またしても旬の過ぎたような話題で恐縮だが、先日、京都教育大学での生協で起きたあの事件について書きたい。

詳しい経緯は以下のページなどに書いてあるが、

プリン4千個〝誤発注〟も ツイッター効果で完売 京都教育大生協
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121112/wlf12111216570011-n1.htm

いつもだったら20個しか発注しないプリンをパソコンの入力ミスで4000個が届いたという話である。通常の200倍というとんでもない数だ。

Twitterの投稿などでこの噂が広まりプリンはその日のうちにほぼ完売したというこの時代らしい美談となった。しかし同じような業務を担当してる自分としては、発注した人の心境はさぞかし辛かっただろう、と想像してしまう。私も発注ミスを何度となくしてしまい苦しんだ経験がある。、もし売り切れない大量のプリンが目の前に現れたら、涙目になって絶望するに違いない。しかも賞味期限があるわけだし・・・。

だがこの件に関して、あくまで誤発注する人間が悪い、発注先はいちいち数の確認なんてしない、など厳しい目をしている人はけっこういるようだ。ただ、これはどこかのスポーツ新聞の記事に載っていたことだが、プリン4000個というのは近畿全体の大学生協で1週間に販売される量より多いとかなんとか(出典が見つりませんでした。失礼)、それくらいのとんでもない数字である。

今回の件は、どこかの段階で「この注文は何かおかしい」と確認をする仕組みがなかったのがそもそも不幸の始まりだったと思う。そして、これに対して何か手を打たないと似たような事例がまた起きるだろう。

発注業務についていえば、こうしたミスとは常に隣り合わせである。勝手な想像をすれば、プリンの注文というのは生協全体にある膨大な商品の1つに過ぎない。何百もの商品の確認・発注をするうえで見間違いなど出てきて当然である。また、職員にしても発注業務だけしているだけでない。掃除とかレジとか商品整理とかの合間をぬってしているわけだ。そうした合間というかスケジュールでパソコンに入力をしている。そして、それをチェックするような相手もいないのだろう(そうでなければ、こんな間違いなどまず生じない)。

なんだお前はこんなアホな失敗をした奴を擁護するのか、と思われるだろう。確かに同情の気持ちもあるにはあるが、私が一番言いたいのは人間である限りこうしたミスは避けられないということだ。そういう事実を踏まえないでミスをした人間を責めたところで何の解決にもならないし人類の進歩もあり得ない。

発注業務というのは世間であまり上等な仕事という位置づけではないかもしれないが、それほど簡単な仕事でもないと経験した身からはいえる。膨大な数の商品の売れ行きを把握して短時間で発注を完了させるのは、全ての商品の流れが頭に入っていなければ不可能なのだ。

また、これは部外者には想像もつかない話だろうが、発注業務には「締め切り」がある。例えば午後3時までに発注しないと翌日にはメーカーから商品が届かないのだ。他の雑用をこなしながらその準備をしなければならないから、そんなに呑気にできる作業ではない。そういうわけでスムーズに発注ができるまでには1ヶ月とか2ヶ月とかどうしてもある程度の習熟期間が必要になってくる。当事者の責任を問う前にそのあたりの事実認識がしてもらいたいと願う。

当の私もこうした業務をするにあたり、商品の理解をして発注を期限まで済ませるようになるまで3ヶ月はかかった。そして発注する前にFAX用紙(私の職場はこれで注文をする)をザッと確認して送信するようにした。そういうチェックをすることにより誤発注はかなり少なくなってきた。が、月にゼロという境地にはなかなかいかない。ちょっと多めに注文してしまったとかという程度のことは結構ある。

世間がしている大きな誤解に、

「単純作業=間違いなど出るはずがない」

という思い込みがあるのではないか。しかし、100も200も作業をしていたらミスの1つくらい出る、と考える方が現実的だと思うのだが。

当事者がしっかりしていれば間違いなど起きるはずがない、などという人間の本質を無視した何の根拠もない精神論の下では大きなミスがまた現場から出てくる、という指摘だけはこういう機会にしておきたい。

人為ミスをゼロにはできない。しかし工夫によって減らすことはできる。

このくらいの考え方が妥当だと思うのだが、いかがだろう。

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