2009年最後の日は寒さの厳しい日となった。昼間は某ラーメン店で塩ラーメンを食べていたけれど、その時間も既に雪がちらついていた。
「こんな状態だったら、今夜はどうなるのだろう?」
そんなことを思いながら塩ラーメンをすすっていた。
今夜は大阪国際会議場まで渡辺美里のライブへ行く。開演はなんと午後10時である。2009年から10年をまたぐ、いわゆる「カウントダウン・ライブ」を開催するからだ。部屋を出たのは午後7時ごろ、市バスで京阪「出町柳」駅前まで向かい、そこから京阪電車の快速急行で「中之島」までは1本で行ける。会場は駅のほぼ真上である。京阪電車も路線が増えて多少は便利になった。しかし改札口を出て地上に出たとたん、とんでもない寒さが襲いかかってくる。これは寒い!急いで会場の中を入りエレベーターでメインホールに向かった。
会場に着いたのは9時すこし前だったろうか。最近は「ファンクラブ優先入場」というものを実施していて、会員証やファンクラブ先行販売で買ったチケット(種類が違う)を提示すれば先に会場へ入ることができる。さっさと入りたいのでチケットを見せて場内に進んだ。入り口で記念品の升をもらう。元日ライブでも既に2個もらっているのでこれが3個目となる。升なんて使わないんだけどなあ。
グッズ売り場は長蛇の列で、一般のお客が入場するのを待たずして「sold out」(完売)の商品もすでに出ている。また大晦日らしく年越しそばのブースもあり、そこも盛況だ。さらに、会場内にはまだ物販があった。日本酒である。1本6000円という結構な値段だったので無視するつもりだったが、樽酒が300円で提供されていたので、ライブ前にもかかわらず飲んでしまった。酒はもちろんさっきの升に入れてもらう。ここで初めて升が役に立ったけれど、これで酒を飲むと木の味がしていただけない。酒自体も甘さがちょっと強いし個人的に好みではなかった。その酒を空けたらエスカレーターを上がって席に向かう。
私の席は「Bm列12番」で、前後では真ん中、左右では中央よりやや左、というくらいの普通の席だった。元旦ライブではファンクラブ先行でも2階席の後方に割り振られたから、今回のチケットの売れ行きはやや渋かったのだろうか。それとも私の運が良かったのか、というほど良い席でもないけれど。周りを見れば
「25」という字がプリントされた真っ赤なTシャツを着ている人が目につく。来年で彼女もデビュー25周年だ。そんなことを思っているうちに午後10時となり、”世界で一番遠い場所”で今年最後のライブが幕が開ける。そして”すき”、”BELIEVE”と、どこかで見たような曲順となる。彼女のライブに対しては常に期待値ゼロで会場に臨んでいる私ではあるが、今夜も平凡な選曲で終わるかなあと、この時点ではうっすらと予測していたものである。
しかし、である。この日の彼女は、特に往年のファンに対して、とんでもないお年玉を用意していた。まず圧巻だったのは、来月に発売されるシングル・コレクション「Song is Beautiful」からメドレーを披露したことだ。出だしが”メリーゴーランド”(92年)というのも意表をつかれたし、すっかり忘れていた”やさしく歌って~Killing me softly with his song~”(02年)や”YOU~新しい場所~”(02年)というのも面白い。”一緒だね”(97年)の時期はファンを続けるかどうか個人的に最も悩んでいたなあ、などと思い出したり、ともかく色々なことが頭の中を駆け巡る瞬間だった。
初期の”死んでるみたいに生きたくない ”(85年)や”Teenage Walk”(86年)あたりが会場では盛り上がっただろうが、私としては初めてライブで”Power-明日の子供-”(90年)と”君の弱さ”(88年)を聴けたのが大収穫だった。自分らしくないが、会場で一緒になって歌ってしまうほどである。CDでも長らく聴いてなかったけれど、自分の体の中に深く刻まれているんだなあ、と我ながら感心してしまった。MCで美里は、「通好み」の選曲うんぬんと言っていたけれど、いやはや恐れ入った。このメドレーが終わった時点で、もう満足です、という心境である。
しかし、驚きはまだ終わりではなかった。ゴンチチのゲスト参加、”恋したっていいじゃない”の途中で新年のカウントダウンをして終盤へと突入したわけだが、本編の最後がなんと”Promise”(95年のシングル”世界で一番遠い場所”のカップリング曲)だったのである。この曲も、一度は聴きたいなあ、と長年思っていたので、こんなところで叶えられるとは驚きだった。
こういうこと言うのもどうかと思うけれど、彼女のライブにしては珍しく収穫の多い内容となった。こうしてメドレーとしてまとめて聴くと、彼女の持っている曲は、大半は最初の10年間くらいだが、豊かなカタログを持っているのだなあと実感する。それはポッと出の歌手やミュージシャンとでは比較対象にならない質量である。これからもぜひ、これらの財産をうまく活動につなげれられたら嬉しいのだが。
ライブが終わったのは午後1時近くである。すぐ京阪電車に乗り、タクシーで部屋に戻ったのは午後3時ごろだった。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)世界で一番 遠い場所
(2)すき
(3)BELIEVE
(4)Gift
(5)「Song is beautiful」メドレー
メリーゴーランド /その手をつないで /IT’S TOUGH /死んでるみたいに生きたくない /やさしく歌って~Killing me softly with his song~ /一緒だね /YOU~新しい場所~/ Teenage Walk /Power-明日の子供-/ドラえもんのうた /君の弱さ
(6)ムーンライト ダンス
(7)スピリッツ~大阪ラプソディー
(8)サマータイム ブルース
(9)始まりの詩、あなたへ
(10)My Revolution
(11)サンキュ(with ゴンチチ )
(12)Moon river (with ゴンチチ )
(13)課外授業 (ゴンチチのみ)
(14)放課後の音楽室 (ゴンチチのみ)
(15)あしたの空
(16)恋したっていいじゃない※ここでカウントダウン
(17)ジャングル チャイルド
(18)グッときれいになりましょう
(19)GROWIN’ UP/Can’t take my eyes off of you
(20)Promise
<アンコール>
(21)10 years
(22)いつか きっと
「こんな状態だったら、今夜はどうなるのだろう?」
そんなことを思いながら塩ラーメンをすすっていた。
今夜は大阪国際会議場まで渡辺美里のライブへ行く。開演はなんと午後10時である。2009年から10年をまたぐ、いわゆる「カウントダウン・ライブ」を開催するからだ。部屋を出たのは午後7時ごろ、市バスで京阪「出町柳」駅前まで向かい、そこから京阪電車の快速急行で「中之島」までは1本で行ける。会場は駅のほぼ真上である。京阪電車も路線が増えて多少は便利になった。しかし改札口を出て地上に出たとたん、とんでもない寒さが襲いかかってくる。これは寒い!急いで会場の中を入りエレベーターでメインホールに向かった。
会場に着いたのは9時すこし前だったろうか。最近は「ファンクラブ優先入場」というものを実施していて、会員証やファンクラブ先行販売で買ったチケット(種類が違う)を提示すれば先に会場へ入ることができる。さっさと入りたいのでチケットを見せて場内に進んだ。入り口で記念品の升をもらう。元日ライブでも既に2個もらっているのでこれが3個目となる。升なんて使わないんだけどなあ。
グッズ売り場は長蛇の列で、一般のお客が入場するのを待たずして「sold out」(完売)の商品もすでに出ている。また大晦日らしく年越しそばのブースもあり、そこも盛況だ。さらに、会場内にはまだ物販があった。日本酒である。1本6000円という結構な値段だったので無視するつもりだったが、樽酒が300円で提供されていたので、ライブ前にもかかわらず飲んでしまった。酒はもちろんさっきの升に入れてもらう。ここで初めて升が役に立ったけれど、これで酒を飲むと木の味がしていただけない。酒自体も甘さがちょっと強いし個人的に好みではなかった。その酒を空けたらエスカレーターを上がって席に向かう。
私の席は「Bm列12番」で、前後では真ん中、左右では中央よりやや左、というくらいの普通の席だった。元旦ライブではファンクラブ先行でも2階席の後方に割り振られたから、今回のチケットの売れ行きはやや渋かったのだろうか。それとも私の運が良かったのか、というほど良い席でもないけれど。周りを見れば
「25」という字がプリントされた真っ赤なTシャツを着ている人が目につく。来年で彼女もデビュー25周年だ。そんなことを思っているうちに午後10時となり、”世界で一番遠い場所”で今年最後のライブが幕が開ける。そして”すき”、”BELIEVE”と、どこかで見たような曲順となる。彼女のライブに対しては常に期待値ゼロで会場に臨んでいる私ではあるが、今夜も平凡な選曲で終わるかなあと、この時点ではうっすらと予測していたものである。
しかし、である。この日の彼女は、特に往年のファンに対して、とんでもないお年玉を用意していた。まず圧巻だったのは、来月に発売されるシングル・コレクション「Song is Beautiful」からメドレーを披露したことだ。出だしが”メリーゴーランド”(92年)というのも意表をつかれたし、すっかり忘れていた”やさしく歌って~Killing me softly with his song~”(02年)や”YOU~新しい場所~”(02年)というのも面白い。”一緒だね”(97年)の時期はファンを続けるかどうか個人的に最も悩んでいたなあ、などと思い出したり、ともかく色々なことが頭の中を駆け巡る瞬間だった。
初期の”死んでるみたいに生きたくない ”(85年)や”Teenage Walk”(86年)あたりが会場では盛り上がっただろうが、私としては初めてライブで”Power-明日の子供-”(90年)と”君の弱さ”(88年)を聴けたのが大収穫だった。自分らしくないが、会場で一緒になって歌ってしまうほどである。CDでも長らく聴いてなかったけれど、自分の体の中に深く刻まれているんだなあ、と我ながら感心してしまった。MCで美里は、「通好み」の選曲うんぬんと言っていたけれど、いやはや恐れ入った。このメドレーが終わった時点で、もう満足です、という心境である。
しかし、驚きはまだ終わりではなかった。ゴンチチのゲスト参加、”恋したっていいじゃない”の途中で新年のカウントダウンをして終盤へと突入したわけだが、本編の最後がなんと”Promise”(95年のシングル”世界で一番遠い場所”のカップリング曲)だったのである。この曲も、一度は聴きたいなあ、と長年思っていたので、こんなところで叶えられるとは驚きだった。
こういうこと言うのもどうかと思うけれど、彼女のライブにしては珍しく収穫の多い内容となった。こうしてメドレーとしてまとめて聴くと、彼女の持っている曲は、大半は最初の10年間くらいだが、豊かなカタログを持っているのだなあと実感する。それはポッと出の歌手やミュージシャンとでは比較対象にならない質量である。これからもぜひ、これらの財産をうまく活動につなげれられたら嬉しいのだが。
ライブが終わったのは午後1時近くである。すぐ京阪電車に乗り、タクシーで部屋に戻ったのは午後3時ごろだった。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)世界で一番 遠い場所
(2)すき
(3)BELIEVE
(4)Gift
(5)「Song is beautiful」メドレー
メリーゴーランド /その手をつないで /IT’S TOUGH /死んでるみたいに生きたくない /やさしく歌って~Killing me softly with his song~ /一緒だね /YOU~新しい場所~/ Teenage Walk /Power-明日の子供-/ドラえもんのうた /君の弱さ
