ディーヴォ&ポリシックス東京公演「SUMMER SONIC EXTRA vol.7」(08年8月11日、SHIBUYA-AX)
午前中は出勤し、いった部屋に戻ってから、午後3時15分ごろ新幹線の自由席に乗る。東京駅に着いたのは午後5時40分ごろだった。土曜日に渡辺美里のライブに行ったにもかかわらず、またもや上京である。我ながら非効率なことをするものだ。

今回の目的はディーヴォ(Devo)とセックス・ピストルズ(Sex Pistols)の単独公演を観ることである。東京でしかライブがないのが辛いところだけれど、サマーソニックに行けなかった身としては上京するより選択が無い。去年はロンドンや九州まで行ったわけだし、今年も東京でライブを観るくらいの遊びはしておこう。そう思ったわけだ。

今日のライブは渋谷の坂の上にあるライブハウス「SHIBUYA-AX」で、開場が午後6時だった。いつもならば開場前に並んで待たなければならない。しかし今回は2階席のチケットを確保したおかげで急ぐ必要はない。近所で食事をとってからAXに着いたのが6時40分ごろ、それでも余裕をもって会場に来ることができた。2階席と聞くと遠く感じるかもしれないけれど、ステージからの距離は意外に近い。意味も無く立って待つよりもこちらの方がずっと良いだろう。しかし、2階席は半分も人が埋まっていないし、1階席も6割くらいの入りだろうか。お客の中ではディーヴォがかぶっているピラミッドのような帽子(エナジードームというらしい)をつけている人が目につく。どこで売っているのだろうか。

午後7時を少し回って、まずポリシックスの4人が登場する。誰が見てもディーヴォの影響が明らかなバンドである。彼ら目当ての人も多かったのか、1階の前方5分の1くらいは盛り上がっていた。確かに音はバンクにも通じるハードなものだけれど、本家ゆずりのあのギクシャクしたリズムに乗って暴れられるのは不思議だ。それはともかく、バンド自体もディーヴォと共演できるということでかなりテンションは上がって楽しそうにしていたように見える。40分の演奏をして終了。ライブ自体はそれほどのめり込めなかったけれど、最初から最後までロボットのような動きに徹していたキーボードの女性には感心した。

それから25分ほどの舞台替えがおこなわれ、いかにもアメリカというシュールで不気味な映像が流れてから、ディーヴォがいよいよ登場する。ステージの5人のうち3人くらいはかなり太っていた。これは仕方ない話だけれど。

ところで、わざわざ上京してまでディーヴォを観るというから私をよっぽどのファンと思う人もいるかもしれない。しかし正直いえばCDもろくに聴いたことはなく、こないだ紙ジャケットで出た「頽廃的美学論」(78年)を買ったのが初めてである。しかもそのアルバムですらあまり気に入らなかった。よって、ほとんど期待値はゼロだったといえる。

だが実際のステージはといえば、そんな私の斜に構えた態度を正すような内容だった。まず意外に普通のロックが展開されるのに驚く。「普通」というのは語弊のある表現だけれど、要するにすんなりと聴けるという意味で、パンクだのニューウェーブだのという印象は感じなかったということだ。ディーヴォに対して抱いていたギッコンバッタンなイメージはむしろポリシックスのほうが体現しているのではないだろうか。動きも昔の映像で観たようなロボットというものでもなかった。これはどう解釈したらよいのだろう。ディーヴォが最初のアルバムを出したのは1978年、いまから30年も前のことである。彼らの作った音がすっかり定着し、それほど奇抜なものでもなくなり、自然体に楽しめる音になってしまったということか。

曲目など語れる知識がないのが悲しいけれど、ライブ自体は本当に楽しめた。観客もステージの5人の一挙一動に声援を送っている。バンドも大量のスーパーボールを会場にまき散らすなど、いろいろなパフォーマンスをしてくれた。ネットで感想を見ても絶賛の嵐である。最後の曲“Beautiful World”が終わり客電がついてからも大半の人は帰らずに拍手を送るほどだった。いかにこの日のライブが破格の出来だったか想像もつくだろう。ポリシックスがデザインした「ディーヴォ」と文字が入ったTシャツも終演後には完売していた。

さきほども書いたけれど、ほとんど期待していないライブではなった。しかし、恐ろしいことに、今年のベスト・ライブの一つと言えるほどのものである。興味本位でライブ会場に足を運ぶのも悪くない。思いがけない収穫の一夜だった。

さて、明日は問題のセックス・ピストルズである。

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