本日の京都の最高気温が「30度」というのは行き過ぎだが、快晴になってくれて本当に良かった。デビューからちょうど30周年の節目を迎える今日、大阪城野外音楽堂でライブがおこなわれる。まだ不安定な気候が続く春の時期にあってここまでの天気になるというのは実に幸運なことだ。

かつて横浜港そばでおこなわれた夏のライブ(厳密に言うと2007年7月29日の「渡辺美里Cosmic Night 2007」)が終わった直後に大雨がドッと降ってきたことを連想した。この人の野外ライブは何度も参加しているが、公演の最中に天気で邪魔されたという経験がない。天気というのは自然現象であり人智の及ぶところではないのだが、彼女はこうしたものに対して運というか「何か」を持っているのかもしれない。

開演は午後3時半と早めの時間設定になっていた。まだまだ暑さも厳しい時だったので開演の20分ほど前に席へ着く。会場を見渡しながらボーっと座って待っていたら、

「懐かしい!“Easy Lover”や!」

という女性の声が後ろから聴こえてきた。スピーカーから流れた曲に反応したのだ。“Easy Lover”とはフィル・コリンズとフィリップ・ベイリーとのデュエット曲で、1984年11月に発売され全米2位を記録する大ヒットとなった。続いてスティーヴィー・ワンダーの全米ナンバー1ヒット“Part-Time Lover”(85年)がかかった。このあたりは美里がデビューした時期を意識した選曲なのだろう。

しかし1985年といえば、私はまだ小学3年生の頃である。そこから今日までの30年という年月を思うと気が遠くなってくる。特にブランクのようなものもなくここまで活動を続けてきたという事実は素朴に凄いことだ。人生でブランクの占める割合の方が大きい自分としての率直な感想である。

そんなことを思っているうちに午後3時35分ごろ、スピーカーからは

「1996・・・Spirits」

とか

「1991・・・Lucky」

と歴代のアルバム名とその発売年、そして収録曲の断片が流れてくる。それがライブ開始までのカウントダウンとなっていた。そして30年前の1985年までさかのぼり、

「I’m Free」

と告げられると、バンドの演奏が始まりデビュー曲“I’m Free”のイントロが流れ出す。自身のオリジナルではなくカバー曲ゆえ熱心なファンしか知らない曲だが(3枚組ベスト・アルバムや4枚組ベストにしか入っていない)、何も考えずにライブに臨んでいた自分には意表を突かれる冒頭だった。ただ正直な話、25周年(2010年)の時の5月2日にも歌われたのでものすごく意外というほどでもなかったけれど。

“I’m Free”に続いては、一気に時代を30年ワープして最新アルバム「オーディナリー・ライフ」から“青空ハピネス”が出てくる。今日はこのアルバムから実に8曲も披露されたが、幸い中身のある作品になったのでセット・リストは非常に締まったものになった気がする。特に、元日ライブに聴いた時はあまりピンとこなかった“今夜がチャンス”は不思議と印象がグッと良くなった。アルバムを繰り返しかけているうちにこちらの感覚が変わったのかもしれない。

個人的に最も驚いたのは、大阪の地でこの日を迎えられて嬉しいです、と感慨深げなMCをしてからの“泣いちゃいそうだよ”である。この曲をフル・コーラスで聴いたのは1992年の「スタジアム伝説」でのライブ以来、実に23年ぶりのことだったからだ(メドレーの中で触りの部分を聴いたことはあったかもしれない)。特に人気のある曲でもないだろうが、当時は「この人が歌えばなんでも良かった」という心境だったので非常に思い入れは強い。かなり無理のある歌い方が入っているため現在の彼女が歌うにはだいぶ苦しいものがあったけれど、そんなことはどうでも良かった

これを聴きながら、

「ああ・・・今日この場所にいられて本当に良かったなあ・・・」

と青空を見上げながら、幸せな気分に浸っていた。

デビューの日でしかも30周年ということもあって、終始会場は祝福ムードに包まれているように感じた。連休を機会に全国から熱心なファンが終結したのだろう。アンコールの前に発生した「美里!チャチャチャ!」や終演後に三本締めをする輩については相変わらず閉口してしまうが。

ところで、今回の大阪と東京のライブではゲストとしてギタリストの押尾コータローが出演した。彼を招いた理由がいま一つわからなかったけれど、別に節目とかいったことでもなく今回お互いの都合がついて共演が今回実現したということか。それはともかく、押尾のギターだけで歌われた“悲しいボーイフレンド”と“BELIEVE”は彼女の声が前面に出ている感じがして良かった。

この2曲に限らず全編を通して声はよく出ていたといえる。全国47都道府県を回るツアーの皮切りということで気合いも入っていたにちがいない。特にアンコールでの“オーディナリー・ライフ”は、生で聴くほうが素晴らしいとは予想していたけれど、神懸かっている時の彼女の片鱗を見せられた気がしたし、まその歌いっぷりには胸に迫るものがあった。全20曲、2時間半と思ったより少し短めではあったものの、充実した内容で満足はしている。

ライブの終わりで、年末の12月23日に再び大阪フェスティバルホールで公演があると初めて発表される。帰り際にチラシを渡されて、しかも今からチケットを受け付けると書いていたのには少し苦笑した。こちらは京都公演、そしてできれば滋賀にも足を出そうかと思っているが、その工面もできてない状態だったからだ。それが済んでから検討させてもらいたい。ただ、フェスティバルホールでのこの人は調子が良い時が多いので、その点では少し期待できるかもしれない。

最後に今日の曲目を記す。

【演奏曲目】

(1)I’m Free
(2)青空ハピネス
(3)夢ってどんな色してるの
(4)泣いちゃいそうだよ
(5)点と線
(6)10 years
(7)悲しいボーイフレンド(押尾コータローと二人で)
(8)BELIEVE(押尾コータローと二人で)
(9)さくらの花のさくころに(バンドと押尾コータローと一緒に)
(10)A Reason
(11)荒ぶる胸のシンバル鳴らせ
(12)今夜がチャンス
(13)涙を信じない女
(14)My Revolution
(15)サマータイムブルース
(16)ここから

〈アンコール〉
(17)オーディナリー・ライフ
(18)恋したっていいじゃない
(19)チェリーが3つ並ばない
(20)eyes

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