(6)ムーンライト ダンス
(7)スピリッツ~大阪ラプソディー
(8)サマータイム ブルース
(9)始まりの詩、あなたへ
(10)My Revolution
(11)サンキュ(with ゴンチチ )
(12)Moon river (with ゴンチチ )
(13)課外授業 (ゴンチチのみ)
(14)放課後の音楽室 (ゴンチチのみ)
(15)あしたの空
(16)恋したっていいじゃない※ここでカウントダウン
(17)ジャングル チャイルド
(18)グッときれいになりましょう
(19)GROWIN’ UP/Can’t take my eyes off of you
(20)Promise
<アンコール>
(21)10 years
(22)いつか きっと
別に待っていたわけではないけれど、渡辺美里の野外ライブの日程がようやく発表された。日時は8月22日(土)午後5時開演で、会場はおととし(07年7月29日)と同じく横浜だ。会場名は「横浜赤レンガパーク特設会場」となっている。
ちなみに前回の横浜は会場名が「横浜みなとみらい・新港埠頭」だった。おそらく会場規模が縮小されておこなわれるのだろう。確信があるわけでもないけれど、2年前より動員が見込めるとは思えないからだ。
チケットもファンクラブの先行予約で申し込んだ。内容について多くは期待しない。しかし以前の横浜ライブでは珍しく神懸かりともいえる素晴らしい場面があったり、“Tokyo Calling”、“夏のカーブ”、“一瞬の夏”など貴重な曲も聴けたという嬉しい瞬間も立ち会えたのを覚えている。
ともかく会場には行く。私にとってはそれだけだ。
ちなみに前回の横浜は会場名が「横浜みなとみらい・新港埠頭」だった。おそらく会場規模が縮小されておこなわれるのだろう。確信があるわけでもないけれど、2年前より動員が見込めるとは思えないからだ。
チケットもファンクラブの先行予約で申し込んだ。内容について多くは期待しない。しかし以前の横浜ライブでは珍しく神懸かりともいえる素晴らしい場面があったり、“Tokyo Calling”、“夏のカーブ”、“一瞬の夏”など貴重な曲も聴けたという嬉しい瞬間も立ち会えたのを覚えている。
ともかく会場には行く。私にとってはそれだけだ。
映画「いけちゃんとぼく」の主題歌に
2009年3月22日 渡辺美里
久しぶりに渡辺美里の公式サイトを覗いてみると、初夏に発売予定の新曲“あしたの空”が6月公開の映画「いけちゃんとぼく」の主題歌になるというニュースを見つけた。
実はここ最近、彼女の曲はけっこう映画主題歌に使われている。しかし、「ハンサムスーツ」(08年)は“My Revolution”(86年)、「悲しいボーイフレンド」(09年)は“悲しいボーイフレンド”(85年)と、取り上げられるのは大昔の曲ばかりであった。作品の質やセールスは80年代が最も良かったので仕方ない部分もあるかもしれない。一方、今回は新曲が起用されたのは大きな違いである。
それにしても、映画の原作が西原理恵子の絵本「いけちゃんとぼく」(06年。角川書店)だと知った時は、
「へえ。意外な組み合わせだな」
というのが率直な感想だった。
漫画全般についてほとんど知識はないけれど、浪人時代(95年)に読んだ「恨ミシュラン」(93-95年。朝日新聞社。全3巻。神足裕司との共著)をきっかけに彼女の作品を追いかけた時期はある。「まあじゃんほうろうき」(90-94年。竹書房。全4巻)、「ちくろ幼稚園」(91-95年。小学館。全3巻)、「ゆんぼくん」(90-97年。竹書房。全5巻)といった漫画から、「サイバラ式」(00年。角川書店)のようなエッセイ入りのものまでけっこう幅広くカバーしていた。絵はわりとかわいい雰囲気だけれど、そこに描かれている世界は社会の底辺といった感じの人ばかりで、かなり毒を含んだ作風だ。その組み合わせに惹かれていったのだと思う。そして、渡辺美里とは対極の位置にいる人ではないだろうか。それゆえ今回の組み合わせに驚いたのである。
ある時期から彼女の作品をあまり読まなくなった。それは第43回文藝春秋漫画賞を受賞した「ぼくんち」(96-98年。小学館。全3巻)が完結した98年あたりだったか。明確な理由はないけれど、多作な作家のため作品を追いかけるのに疲れたのだと今となっては思う。また、たまに立ち読みで本を手にしてみても彼女は絵のタッチがかなり荒れていて、読みづらく感じ敬遠していたこともあった。
最近の彼女についても「毎日かあさん」(毎日新聞で連載中)など家族とか子育てとか私には興味が湧かないテーマに比重が置かれているようで、彼女の作品に向かい合うには悪い条件が重なりすぎている。振り返ってみれば、10年くらい読んでいないことになるか。
前置きは長くなったが、肝心の「いけちゃんとぼく」である。しかし、いろいろネットで調べてみても中身がいまいち把握できない。
公式サイトで書いてある「STORY」にはこう書いてある。
映画の公式サイトはこちら。
http://www.ikeboku.jp/
<“いけちゃん”は不思議ないきもの。
いつの頃からかいつもヨシオのそばにいる。ヨシオにしか見えないし、色も形も変幻自在。
お父さんが死んだときも、いじめられたときも、いつも一緒にいてくれた。
だが、ヨシオが成長するにつれ、その姿はだんだん見えなくなっていき、とうとう最後の日にいけちゃんはヨシオにあることを打ち明ける。
それはあまりにも切ない告白だった・・・。>
漫画については、ここで中身の一部を確認することができる。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refISBN=9784048540537
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200608-05/
3月11日におこなわれたマスコミ披露試写会で西原本人は、
「この映画は息子の落書きから生まれたいけちゃんと、
私が好きだった何人かの男の人の切ない思春期の話を覚えていて、
息子がちょうど傷つきやすい少年の時期を迎えた時に、
その話が蘇ってきたときに出来た話です。」
と説明している。
テレビ番組「ザ・ベストハウス123」(フジテレビ系列)では、「絶対に泣ける本 第1位」に選ばれたこともある。そんな断片的な情報をつなぎあわせると、なんとなく漫画の雰囲気はつかめてきたような気がする。
映画を観るかどうかは、まだ決めていない。ただ、原作は手に取ってみようかという気持ちに今はなっているところだ。
実はここ最近、彼女の曲はけっこう映画主題歌に使われている。しかし、「ハンサムスーツ」(08年)は“My Revolution”(86年)、「悲しいボーイフレンド」(09年)は“悲しいボーイフレンド”(85年)と、取り上げられるのは大昔の曲ばかりであった。作品の質やセールスは80年代が最も良かったので仕方ない部分もあるかもしれない。一方、今回は新曲が起用されたのは大きな違いである。
それにしても、映画の原作が西原理恵子の絵本「いけちゃんとぼく」(06年。角川書店)だと知った時は、
「へえ。意外な組み合わせだな」
というのが率直な感想だった。
漫画全般についてほとんど知識はないけれど、浪人時代(95年)に読んだ「恨ミシュラン」(93-95年。朝日新聞社。全3巻。神足裕司との共著)をきっかけに彼女の作品を追いかけた時期はある。「まあじゃんほうろうき」(90-94年。竹書房。全4巻)、「ちくろ幼稚園」(91-95年。小学館。全3巻)、「ゆんぼくん」(90-97年。竹書房。全5巻)といった漫画から、「サイバラ式」(00年。角川書店)のようなエッセイ入りのものまでけっこう幅広くカバーしていた。絵はわりとかわいい雰囲気だけれど、そこに描かれている世界は社会の底辺といった感じの人ばかりで、かなり毒を含んだ作風だ。その組み合わせに惹かれていったのだと思う。そして、渡辺美里とは対極の位置にいる人ではないだろうか。それゆえ今回の組み合わせに驚いたのである。
ある時期から彼女の作品をあまり読まなくなった。それは第43回文藝春秋漫画賞を受賞した「ぼくんち」(96-98年。小学館。全3巻)が完結した98年あたりだったか。明確な理由はないけれど、多作な作家のため作品を追いかけるのに疲れたのだと今となっては思う。また、たまに立ち読みで本を手にしてみても彼女は絵のタッチがかなり荒れていて、読みづらく感じ敬遠していたこともあった。
最近の彼女についても「毎日かあさん」(毎日新聞で連載中)など家族とか子育てとか私には興味が湧かないテーマに比重が置かれているようで、彼女の作品に向かい合うには悪い条件が重なりすぎている。振り返ってみれば、10年くらい読んでいないことになるか。
前置きは長くなったが、肝心の「いけちゃんとぼく」である。しかし、いろいろネットで調べてみても中身がいまいち把握できない。
公式サイトで書いてある「STORY」にはこう書いてある。
映画の公式サイトはこちら。
http://www.ikeboku.jp/
<“いけちゃん”は不思議ないきもの。
いつの頃からかいつもヨシオのそばにいる。ヨシオにしか見えないし、色も形も変幻自在。
お父さんが死んだときも、いじめられたときも、いつも一緒にいてくれた。
だが、ヨシオが成長するにつれ、その姿はだんだん見えなくなっていき、とうとう最後の日にいけちゃんはヨシオにあることを打ち明ける。
それはあまりにも切ない告白だった・・・。>
漫画については、ここで中身の一部を確認することができる。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refISBN=9784048540537
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200608-05/
3月11日におこなわれたマスコミ披露試写会で西原本人は、
「この映画は息子の落書きから生まれたいけちゃんと、
私が好きだった何人かの男の人の切ない思春期の話を覚えていて、
息子がちょうど傷つきやすい少年の時期を迎えた時に、
その話が蘇ってきたときに出来た話です。」
と説明している。
テレビ番組「ザ・ベストハウス123」(フジテレビ系列)では、「絶対に泣ける本 第1位」に選ばれたこともある。そんな断片的な情報をつなぎあわせると、なんとなく漫画の雰囲気はつかめてきたような気がする。
映画を観るかどうかは、まだ決めていない。ただ、原作は手に取ってみようかという気持ちに今はなっているところだ。
午前11時半を少し過ぎた頃、東京駅のホームへ無事に着いた。先日の新幹線不通が頭にあり不安だったけれど、これで渋谷へは余裕で行けそうだ。途中、池袋西口の「ばんかららーめん」で「角煮つけ麺」(1080円)を食べ、NHKスタジオパークや国立代々木競技場など渋谷近辺をブラブラしてから会場のC.C.Lemonホール前に行った。
昨年に引き続き、ここで渡辺美里のライブ「お正月だよ!Dear My Tokyo」がおこなわれる。昨年と同様、チケットはすぐに完売した。しかも、ほとんどがファンクラブ会員である。画像の行列は何かといえば「ファンクラブ先行入場」の風景だ。割合にすると9割方が会員なのではないだろうか。いや、そうでなければ同じ会員である私が2階席後方の右端なんて席のはずがない。そう言い聞かせて自分を納得させる。
しかしながらファンクラブ会員が先行で会場入りなんて、はっきりいってほとんど意味がない特典(?)ではある。それでも外は寒いので私も一般の方より先に入られてもらった。入場する際に入口でプレゼントを枡をもらった。昨年もこれであるが、枡なんて2個もいらないんだけどな。
