嫌になっていた時期があった。
ともかく転機は93年だった。「BIG WAVE」において無理に自分のスタイルを破壊して「彼女らしさ」を失い、それが原因で売り上げが落ちていく。売り上げの低下を受けて、また無理に試行錯誤をしてますます「彼女らしさ」を失い、さらなる売り上げの低下・・・という繰り返しが渡辺美里の現在までにいたる10数年間だった、というのが私の中での仮説である。
この文章を書くにあたり、過去10年のオリジナル・アルバム(「ハダカノココロ」から「ココロ銀河」まで)をダーッと聴いてみた(こんなことをしているのは日本で自分だけだろうな)。この期間で私のベストは00年の「Love GO! GO!」という思いは今でも変わらない。この「Love GO! GO!」は、失いつつあった彼女の力強さや可愛らしさ、さきほど述べた「彼女らしさ」がいくぶん回復したように思えたからである。
しかし、続く「ソレイユ」(01年)、「ORANGE」(03年)、「Blue Butterfly」(04年)は、また低迷したような感がある。けっこう気に入っている前作「Sing and Roses」(05年)にしても、いま聴き返してみれば歌声はこれまでと顕著な差はない。
「Love GO! GO!」のところで「力強さ」という表現を使ってしまったが、、別に「Love GO! GO!」も、いま聴いてみた限りでは、”BIG WAVEやってきた”以前の「力強さ」があるわけではない。では、何が違うのだろうか。そう考えながらCDを聴いているうちに、今度は彼女の声の「伸び」が気になってきた。
この10年ほどの彼女は自分らしい歌い方ができてなかったと感じる。それが結果として「彼女らしさ」を失わせたのではないか。時には、自信がなさそうに歌っているような印象を受けることもあった。端的に言えば、萎縮して歌っている、とでも言えば良いだろうか。「Love GO! GO!」はそうした声の「伸び」が、ここ数年の作品と比べればの話だが、よく出ているように思える。
大きく回り道をしてしまったけれど、では今回の「ココロ銀河」はどうかといえば、この10年の作品ではもっとも彼女らしく歌えた作品といえるのではないだろうか。力強さはやはり求めるべくもないが、自分の持ち味を出すような歌い方にはなっている気がする。平たく言えば、のびのびと歌っているのだ。聴いている側にもそれが伝わって気持ちが良い。ここ最近の作品では珍しいくらいにCDを繰り返し聴いているのはそうした理由からだと自分では思っている。
また、本作の楽曲はこの10数年で最も充実している作品ではないだろうか。「名曲だらけ!」とまでは言うつもりもないが(そんなことは、ちっとも思ってない)、そこそこの水準の曲は揃っている。アルバム全体を評価する場合にこういう点は重要だ。
ただ個人的に川村結花の楽曲はあまり好きではない。タイトル曲”ココロ銀河”は奈良の薬師寺ライブで聴いた時にもピンとこなかったが、CDでも同じ印象である。邦楽どころか演歌のようなニオイまでもするこの曲を気に入る日はこないような気がする。美里本人は、川村との相性がバッチリ!と言っているようだが、私は同意しかねる。
ではどの曲が好きかといえば、桑村達人の提供した2曲”KISS & CRY””輝く道”がパッと挙がる。”KISS & CRY”は流れるようなストリングスが”サマータイムブルース”を連想させる。個人的にはアルバムのベスト・トラックだ。”輝く道”はサビで”Catch!”とか”GO!”とか歌う部分が可愛らしい。
それ以外も、地味かもしれないが”夏だより””Cosmic Girl””風待草 〜かぜまちぐさ〜”などなかなか良い曲が並んでいる。しかしこの辺は楽曲の水準の問題ではなく、彼女の歌の状態が良いためかもしれない。
冷静になってこのアルバムを評価すれば、最近のものではかなりマシな作品、というくらいが妥当だろうか。”サンキュ”のような極めつけの名曲は無いものの、トータルなアルバムとしてはそこそこ充実した内容といえる。ライブでも永く歌い継がれるスタンダードがこのアルバムから出てくることを願う。
アルバムがこの出来なら秋のツアーもそれなりの内容になるのではないだろうか。それくらいの淡い期待だけは持って神戸と大阪の会場に足を運びたい。
コメント
私も同感です。
ココロ銀河で復活して行く様願います。
ところで、私の感想のどのあたりに共感してくれたのでしょうか?その辺を書いてくれたら嬉しいですね。
復活、とまではいかないけど、少しでも彼女の取り巻く環境が良くなってくれたらと。私としてはそれくらいの思いですね。