グッズ類は何も買わなかった。またしても福袋が1万円であったけれど、内容を見て愕然とした前回のこともあり全く興味が湧かない(ちなみに、今回については中身が明らかになっていた)。今日もまた完売してしまったのだろうか。だったら恐ろしいほど利益が出ているだろうな。
そうして待っているうちに午後3時35分、ザ・ドアーズの“Break On Through”が流れて開演である。今年は何を1曲目にするのだろうかと思ったら、なんと“Lovin’ You”だった。これが冒頭というのは彼女のキャリアでも初めてではないだろうか。さらに“My Revolution”、MCをはさんで“10 years”と定番が立て続けに歌われてしまう。かなり積極的な曲順である。これで後半は何を演奏するのか。演奏曲目を逆にしたの?と思ってしまうほど唐突な序盤であった。
MCで、冒頭の3曲でお気づきの方もいるかもしれませんが今日のテーマは「Dear My Songs」です、などと美里が言った時にちょっと嫌な気持ちになった。私など存在そのものを忘れていた去年のセルフ・カバーアルバムのことである。演奏曲目に記すが、今日はこのアルバムに近いアレンジで9曲が歌われた。しかし、ライブではいくぶんマシに感じるものの、やはりこのアルバムの出来はいただけない。できれば今回でこれらのヴァージョンでの演奏は最後にしてもらいたいと願う。
だがその一方で嬉しいこともあった。「Dear My Songs」ヴァージョンであるものの、“PAJAM TIME”と“悲しいボーイフレンド”が披露されたからだ。特に“PAJAM TIME”は、小室哲哉の提供した曲で最も好きかもしれない曲である。“Lovin’ You”とこの2曲を聴けただけでも上京した甲斐があったというもの。そういえば北海道、果てはロンドンから会場に駆けつけていたお客もいた。正月ならではだが凄いことである。
他に印象的だったのは、やはり本編最後に歌った曲だろう。最初は新曲かと思ったけれど(ステージで本人は何も言及してなかった)、ミクシィで見つけた情報によると大江千里が作詞・作曲の“始まりの詩、あなたへ”というもので、08年4月に岩崎宏美の歌で発売されている。この曲はこれから出る新譜で歌われるかは不明であるものの、間奏で拍手が起きるという珍しい現象もあったし可能性は高い気がする。それにしてもミクシィだとなんでも情報が出てくるんだな。ちなみに歌詞はここに載っている。
http://music.yahoo.co.jp/shop/p/53/199210/Y064001
また、岩崎宏美のヴァージョンがYou Tubeで聴ける。お手軽な時代になったものだ。興味のある方は観ていただきたい。
http://jp.youtube.com/watch?v=_zztR4LcIIE
http://jp.youtube.com/watch?v=gO8ekfxuTPc&feature=related
良い曲だし彼女に似合うと私も感じたけれど、歌詞がなんだか“サンキュ”を連想してしまうためCD化をするのはどうかと思っている部分もある。
中盤に意味不明な演出があったものの、本人も気分良く歌っていた感じだったし年始のライブとしては出来に満足している。
アンコールが2回あって終演したのは午後6時20分ごろになっていた。終わるとすぐに渋谷駅に走り、品川駅でソバを食べ、午後7時17分発の新幹線で京都に帰った。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)Lovin’ You(「Dear My Songs」バージョン)
(2)My Revolution
(3)10 years
(4)BELIEVE(「Dear My Songs」バージョン)
(5)素顔(「Dear My Songs」バージョン)
(6)PAJAMA TIME(「Dear My Songs」バージョン)
(7)さくらの花の咲くころに
(8)悲しいボーイフレンド(「Dear My Songs」バージョン)
(9)悲しいね(「Dear My Songs」バージョン)
(10)Song of the Asking
(11)Sincerely
(12)世界で一番遠い場所
(13)サマータイムブルース
(14)My Revolution(「Dear My Songs」バージョン)
(15)始まりの詩、あなたへ(岩崎宏美のカバー)
〈アンコール1〉
(16)ジャングルチャイルド
(17)スピリッツ
(18)恋したっていいじゃない
〈アンコール2〉
(19)My Love Your Love(たったひとりしかいないあなたへ)(「Dear My Songs」バージョン)
(20)サンキュ(「Dear My Songs」バージョン)
昨年に引き続き、ここで渡辺美里のライブ「お正月だよ!Dear My Tokyo」がおこなわれる。昨年と同様、チケットはすぐに完売した。しかも、ほとんどがファンクラブ会員である。画像の行列は何かといえば「ファンクラブ先行入場」の風景だ。割合にすると9割方が会員なのではないだろうか。いや、そうでなければ同じ会員である私が2階席後方の右端なんて席のはずがない。そう言い聞かせて自分を納得させる。
しかしながらファンクラブ会員が先行で会場入りなんて、はっきりいってほとんど意味がない特典(?)ではある。それでも外は寒いので私も一般の方より先に入られてもらった。入場する際に入口でプレゼントを枡をもらった。昨年もこれであるが、枡なんて2個もいらないんだけどな。
グッズ類は何も買わなかった。またしても福袋が1万円であったけれど、内容を見て愕然とした前回のこともあり全く興味が湧かない(ちなみに、今回については中身が明らかになっていた)。今日もまた完売してしまったのだろうか。だったら恐ろしいほど利益が出ているだろうな。
そうして待っているうちに午後3時35分、ザ・ドアーズの“Break On Through”が流れて開演である。今年は何を1曲目にするのだろうかと思ったら、なんと“Lovin’ You”だった。これが冒頭というのは彼女のキャリアでも初めてではないだろうか。さらに“My Revolution”、MCをはさんで“10 years”と定番が立て続けに歌われてしまう。かなり積極的な曲順である。これで後半は何を演奏するのか。演奏曲目を逆にしたの?と思ってしまうほど唐突な序盤であった。
MCで、冒頭の3曲でお気づきの方もいるかもしれませんが今日のテーマは「Dear My Songs」です、などと美里が言った時にちょっと嫌な気持ちになった。私など存在そのものを忘れていた去年のセルフ・カバーアルバムのことである。演奏曲目に記すが、今日はこのアルバムに近いアレンジで9曲が歌われた。しかし、ライブではいくぶんマシに感じるものの、やはりこのアルバムの出来はいただけない。できれば今回でこれらのヴァージョンでの演奏は最後にしてもらいたいと願う。
だがその一方で嬉しいこともあった。「Dear My Songs」ヴァージョンであるものの、“PAJAM TIME”と“悲しいボーイフレンド”が披露されたからだ。特に“PAJAM TIME”は、小室哲哉の提供した曲で最も好きかもしれない曲である。“Lovin’ You”とこの2曲を聴けただけでも上京した甲斐があったというもの。そういえば北海道、果てはロンドンから会場に駆けつけていたお客もいた。正月ならではだが凄いことである。
他に印象的だったのは、やはり本編最後に歌った曲だろう。最初は新曲かと思ったけれど(ステージで本人は何も言及してなかった)、ミクシィで見つけた情報によると大江千里が作詞・作曲の“始まりの詩、あなたへ”というもので、08年4月に岩崎宏美の歌で発売されている。この曲はこれから出る新譜で歌われるかは不明であるものの、間奏で拍手が起きるという珍しい現象もあったし可能性は高い気がする。それにしてもミクシィだとなんでも情報が出てくるんだな。ちなみに歌詞はここに載っている。
http://music.yahoo.co.jp/shop/p/53/199210/Y064001
また、岩崎宏美のヴァージョンがYou Tubeで聴ける。お手軽な時代になったものだ。興味のある方は観ていただきたい。
http://jp.youtube.com/watch?v=_zztR4LcIIE
http://jp.youtube.com/watch?v=gO8ekfxuTPc&feature=related
良い曲だし彼女に似合うと私も感じたけれど、歌詞がなんだか“サンキュ”を連想してしまうためCD化をするのはどうかと思っている部分もある。
中盤に意味不明な演出があったものの、本人も気分良く歌っていた感じだったし年始のライブとしては出来に満足している。
アンコールが2回あって終演したのは午後6時20分ごろになっていた。終わるとすぐに渋谷駅に走り、品川駅でソバを食べ、午後7時17分発の新幹線で京都に帰った。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)Lovin’ You(「Dear My Songs」バージョン)
(2)My Revolution
(3)10 years
(4)BELIEVE(「Dear My Songs」バージョン)
(5)素顔(「Dear My Songs」バージョン)
(6)PAJAMA TIME(「Dear My Songs」バージョン)
(7)さくらの花の咲くころに
(8)悲しいボーイフレンド(「Dear My Songs」バージョン)
(9)悲しいね(「Dear My Songs」バージョン)
(10)Song of the Asking
(11)Sincerely
(12)世界で一番遠い場所
(13)サマータイムブルース
(14)My Revolution(「Dear My Songs」バージョン)
(15)始まりの詩、あなたへ(岩崎宏美のカバー)
〈アンコール1〉
(16)ジャングルチャイルド
(17)スピリッツ
(18)恋したっていいじゃない
〈アンコール2〉
(19)My Love Your Love(たったひとりしかいないあなたへ)(「Dear My Songs」バージョン)
(20)サンキュ(「Dear My Songs」バージョン)
チケットが届かねえ、と思ったので
2008年12月20日 渡辺美里
今度の元日も渡辺美里が渋谷C.Cレモンホールでライブ「お正月だよ!Dear My Tokyo」をおこなう。1月1日なんて用事もないし、ファンクラブから案内が来た時はあまり考えることもなし予約する。申込んだのは10月13日、イープラスのサイトを利用してのものだった。
そして12月9日、「【e+より】《お知らせ》配送開始のご案内」というメールが届く。12月上旬に宅配便でチケットを届けるという旨の内容だった。9日の時点でもう12月上旬も終わるのではないか?と思ったものの、ひとまずはチケットを待とうと思った。
しかしそれから10日経っても宅配便はやってこない。そこでイープラスの「申込み状況照会」で確認してみる。
http://eplus.jp/jyoukyou2/
だがそのページでも、
配送状況:ご指定の住所に発送しました。
配達開始日:2008/12/09(火)
伝票番号:●●●●
と書いてあるのみで現状時点(12月19日)の様子がまったく把握できない。
「私のチケットはどこに行ったんだ?」
「ドライバーが持ち去ったか、捨てたか?」
12月上旬どころか下旬にさしかかる時期である。私もけっこう不安になってきた。
もう一度「申込み状況照会」のサイトの下を見ると、ヤマト運輸のリンクが張ってあった。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/
このページ右側に「荷物のお問い合わせ」という部分がある。ここに伝票番号を入れてリターンキーを押す。すると、面白いものが出てきた。以下がそれである。
荷物受付12/09 14:09 埼玉東松山物流システム支店
発送 12/09 14:09 埼玉東松山物流システム支店
配達予定 12/17 19:47 京都北野宅急便センター
配達店到着 12/18 07:06 京都西の京宅急便センター
持戻 12/18 12:38 京都北野宅急便センター
配達予定 12/18 19:49 京都北野宅急便センター
配達店到着 12/19 07:02 京都西の京宅急便センター
荷物の詳細な流れがダーッと出て来た。京都にチケットが着いたのはどうやら最近らしい。それにしても配達店に荷物が入ってくるのが午前7時台なのは驚く。ヤマトの仕事のキツさが目に浮かんでくる。
そして本日の午前、部屋にチケット無事到着した。画像がそれである。今年は1階の後ろだったが、今回はなんと2階席の13列目、さらに見づらい席になった格好である。ファンクラブ予約でこの席はあんまりな気がする一方、このライブの人気も感じさせる。
元日にすることの無い人は私以外にもいっぱいいるんだな。
そして12月9日、「【e+より】《お知らせ》配送開始のご案内」というメールが届く。12月上旬に宅配便でチケットを届けるという旨の内容だった。9日の時点でもう12月上旬も終わるのではないか?と思ったものの、ひとまずはチケットを待とうと思った。
しかしそれから10日経っても宅配便はやってこない。そこでイープラスの「申込み状況照会」で確認してみる。
http://eplus.jp/jyoukyou2/
だがそのページでも、
配送状況:ご指定の住所に発送しました。
配達開始日:2008/12/09(火)
伝票番号:●●●●
と書いてあるのみで現状時点(12月19日)の様子がまったく把握できない。
「私のチケットはどこに行ったんだ?」
「ドライバーが持ち去ったか、捨てたか?」
12月上旬どころか下旬にさしかかる時期である。私もけっこう不安になってきた。
もう一度「申込み状況照会」のサイトの下を見ると、ヤマト運輸のリンクが張ってあった。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/
このページ右側に「荷物のお問い合わせ」という部分がある。ここに伝票番号を入れてリターンキーを押す。すると、面白いものが出てきた。以下がそれである。
荷物受付12/09 14:09 埼玉東松山物流システム支店
発送 12/09 14:09 埼玉東松山物流システム支店
配達予定 12/17 19:47 京都北野宅急便センター
配達店到着 12/18 07:06 京都西の京宅急便センター
持戻 12/18 12:38 京都北野宅急便センター
配達予定 12/18 19:49 京都北野宅急便センター
配達店到着 12/19 07:02 京都西の京宅急便センター
荷物の詳細な流れがダーッと出て来た。京都にチケットが着いたのはどうやら最近らしい。それにしても配達店に荷物が入ってくるのが午前7時台なのは驚く。ヤマトの仕事のキツさが目に浮かんでくる。
そして本日の午前、部屋にチケット無事到着した。画像がそれである。今年は1階の後ろだったが、今回はなんと2階席の13列目、さらに見づらい席になった格好である。ファンクラブ予約でこの席はあんまりな気がする一方、このライブの人気も感じさせる。
元日にすることの無い人は私以外にもいっぱいいるんだな。
私を励ましてるのか?
2008年10月23日 渡辺美里原則として仕事に関することは日記に書かないことにしているけれど、話の文脈上しかたない部分があるので述べたい。
今日は午後3時から9時ごろまで映画試写会の仕事だった。正直いって始まるまでずっと不安でしかたない。今月から初めてする業務だったので、本番には失敗すると覚悟もしていた。
試写されたのは11月1日に公開される「ハンサムスーツ」だった。この映画の主題歌はなぜか渡辺美里の“My Revolution”が起用されている(本人も「渡辺美里」役で出演している)。開演前と開演後にはずっと曲が繰り返し流されていた。
結果として、仕事は大きな問題も無く終えることができた。曲に助けられたのかな?と思ってしまう私はやはり尋常ではないのだろう。
今日は午後3時から9時ごろまで映画試写会の仕事だった。正直いって始まるまでずっと不安でしかたない。今月から初めてする業務だったので、本番には失敗すると覚悟もしていた。
試写されたのは11月1日に公開される「ハンサムスーツ」だった。この映画の主題歌はなぜか渡辺美里の“My Revolution”が起用されている(本人も「渡辺美里」役で出演している)。開演前と開演後にはずっと曲が繰り返し流されていた。
結果として、仕事は大きな問題も無く終えることができた。曲に助けられたのかな?と思ってしまう私はやはり尋常ではないのだろう。
午前9時30分、休日にもかかわらず京都駅前に私は立っていた。ここでKBS京都とエフエム京都との共同企画であるKyotoRadioDay’08「ecoes」というイベントに渡辺美里が登場するからだ。イベントのテーマ・ソングに彼女の“サンキュ”が採用されたことを受けてのものである。しかもラジオのゲスト出演だけでなくライブも行なう。彼女が公開の無料ライブをするというのは私の記憶にはない。ぜひ立ち会おうと早くから会場へ駆けつけたわけだ。
いや、実際は何時に美里が登場するのかイベントのサイトでは明らかにされなかったから仕方なくこんな時間に訪れたのが正直なところだ。駅前に着いたとたん、彼女の写真が載った看板が目に止まる。ライブは午後2時15分から3時半、と明記されていた。まだ4時間以上も時間がある。
会場に着くまではてっきり大階段の広場にあるステージでライブをするとばかり思っていた。しかし実際は画像の通り、駅前に小さな特設ステージをこしらえたものである。その前にパイプ椅子が150脚ほど並べられていた。せっかくだからここに陣取って待とうかと思ったけれど、結局やめてしまった。なぜかといえば、ステージの周辺に顔見知りの人がウロウロしていたからだ。KBS京都の社員である。その人の前で、4時間ほど前から渡辺美里を待つ私の姿を観られるのは、はっきりいって恥ずかしい。イタイ奴だと思われるのに決まってる。
そんな事情もあり、ステージ周辺を付かず離れずの距離を確保しながら立って歩くことにする。熱心なファンはすでに椅子に陣取っている。10時30分ごろ、黒幕でステージを隠してのリハーサルがおこなわれる。時間が短いこともあり、選曲も無難なものになりそうだ。12時ごろになると座っていた人たちも食事に出かける。しかし皆、椅子に荷物を置いて座席はしっかり確保していた。図々しいなあ。私も疲れて腹も減ってきたので地下街でトンカツを食べる。午後1時15分ごろ、なぜかパイプ椅子を1列追加して並べられた。これはチャンスとばかりに急いで座った。しかし出演1時間前ほどになっても人はあまり集まらない。これは彼女のせいでなく、イベント告知の不足だと思う(知っていたら観に行ったのに、と言う人が自分の周囲にはけっこういた)。結局、午後2時15分の時点でも300人くらいしかいなかった。
まず、川原ちかよというDJが登場して諸注意などをする。それから新作アルバム「Dear My Songs」(08年)より“Lovin’you ”をかけて美里が登場。いちおうイベントのテーマが「エコ」ということもあり、西武ライブを続けているうちに外の熱さの質も変わっていくのを感じた、という自身の経験などを話していた。それが終わって舞台替えをし、待望のライブが始まったのは午後3時であった。今回はアコースティック・ライブ、しかも先日に出たアルバムの出来を思うと個人的な期待はゼロどころかマイナスくらいだった。アルバムのようなアレンジで演奏されると思うと正直たまらない。そんな心境である。
しかし、私の予想は良い意味で裏切られる。1曲目の“10 years”は「Dear My Songs」のバージョンかと思ったら意外にも無難なアレンジで演奏される。他の曲もおおむねそのような感じで、アルバムのようにはガタガタな調子では全くなかった。そして、彼女の歌もけっこう気合いは入っていたように感じる。自分のファンばかりでなく不特定多数で歌うということもあり、強い意気込みがあったのではないだろうか。全5曲、30分足らずのライブではあったものの非常に充実した内容だった。
しかしである。だからこそ、人の集まりがいまいちだったのは残念でならない。こうしたライブにこそ、彼女を知らない人、彼女を離れていった人に観てほしかった。最後に演奏曲目を示す。
【演奏曲目】
(1)10 years
(2) BELIEVE
(3)素顔
(4)サンキュ
(5) My Revolution
バンドメンバー
パーカッション:三沢またろう
キーボード:光田健一
ギター:設楽博臣
いや、実際は何時に美里が登場するのかイベントのサイトでは明らかにされなかったから仕方なくこんな時間に訪れたのが正直なところだ。駅前に着いたとたん、彼女の写真が載った看板が目に止まる。ライブは午後2時15分から3時半、と明記されていた。まだ4時間以上も時間がある。
会場に着くまではてっきり大階段の広場にあるステージでライブをするとばかり思っていた。しかし実際は画像の通り、駅前に小さな特設ステージをこしらえたものである。その前にパイプ椅子が150脚ほど並べられていた。せっかくだからここに陣取って待とうかと思ったけれど、結局やめてしまった。なぜかといえば、ステージの周辺に顔見知りの人がウロウロしていたからだ。KBS京都の社員である。その人の前で、4時間ほど前から渡辺美里を待つ私の姿を観られるのは、はっきりいって恥ずかしい。イタイ奴だと思われるのに決まってる。
そんな事情もあり、ステージ周辺を付かず離れずの距離を確保しながら立って歩くことにする。熱心なファンはすでに椅子に陣取っている。10時30分ごろ、黒幕でステージを隠してのリハーサルがおこなわれる。時間が短いこともあり、選曲も無難なものになりそうだ。12時ごろになると座っていた人たちも食事に出かける。しかし皆、椅子に荷物を置いて座席はしっかり確保していた。図々しいなあ。私も疲れて腹も減ってきたので地下街でトンカツを食べる。午後1時15分ごろ、なぜかパイプ椅子を1列追加して並べられた。これはチャンスとばかりに急いで座った。しかし出演1時間前ほどになっても人はあまり集まらない。これは彼女のせいでなく、イベント告知の不足だと思う(知っていたら観に行ったのに、と言う人が自分の周囲にはけっこういた)。結局、午後2時15分の時点でも300人くらいしかいなかった。
まず、川原ちかよというDJが登場して諸注意などをする。それから新作アルバム「Dear My Songs」(08年)より“Lovin’you ”をかけて美里が登場。いちおうイベントのテーマが「エコ」ということもあり、西武ライブを続けているうちに外の熱さの質も変わっていくのを感じた、という自身の経験などを話していた。それが終わって舞台替えをし、待望のライブが始まったのは午後3時であった。今回はアコースティック・ライブ、しかも先日に出たアルバムの出来を思うと個人的な期待はゼロどころかマイナスくらいだった。アルバムのようなアレンジで演奏されると思うと正直たまらない。そんな心境である。
しかし、私の予想は良い意味で裏切られる。1曲目の“10 years”は「Dear My Songs」のバージョンかと思ったら意外にも無難なアレンジで演奏される。他の曲もおおむねそのような感じで、アルバムのようにはガタガタな調子では全くなかった。そして、彼女の歌もけっこう気合いは入っていたように感じる。自分のファンばかりでなく不特定多数で歌うということもあり、強い意気込みがあったのではないだろうか。全5曲、30分足らずのライブではあったものの非常に充実した内容だった。
しかしである。だからこそ、人の集まりがいまいちだったのは残念でならない。こうしたライブにこそ、彼女を知らない人、彼女を離れていった人に観てほしかった。最後に演奏曲目を示す。
【演奏曲目】
(1)10 years
(2) BELIEVE
(3)素顔
(4)サンキュ
(5) My Revolution
バンドメンバー
パーカッション:三沢またろう
キーボード:光田健一
ギター:設楽博臣
渡辺美里「Dear My Songs」(08年)
2008年10月7日 渡辺美里
(1)Lovin’ you
(2)My Revolution
(3)10 years
(4)サンキュ
(5)素顔
(6)BELIEVE
(7)ココロ銀河
(8)PAJAMA TIME
(9)悲しいボーイフレンド
(10)悲しいね
(11)My Love Your Love(たったひとりしかいない あなたへ)
(12)Kiss from a rose
10月13日(日)の京都駅前イベントに渡辺美里はいつ登場するのだろう。ネットでそれを調べているうちに、この「Dear My Songs」の出荷日が今日だったことに気づく。会社から帰る途中、CDショップで買ってすぐ聴いてみた。
「Dear My Songs」の内容については以前にもこの日記で述べたけれど、過去の楽曲を録音しなおした「セルフ・カバー・アルバム」というものである。現在の渡辺美里が80年代の絶頂期の代表曲を歌うというのは、無謀な行為だとすぐ思った。それゆえ正直に言うと聴くのが非常に怖かった。しかし、出てしまったものは仕方ない。
予感のほとんどは的中した。“My Revolution”は「どうしてこのようなアレンジを採用したのだろうか」と疑問だらけの代物である。そこに「現在の彼女」の歌声が重なると、オリジナルとの落差がより鮮明になってしまう。
“10 years”の出来もいただけない。ひそかに危惧していたけれど、やはり作曲した大江千里が歌うアレンジに近いものへと変貌してしまった。大江千里のバージョンは彼の音域や声量などを考慮してああいう形になったわけで、それを彼女がなぞったところで良いものができるはずがない。ましてや、オリジナルと比較してしまうと・・・。
この2曲にどれほど強い思い入れを抱いている人がどれほどいるのか、当の本人は果たしてわかっているのだろうか。ボロボロになった曲を耳にして落胆するファンの心境を思うと辛くなる。“素顔”、“BELIEVE”など他の曲も概して厳しい仕上がりだ。何が原因なのかは色々と指摘できるけれど、全般的にプロデュースが大仰で過剰なのが一番大きな問題だろう。楽曲との相性など考慮せずただ派手なアレンジを施しただけ、というのが正直なところではないか。身も蓋もない言い方をさせてもらえば、オリジナルを凌駕するような作品はこのアルバムには一つとしてない。
かなり厳しいことばかり書いたと思う。しかし、ただの新作アルバムだったら自分もこんな気持ちにはならなかっただろう。
ただ、個人的には収穫もなかったわけではない。わりと控えめなアレンジの“Lovin’ you ”、“悲しいボーイフレンド”は曲の良さがぶっこ壊れているようなことはない。“PAJAMA TIME”も中盤のバタバタする展開になるまでは良い。それは今回のバージョンが優れているとかいうのではなくて、これらの曲の良さを再認識しただけだと自分では思っている。素晴らしい曲や歌は簡単に時空を超えるということか。もっとも、それはオリジナルとの比較などを度外視することが必要ではあるが。それをしてしまうと元も子もない話になる。
アルバム全12曲のうち、気に入ったのは3曲くらいか。こういう作品に出くわすと、私が彼女を観てきた約17年間が走馬灯のように駆けめぐってくる。
私が渡辺美里をCDを初めて買ったのは1991年のことである。当時の彼女の勢いはまさに敵なしという感じで、私自身も彼女の「信者」だった。しかし93年のシングル“BIG WAVEやってきた”の彼女の変化により「信者」をやめる。それからの彼女は作品のスケールもCDの売り上げもだんだんと減速していく。私のファン歴はもっぱら、そのようになっていく渡辺美里の姿を見続けたことになる。
しかし、彼女を離れようという気持ちにはどうにもなれなかった。それは何故かといえば、現在の彼女にもまだ魅力のある部分があるから、としか答えられない。10回ライブに行けば、1〜2回は良いことがある。そういう瞬間を期待せずに待っている。100点満点のライブや作品を望むことはもうできないと身に沁みてわかっているから。「信者」でもない私のような人間が現在の渡辺美里を受け入れるというのは、こういうことである。
だから、このような気持ちを持って私は今回の作品を受け入れたいと思っている。
(2)My Revolution
(3)10 years
(4)サンキュ
(5)素顔
(6)BELIEVE
(7)ココロ銀河
(8)PAJAMA TIME
(9)悲しいボーイフレンド
(10)悲しいね
(11)My Love Your Love(たったひとりしかいない あなたへ)
(12)Kiss from a rose
10月13日(日)の京都駅前イベントに渡辺美里はいつ登場するのだろう。ネットでそれを調べているうちに、この「Dear My Songs」の出荷日が今日だったことに気づく。会社から帰る途中、CDショップで買ってすぐ聴いてみた。
「Dear My Songs」の内容については以前にもこの日記で述べたけれど、過去の楽曲を録音しなおした「セルフ・カバー・アルバム」というものである。現在の渡辺美里が80年代の絶頂期の代表曲を歌うというのは、無謀な行為だとすぐ思った。それゆえ正直に言うと聴くのが非常に怖かった。しかし、出てしまったものは仕方ない。
予感のほとんどは的中した。“My Revolution”は「どうしてこのようなアレンジを採用したのだろうか」と疑問だらけの代物である。そこに「現在の彼女」の歌声が重なると、オリジナルとの落差がより鮮明になってしまう。
“10 years”の出来もいただけない。ひそかに危惧していたけれど、やはり作曲した大江千里が歌うアレンジに近いものへと変貌してしまった。大江千里のバージョンは彼の音域や声量などを考慮してああいう形になったわけで、それを彼女がなぞったところで良いものができるはずがない。ましてや、オリジナルと比較してしまうと・・・。
この2曲にどれほど強い思い入れを抱いている人がどれほどいるのか、当の本人は果たしてわかっているのだろうか。ボロボロになった曲を耳にして落胆するファンの心境を思うと辛くなる。“素顔”、“BELIEVE”など他の曲も概して厳しい仕上がりだ。何が原因なのかは色々と指摘できるけれど、全般的にプロデュースが大仰で過剰なのが一番大きな問題だろう。楽曲との相性など考慮せずただ派手なアレンジを施しただけ、というのが正直なところではないか。身も蓋もない言い方をさせてもらえば、オリジナルを凌駕するような作品はこのアルバムには一つとしてない。
かなり厳しいことばかり書いたと思う。しかし、ただの新作アルバムだったら自分もこんな気持ちにはならなかっただろう。
ただ、個人的には収穫もなかったわけではない。わりと控えめなアレンジの“Lovin’ you ”、“悲しいボーイフレンド”は曲の良さがぶっこ壊れているようなことはない。“PAJAMA TIME”も中盤のバタバタする展開になるまでは良い。それは今回のバージョンが優れているとかいうのではなくて、これらの曲の良さを再認識しただけだと自分では思っている。素晴らしい曲や歌は簡単に時空を超えるということか。もっとも、それはオリジナルとの比較などを度外視することが必要ではあるが。それをしてしまうと元も子もない話になる。
アルバム全12曲のうち、気に入ったのは3曲くらいか。こういう作品に出くわすと、私が彼女を観てきた約17年間が走馬灯のように駆けめぐってくる。
私が渡辺美里をCDを初めて買ったのは1991年のことである。当時の彼女の勢いはまさに敵なしという感じで、私自身も彼女の「信者」だった。しかし93年のシングル“BIG WAVEやってきた”の彼女の変化により「信者」をやめる。それからの彼女は作品のスケールもCDの売り上げもだんだんと減速していく。私のファン歴はもっぱら、そのようになっていく渡辺美里の姿を見続けたことになる。
しかし、彼女を離れようという気持ちにはどうにもなれなかった。それは何故かといえば、現在の彼女にもまだ魅力のある部分があるから、としか答えられない。10回ライブに行けば、1〜2回は良いことがある。そういう瞬間を期待せずに待っている。100点満点のライブや作品を望むことはもうできないと身に沁みてわかっているから。「信者」でもない私のような人間が現在の渡辺美里を受け入れるというのは、こういうことである。
だから、このような気持ちを持って私は今回の作品を受け入れたいと思っている。
午前6時半、朝は仕事で伏見へ出かけるため少し早めに起きる。布団から出て外を眺めると小雨が降っていた。
「今日のライブは大丈夫か?」
仕事よりもそっちの方が気になった。今日は大阪城野外音楽堂で渡辺美里のライブ「美里祭り2008 ラプソディー・イン・大阪」がおこなわれる。通常のホールだったら天気など心配する必要はないけれど、今回は外なので晴れたほうが良いに決まってる。そういうわけで午前中は天気が心配だった。しかし、雨もすぐに上がり昼前には青空も見え出してくる。ひとまず雨の心配はなさそうだ。
午後2時半ごろ京阪電車で大阪へ向かい、会場の前に着いたのは開場時間の午後3時45分くらいだった。私の席は「N列33番」、まさにど真ん中という位置である。東京と違って表情までくっきりと見えそうだ。待っているあいだ周囲を見ている。なぜかヒマワリの花を持っている人が何人か目につく。以前にはなかった光景だ。誰が始めたのだろう。他にカルビーの「じゃがりこ」を掲げている人もいる。あれは東京のライブにおける彼女のMC(美里が大好きと言っていた)を受けてのものだろう。
それにしても、雨あがりのせいか蒸し暑い。そんな中でライブが始まったのは予定通り午後4時30分、通常のライブに比べるとずっと早い開演である。
1曲目は東京ではアンコールで演奏した“恋したっていいじゃない”だった。曲目は下に記しているけれど、基本的に東京の内容をコンパクトにまとめたものである。昨年の熊本公演は横浜の曲目の良い部分を骨抜きにした内容だったのでガッカリした。しかし今回は“バースデイ”が演奏されたし、東京に行けなかった人もそれほど見劣りはしなかったのではないだろうか。
全体的な印象として、東京と同じくらい内容が良かったとは言い難い。会場のせいか音響はいま一つという気がしたし、彼女のテンションも大きな会場だった東京ほど高くはなかったと思う。それでも大阪のみで披露された曲もあり、アコースティック・ギター1本だけをバックに歌う“ランナー”は個人的にこの日の白眉であった。
アンコールは大嫌いな“ジャングルチャイルド”、嫌いな“スピリッツ”そして、ライブでは絶対演奏される3曲(“10 years“、“My Revolution”、“サマータイム ブルース”)が立て続けという展開に興ざめする。それゆえ、最後の最後に“サンキュ”が歌われたのは救いだった。
早い開演だったので3時間くらいライブをするのかなとも思ったけれど、実際に終わったのは7時すこし前、2時間半で全18曲という内容だった。曲数はやや少ない気もするけれど、ステージもシンプルであまり演出らしいこともできないしこれくらいの時間が限度かなという気もする。
今年はもうツアーの予定もないし、2時間を超えるようなライブはこれで最後だろう。今年の最後としてはちょっと平凡だったというのが正直な印象である。
あとは12月23日にヒルトン大阪でディナーショーがあるという告知もあったけれど、金額は3万6000円もかかる。行きたいものの、金銭的な問題はどうするか思案しているところだ。最後に曲目を記す。
〔演奏曲目〕
(1)恋したっていいじゃない
(2)ブランニューヘブン
(3)夏が来た!
(4)バースデイ
(5)BELIEVE
(6)Nude
(7)ランナー
(8)素顔
(9)ココロ銀河
(10)BABY
(11)夏灼きたまご
(12)すき
〈アンコール〉
(13)ジャングルチャイルド
(14)スピリッツ/大阪ラプソディー
(15)10 years
(16)My Revolution
(17)サマータイムブルース
(18)サンキュ
「今日のライブは大丈夫か?」
仕事よりもそっちの方が気になった。今日は大阪城野外音楽堂で渡辺美里のライブ「美里祭り2008 ラプソディー・イン・大阪」がおこなわれる。通常のホールだったら天気など心配する必要はないけれど、今回は外なので晴れたほうが良いに決まってる。そういうわけで午前中は天気が心配だった。しかし、雨もすぐに上がり昼前には青空も見え出してくる。ひとまず雨の心配はなさそうだ。
午後2時半ごろ京阪電車で大阪へ向かい、会場の前に着いたのは開場時間の午後3時45分くらいだった。私の席は「N列33番」、まさにど真ん中という位置である。東京と違って表情までくっきりと見えそうだ。待っているあいだ周囲を見ている。なぜかヒマワリの花を持っている人が何人か目につく。以前にはなかった光景だ。誰が始めたのだろう。他にカルビーの「じゃがりこ」を掲げている人もいる。あれは東京のライブにおける彼女のMC(美里が大好きと言っていた)を受けてのものだろう。
それにしても、雨あがりのせいか蒸し暑い。そんな中でライブが始まったのは予定通り午後4時30分、通常のライブに比べるとずっと早い開演である。
1曲目は東京ではアンコールで演奏した“恋したっていいじゃない”だった。曲目は下に記しているけれど、基本的に東京の内容をコンパクトにまとめたものである。昨年の熊本公演は横浜の曲目の良い部分を骨抜きにした内容だったのでガッカリした。しかし今回は“バースデイ”が演奏されたし、東京に行けなかった人もそれほど見劣りはしなかったのではないだろうか。
全体的な印象として、東京と同じくらい内容が良かったとは言い難い。会場のせいか音響はいま一つという気がしたし、彼女のテンションも大きな会場だった東京ほど高くはなかったと思う。それでも大阪のみで披露された曲もあり、アコースティック・ギター1本だけをバックに歌う“ランナー”は個人的にこの日の白眉であった。
アンコールは大嫌いな“ジャングルチャイルド”、嫌いな“スピリッツ”そして、ライブでは絶対演奏される3曲(“10 years“、“My Revolution”、“サマータイム ブルース”)が立て続けという展開に興ざめする。それゆえ、最後の最後に“サンキュ”が歌われたのは救いだった。
早い開演だったので3時間くらいライブをするのかなとも思ったけれど、実際に終わったのは7時すこし前、2時間半で全18曲という内容だった。曲数はやや少ない気もするけれど、ステージもシンプルであまり演出らしいこともできないしこれくらいの時間が限度かなという気もする。
今年はもうツアーの予定もないし、2時間を超えるようなライブはこれで最後だろう。今年の最後としてはちょっと平凡だったというのが正直な印象である。
あとは12月23日にヒルトン大阪でディナーショーがあるという告知もあったけれど、金額は3万6000円もかかる。行きたいものの、金銭的な問題はどうするか思案しているところだ。最後に曲目を記す。
〔演奏曲目〕
(1)恋したっていいじゃない
(2)ブランニューヘブン
(3)夏が来た!
(4)バースデイ
(5)BELIEVE
(6)Nude
(7)ランナー
(8)素顔
(9)ココロ銀河
(10)BABY
(11)夏灼きたまご
(12)すき
〈アンコール〉
(13)ジャングルチャイルド
(14)スピリッツ/大阪ラプソディー
(15)10 years
(16)My Revolution
(17)サマータイムブルース
(18)サンキュ
昼前の宅急便で、9月13日(土)に大阪城音楽堂でおこなわれる渡辺美里の「美里祭り2008 ラプソディ・イン・大阪」のチケットが届く。開けてみたら座席はタイトルの通りだった。
座席図はこのようになっている。
http://www.shion.jp/hall/img/zaseki01.jpg
まさにど真ん中という感じだ。プレミアとはいえないまでも、会場はそれほど大きくないしステージがよく見えるだろう。
しかし、芝生席についてはまだ売り切れていないのが気になる。興味のある方は検討していただきたい。
座席図はこのようになっている。
http://www.shion.jp/hall/img/zaseki01.jpg
まさにど真ん中という感じだ。プレミアとはいえないまでも、会場はそれほど大きくないしステージがよく見えるだろう。
しかし、芝生席についてはまだ売り切れていないのが気になる。興味のある方は検討していただきたい。
午前6時、またもや深夜バスで新宿駅西口にやってきた。本当は朝から仕事だったけれど、3ヶ月前から会社の同僚に頼んで自分と代わってもらう用意周到ぶりである。そこまでしてライブに行く私の気持ちは誰も理解不能だろう。なぜならば、当の私が理解できないのだから。
新たなる夏のライブもついに3回目、今回は東京で行われる。美里自身はインタビューで、野外ライブを東京でするのは初めてであることを強調している。しかし私としては特に何も感慨はない。
ただ、東京にまつわる曲が披露されるかもしれない。彼女の曲で「東京」というフレーズが出てくるのは、90年のアルバム「tokyo」に入っている“バースデイ”と“Tokyo”、そして96年の「Spirits」に入っている“東京生活”くらいだろうか。パッと思いつくのはこの3曲である。だからどうした、と言われたら返答に窮するけれど、“Tokyo”は生で聴いたことがないから歌われたら嬉しいな、などと考えたりする。期待というほどでもないけれど、私がライブ前に思っていたのはその程度のことだ。
新宿に着いてからカプセルホテルで汗を流し、駅前でうどんを食べてネットカフェで2時間ほど過ごす。このいつものパターンを経てライブ会場へ向かう途中、JR大崎駅でいったん降りる。せっかく上京したから、つけ麺がいま最も有名と言われるラーメン店「六厘舎」に立ち寄るためだ。
公式サイトはこちら。
http://rokurinsha.com/
開店1時間前の10時半に到着したのに、すでに10人ちかくが炎天下で待っている。開店までに列は40人ちかくまで伸びた。お茶も買わずに暑い中を並んでしまって体がキツかったけれど、おかげで最初に店内へ入ることができた。
私は「あつもり、大盛り、えび玉トッピング」(しめて1100円)を頼む。注文は並んでいる間に確認し、席に座ったら3分くらいで料理が出てくる手際は良い。そして、味も良かった。麺は太すぎる気もするけれど、つけ汁に油が上手に使われていてよく絡んでいた。「えび玉」はエビの味のする味玉で、これも気に入った。味については文句はない。
しかし料理が美味しいことと、このために1時間待つのはまた別の問題である。味は気に入ったので私の中で明確な結論はでていない。しかし炎天下の日はやめたほうが良いかもしれない。
「六厘舎」を出てローソンで飲み物を買ってから、大崎駅に戻りりんかい線で最寄り駅の「国際展示場」へ向かう。駅を下りて係員の案内に沿って歩いているうちに1時前にはビッグサイトに着いてしまった。会場からはリハーサルの音が聴こえてくる。
午後1時になるとファンクラブ会員を優先に展示場内が開放される。チケットを提示して中に入り、物販でプログラムを買った。そのまま建物の隅っこに座って1時間ほど眠る。深夜バスで移動した疲れがここにきて出てきたようだ。果たしてライブ本番まで体がもつだろうか。
そうして午後3時、展示場のシャッターが上がり本格的に開場である。そこの客席を観た瞬間、
「なんだか去年に似た会場だなあ」
と思ってしまった。会場が海の近くで、大きな空き地にパイプ椅子が並べられていて、遠くには観覧車が見えるのも去年の横浜と同じである。さらにいえば、私の座席は端っこに位置しているのも一緒だ。これがデ・ジャヴというものだろうか。
客席の横に食べ物を売っているテントがいくつかある。まだ開演まで2時間もあるし、「築地銀だこ」のたこ焼きを1箱(6個入りで500円)買った。なぜかここは開演前まで長蛇の列ができる。空を見上げればうっすらと雲がかかっていた。このままいけば涼しくライブには格好の状態ではある。しかし天気予報は夕立の可能性も伝えている。果たして最後までもつだろうか。そんな不安を抱きながら午後5時を少し過ぎてついに開演である。
1曲目はいきなり“東京生活”だった。しかしよく考えてみると、この曲を聴くのは96年の「Free Spirits TOUR」以来、実に12年ぶりだ。
今回の選曲は下に載せているけれど、「tokyo」、「BIG WAVE」(93年)、「Baby Faith」(94年)の曲が目立つような気がする。感想を先に言ってしまうと、神懸かりと言いたくなるほどの出来だった昨年の横浜公演に比べると勢いという点ではそれほどでもなかったかもしれない。しかし印象的な場面もけっこうあった。
まず、往年のファンにとっては「tokyo」収録の“Boys kiss Girls”と“バースデイ”の2曲が感慨深かったのではないだろうか。“Boys kiss Girls”は最後の西武ライブの中でおこなったメドレーでも披露したけれど、私がまるまる1曲を聴いたのは、92年の「スタジアム伝説」以来のはずである。隠れた名曲“バースデイ”にしても02年の西武ライブ「Miss Seventeen Stadium」で披露したきりだ。通常のツアーではなかなか聴けない曲が出てくるのも夏のライブならではだろう。
“CHANGE”から“BABY”という流れも良い。単純に「Baby Faith」の曲順と同じわけだが、それがこの2曲の印象を強くしている。また、「Baby Faith」の曲はまったく予想していなかったので、不意打ちをくらう格好であった。
それから、これは意外に思う人もいるかもしれないけれど、“素顔”と“ONE MORE KISS”にも唸らされた。正直いってこの2曲の思い入れは全くないし、CDを引っぱり出して聴きたいと思うような代物でもない。しかし、勢いで押すという感じとは対照的に、落ち着いていながらも説得力のある歌いっぷりには、いまさらながら彼女の歌唱力の底力を感じさせた。特にアコースティック・ギターとキーボードのみをバックに歌われる“素顔”は、この曲の良さが引き出てくるアレンジだったと思う。
全体的に地味な選曲だったかもしれない。しかし個人的には見どころがけっこうあったこともあり満足度の高いライブであった。
午後8時の少し手前でライブが終了する。ついに終わりまで全く雨が降らなかった。美里が最後のMCで、このライブを成功するようにと2ヶ月の禁酒、3ヶ月の“禁「じゃがりこ」”をしたと最後に打ち明けたのが可笑しかった。そういう願掛けが幸いしてるかどうかはわからない。しかし一昨年の山中湖ライブは前日で大雨が止まり、昨年の横浜も演奏終了まで雨が降らずと、ここ3年はつくづく天気に恵まれているとはいえよう。
ライブが終了してからスクリーンにさきほどまでのライブの場面が映し出され、スタッフロールが流れた。画像はその時の模様である(ライブ中の画像じゃないからね、念のため)。そして、
「See You Next Summer」
というメッセージが映し出される。果たして来年の夏はどこでおこなわれるのだろうか。どこでおこなわれようとも、都合がつく限りは私も自然と足を運ぶのだろう。深夜バスで帰えるという落ち着かない日程なので足早に会場を後にした。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)東京生活
(2)ブランニューヘブン
(3)夏が来た!
(4)yes
(5)Boys kiss Girls
(6)バースデイ
(7)私のカルテ
(8)素顔
(9)Nude
(10)ONE MORE KISS
(11)ココロ銀河
(12)CHANGE
(13)BABY
(14)SHOUT [ココロの花びら]
(15)夏灼きたまご
(16)すき
〈アンコール1〉
(17)ジャングル チャイルド
(18)東京ブギウギ/銀座カンカン娘
(19)恋したっていいじゃない
(20)10 years
(21)My Revolution
〈アンコール2〉
(22)My Love Your Love(たったひとりしかいないあなたへ)
(23)サマータイム ブルース
新たなる夏のライブもついに3回目、今回は東京で行われる。美里自身はインタビューで、野外ライブを東京でするのは初めてであることを強調している。しかし私としては特に何も感慨はない。
ただ、東京にまつわる曲が披露されるかもしれない。彼女の曲で「東京」というフレーズが出てくるのは、90年のアルバム「tokyo」に入っている“バースデイ”と“Tokyo”、そして96年の「Spirits」に入っている“東京生活”くらいだろうか。パッと思いつくのはこの3曲である。だからどうした、と言われたら返答に窮するけれど、“Tokyo”は生で聴いたことがないから歌われたら嬉しいな、などと考えたりする。期待というほどでもないけれど、私がライブ前に思っていたのはその程度のことだ。
新宿に着いてからカプセルホテルで汗を流し、駅前でうどんを食べてネットカフェで2時間ほど過ごす。このいつものパターンを経てライブ会場へ向かう途中、JR大崎駅でいったん降りる。せっかく上京したから、つけ麺がいま最も有名と言われるラーメン店「六厘舎」に立ち寄るためだ。
公式サイトはこちら。
http://rokurinsha.com/
開店1時間前の10時半に到着したのに、すでに10人ちかくが炎天下で待っている。開店までに列は40人ちかくまで伸びた。お茶も買わずに暑い中を並んでしまって体がキツかったけれど、おかげで最初に店内へ入ることができた。
私は「あつもり、大盛り、えび玉トッピング」(しめて1100円)を頼む。注文は並んでいる間に確認し、席に座ったら3分くらいで料理が出てくる手際は良い。そして、味も良かった。麺は太すぎる気もするけれど、つけ汁に油が上手に使われていてよく絡んでいた。「えび玉」はエビの味のする味玉で、これも気に入った。味については文句はない。
しかし料理が美味しいことと、このために1時間待つのはまた別の問題である。味は気に入ったので私の中で明確な結論はでていない。しかし炎天下の日はやめたほうが良いかもしれない。
「六厘舎」を出てローソンで飲み物を買ってから、大崎駅に戻りりんかい線で最寄り駅の「国際展示場」へ向かう。駅を下りて係員の案内に沿って歩いているうちに1時前にはビッグサイトに着いてしまった。会場からはリハーサルの音が聴こえてくる。
午後1時になるとファンクラブ会員を優先に展示場内が開放される。チケットを提示して中に入り、物販でプログラムを買った。そのまま建物の隅っこに座って1時間ほど眠る。深夜バスで移動した疲れがここにきて出てきたようだ。果たしてライブ本番まで体がもつだろうか。
そうして午後3時、展示場のシャッターが上がり本格的に開場である。そこの客席を観た瞬間、
「なんだか去年に似た会場だなあ」
と思ってしまった。会場が海の近くで、大きな空き地にパイプ椅子が並べられていて、遠くには観覧車が見えるのも去年の横浜と同じである。さらにいえば、私の座席は端っこに位置しているのも一緒だ。これがデ・ジャヴというものだろうか。
客席の横に食べ物を売っているテントがいくつかある。まだ開演まで2時間もあるし、「築地銀だこ」のたこ焼きを1箱(6個入りで500円)買った。なぜかここは開演前まで長蛇の列ができる。空を見上げればうっすらと雲がかかっていた。このままいけば涼しくライブには格好の状態ではある。しかし天気予報は夕立の可能性も伝えている。果たして最後までもつだろうか。そんな不安を抱きながら午後5時を少し過ぎてついに開演である。
1曲目はいきなり“東京生活”だった。しかしよく考えてみると、この曲を聴くのは96年の「Free Spirits TOUR」以来、実に12年ぶりだ。
今回の選曲は下に載せているけれど、「tokyo」、「BIG WAVE」(93年)、「Baby Faith」(94年)の曲が目立つような気がする。感想を先に言ってしまうと、神懸かりと言いたくなるほどの出来だった昨年の横浜公演に比べると勢いという点ではそれほどでもなかったかもしれない。しかし印象的な場面もけっこうあった。
まず、往年のファンにとっては「tokyo」収録の“Boys kiss Girls”と“バースデイ”の2曲が感慨深かったのではないだろうか。“Boys kiss Girls”は最後の西武ライブの中でおこなったメドレーでも披露したけれど、私がまるまる1曲を聴いたのは、92年の「スタジアム伝説」以来のはずである。隠れた名曲“バースデイ”にしても02年の西武ライブ「Miss Seventeen Stadium」で披露したきりだ。通常のツアーではなかなか聴けない曲が出てくるのも夏のライブならではだろう。
“CHANGE”から“BABY”という流れも良い。単純に「Baby Faith」の曲順と同じわけだが、それがこの2曲の印象を強くしている。また、「Baby Faith」の曲はまったく予想していなかったので、不意打ちをくらう格好であった。
それから、これは意外に思う人もいるかもしれないけれど、“素顔”と“ONE MORE KISS”にも唸らされた。正直いってこの2曲の思い入れは全くないし、CDを引っぱり出して聴きたいと思うような代物でもない。しかし、勢いで押すという感じとは対照的に、落ち着いていながらも説得力のある歌いっぷりには、いまさらながら彼女の歌唱力の底力を感じさせた。特にアコースティック・ギターとキーボードのみをバックに歌われる“素顔”は、この曲の良さが引き出てくるアレンジだったと思う。
全体的に地味な選曲だったかもしれない。しかし個人的には見どころがけっこうあったこともあり満足度の高いライブであった。
午後8時の少し手前でライブが終了する。ついに終わりまで全く雨が降らなかった。美里が最後のMCで、このライブを成功するようにと2ヶ月の禁酒、3ヶ月の“禁「じゃがりこ」”をしたと最後に打ち明けたのが可笑しかった。そういう願掛けが幸いしてるかどうかはわからない。しかし一昨年の山中湖ライブは前日で大雨が止まり、昨年の横浜も演奏終了まで雨が降らずと、ここ3年はつくづく天気に恵まれているとはいえよう。
ライブが終了してからスクリーンにさきほどまでのライブの場面が映し出され、スタッフロールが流れた。画像はその時の模様である(ライブ中の画像じゃないからね、念のため)。そして、
「See You Next Summer」
というメッセージが映し出される。果たして来年の夏はどこでおこなわれるのだろうか。どこでおこなわれようとも、都合がつく限りは私も自然と足を運ぶのだろう。深夜バスで帰えるという落ち着かない日程なので足早に会場を後にした。最後に曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)東京生活
(2)ブランニューヘブン
(3)夏が来た!
(4)yes
(5)Boys kiss Girls
(6)バースデイ
(7)私のカルテ
(8)素顔
(9)Nude
(10)ONE MORE KISS
(11)ココロ銀河
(12)CHANGE
(13)BABY
(14)SHOUT [ココロの花びら]
(15)夏灼きたまご
(16)すき
〈アンコール1〉
(17)ジャングル チャイルド
(18)東京ブギウギ/銀座カンカン娘
(19)恋したっていいじゃない
(20)10 years
(21)My Revolution
〈アンコール2〉
(22)My Love Your Love(たったひとりしかいないあなたへ)
(23)サマータイム ブルース
受け入れられそうにない新作「Dear My Songs」
2008年8月6日 渡辺美里この秋に渡辺美里が新作アルバムを出すという話は、DVD「Voice2」(08年)に入っていた案内で知った。
私はある時期からアルバムもライブも期待しないことに決めた。変な期待を抱いて後で失望する経験を何度も繰り返したためだ。今回のアルバムについてもそのような思いで接するつもりだった。
しかし、である。アルバムの内容を知った時は落ち着いていられなくなった。なんと「セルフカバーベストアルバム」だというのである。
Sony Music Onlineの紹介ではこう書いていた。
渡辺美里 「Dear My Songs」
【発売日】 2008.10.08
【品番】 ESCL-3130
【価格】 3,059(tax in)
【解説】
渡辺美里デビュー25周年に向けての企画アルバム。
「My Revolution」「10 years」「Lovin’ you」「悲しいね」など、
これまで美里が歌ってきた数々の名曲を、井上鑑による豪華リアレンジを始め、
弦一徹、斉藤恒芳によるストリングスを中心とした贅沢な編成、
ゴンチチ、石成正人、谷本光のギター、小松亮太のバンドネオン、斎藤有太によるピアノとのコラボレーション、
さらに山本拓夫によるビックバンドアレンジといった、日本屈指のミュージシャンと作り上げる、
アコースティックアレンジを中心とした超豪華セルフカバーベスト!
そして、取り上げられるのは以下の曲である。
【収録曲】※曲順未定
My Revolution (album「Lovin’ you」収録)
作詩:川村真澄 作曲:小室哲哉 編曲:井上鑑
Lovin’ you (album「Lovin’ you」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:岡村靖幸 編曲:斎藤有太
10 years (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:大江千里 編曲:弦一徹
悲しいね (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:斉藤恒芳
Believe (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:谷本光
My Love Your Love (album「Spirits」収録)
作詩・作曲:渡辺美里 編曲:井上鑑
素顔 (album「ハダカノココロ」収録)
作詩:渡辺美里・大江千里 作曲:大江千里 編曲:小松亮太
サンキュ (album「Love Go Go!!」収録)
作詩・作曲:渡辺美里 編曲:ゴンチチ
悲しいボーイフレンド (album「eyes」収録)
作詩・作曲:大江千里 編曲:石成正人
PAJAMA TIME (album「BREATH」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:山本拓夫
Kiss from a rose (album「Sing and Roses」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:TAKURO 編曲:弦一徹
ココロ銀河 (album「ココロ銀河」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:川村結花 編曲:斉藤恒芳
以上、12曲である。
選曲についてなど細かいことを言うつもりはない。しかし、私がパッと思い浮かんだのは、
「オリジナルのバージョンを超えることはできないだろうな」
という1点だけだ。
渡辺美里がセルフカバーのアルバムを出したのは今回が初めてではない。92年の「Hello Lovers」というのがそれで、彼女の過去の楽曲をジェイ・グレイドンやアリフ・マーディン(故人)といった人たちがアレンジし直した作品である。このアルバムを駄作と称する人もいるけれど、その原因はおそらくオリジナル作品との比較によるものではないだろうか。まっさらな新作と思えば、当時の彼女のもつ圧倒的な歌の力を楽しめる。その考えは買った当初から現在まで変わらない.ちなみに「Hello Lovers」については別の場所で感想を記している。よかったら読んでもらいたい。
http://watabekazuaki.hp.infoseek.co.jp/musicreview/HELLOLOVERS.html
セルフカバーの是非はともかく、92年の当時の彼女ははっきりいって「何をしてもうまくいく」という状態だったろう。それゆえ、アリフ・マーディンなど大物まで彼女の制作を手がけるという幸運も引き寄せられたと思う。また、CDの売り上げも良かったし制作費も潤沢だったにちがいない。
それに比べて、現在の彼女を取り巻く状況はどうだろう。あまり多くのことは言いたくない。しかし、今の彼女にオリジナルを凌駕するようなものを作れるだろうか。この辺りを冷静に判断できるかどうかで、その人が「信者」かどうかが分かる気がする。
オリジナル・アルバムだったらどれほど酷い内容でも今の私は妥協できる。期待ゼロなんだから。しかし、このセルフカバーについてはその自信がない。いまから中身が心配である。
私はある時期からアルバムもライブも期待しないことに決めた。変な期待を抱いて後で失望する経験を何度も繰り返したためだ。今回のアルバムについてもそのような思いで接するつもりだった。
しかし、である。アルバムの内容を知った時は落ち着いていられなくなった。なんと「セルフカバーベストアルバム」だというのである。
Sony Music Onlineの紹介ではこう書いていた。
渡辺美里 「Dear My Songs」
【発売日】 2008.10.08
【品番】 ESCL-3130
【価格】 3,059(tax in)
【解説】
渡辺美里デビュー25周年に向けての企画アルバム。
「My Revolution」「10 years」「Lovin’ you」「悲しいね」など、
これまで美里が歌ってきた数々の名曲を、井上鑑による豪華リアレンジを始め、
弦一徹、斉藤恒芳によるストリングスを中心とした贅沢な編成、
ゴンチチ、石成正人、谷本光のギター、小松亮太のバンドネオン、斎藤有太によるピアノとのコラボレーション、
さらに山本拓夫によるビックバンドアレンジといった、日本屈指のミュージシャンと作り上げる、
アコースティックアレンジを中心とした超豪華セルフカバーベスト!
そして、取り上げられるのは以下の曲である。
【収録曲】※曲順未定
My Revolution (album「Lovin’ you」収録)
作詩:川村真澄 作曲:小室哲哉 編曲:井上鑑
Lovin’ you (album「Lovin’ you」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:岡村靖幸 編曲:斎藤有太
10 years (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:大江千里 編曲:弦一徹
悲しいね (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:斉藤恒芳
Believe (album「ribbon」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:谷本光
My Love Your Love (album「Spirits」収録)
作詩・作曲:渡辺美里 編曲:井上鑑
素顔 (album「ハダカノココロ」収録)
作詩:渡辺美里・大江千里 作曲:大江千里 編曲:小松亮太
サンキュ (album「Love Go Go!!」収録)
作詩・作曲:渡辺美里 編曲:ゴンチチ
悲しいボーイフレンド (album「eyes」収録)
作詩・作曲:大江千里 編曲:石成正人
PAJAMA TIME (album「BREATH」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:小室哲哉 編曲:山本拓夫
Kiss from a rose (album「Sing and Roses」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:TAKURO 編曲:弦一徹
ココロ銀河 (album「ココロ銀河」収録)
作詩:渡辺美里 作曲:川村結花 編曲:斉藤恒芳
以上、12曲である。
選曲についてなど細かいことを言うつもりはない。しかし、私がパッと思い浮かんだのは、
「オリジナルのバージョンを超えることはできないだろうな」
という1点だけだ。
渡辺美里がセルフカバーのアルバムを出したのは今回が初めてではない。92年の「Hello Lovers」というのがそれで、彼女の過去の楽曲をジェイ・グレイドンやアリフ・マーディン(故人)といった人たちがアレンジし直した作品である。このアルバムを駄作と称する人もいるけれど、その原因はおそらくオリジナル作品との比較によるものではないだろうか。まっさらな新作と思えば、当時の彼女のもつ圧倒的な歌の力を楽しめる。その考えは買った当初から現在まで変わらない.ちなみに「Hello Lovers」については別の場所で感想を記している。よかったら読んでもらいたい。
http://watabekazuaki.hp.infoseek.co.jp/musicreview/HELLOLOVERS.html
セルフカバーの是非はともかく、92年の当時の彼女ははっきりいって「何をしてもうまくいく」という状態だったろう。それゆえ、アリフ・マーディンなど大物まで彼女の制作を手がけるという幸運も引き寄せられたと思う。また、CDの売り上げも良かったし制作費も潤沢だったにちがいない。
それに比べて、現在の彼女を取り巻く状況はどうだろう。あまり多くのことは言いたくない。しかし、今の彼女にオリジナルを凌駕するようなものを作れるだろうか。この辺りを冷静に判断できるかどうかで、その人が「信者」かどうかが分かる気がする。
オリジナル・アルバムだったらどれほど酷い内容でも今の私は妥協できる。期待ゼロなんだから。しかし、このセルフカバーについてはその自信がない。いまから中身が心配である。
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渡辺美里「Voice2」(08年)
2008年7月30日 渡辺美里
(1)スピリッツ
(2)ムーンライトピクニック
(3)すき
(4)夏のカーブ〜一瞬の夏〜真夏のサンタクロース
(5)Tokyo Calling
(6)BIG WAVEやってきた
(7)チェリーが3つ並ばない
(8)夏だより
(9)ココロ銀河
(10)Cosmic Girl
(11)夏が来た!〜三百六十五歩のマーチ
(12)恋するパンクス〜ブルーライトヨコハマ
(13)輝く道
(14)37.2℃ (夢みるように うたいたい)
(15)Welcome
(16)月の砂漠
(17)SHOUT(ココロの花びら)
(18)もっと遠くへ・・・
(19)その手をつないで
(20)KISS & CRY
(21)LOVE IS HERE
(22)Oh! ダーリン
(23)Gift
(24)Long Night
(25)青い鳥
(26)私のカルテ
(27)熱情
(28)ココロ銀河
(29)10years
(30)My Revolution
(31)Lovin’ you
昨年から始まった渡辺美里のDVDシリーズ「Voice」の2作目が発売した。今回は07年の彼女の活動を追ったものである。
去年の美里はけっこう色々なことをした。与謝野晶子の詩の朗読会「言の葉コンサート」の参加、森林保護のために薬師寺でおこなわれた「Present Tree」、恒例の夏のライブは横浜、秋から冬にかけての「ココロ銀河ツアー」など。ライブした会場は多岐にわたる。
その中でも横浜でのライブは奇跡的な素晴らしさだった。序盤から本編終了までの流れは神がかりといえるもので、久しぶりに「信者」に戻りそうになるほど気分が高揚したことを覚えている。特に“夏のカーブ”〜“一瞬の夏”〜“真夏のサンタクロース”のメドレー、そして続く“Tokyo Calling”はこのライブと白眉といえよう。自分でも目の前で起こっていることが信じられなかった。膨大な名曲(主に80年代に作られたものだが)を持つ彼女のみができる力業である。
しかし、だからこそライブの模様が細切れになっているのが残念でならない。全ての活動を収めたい気持ちは理解できるけれど、2時間近く(正確には113分)でまとめれば無理がでてくる。結果として“夏のカーブ”メドレーも要約されてしまった。“一瞬の夏”が始まる時の、(尾崎豊の“卒業”を連想させる)あの学校のチャイムの音をまた聴きたかった。
ただ救いなのは、もう一つのハイライトである“Tokyo Calling”が完全に収録されていることだ。これは「快挙」という表現を使っても言い過ぎではない。88年のアルバム「ribbon」に収録されているこの曲が21世紀になって聴けるとは。会場でこの曲が出てくると思った人は皆無だったに違いない。嬉しいことに、今は何度も再生して観ることが可能だ。個人的にはそれだけでもDVDを買う価値はあると思っている。
他に1曲まるまる収めている曲といえば
夏だより
ココロ銀河
輝く道
夏が来た!
これくらいだったか。あとの曲は微妙にカットされていて「完全収録」とは言いづらいものばかりである。
“夏が来た!”は熊本城の下でおこなわれた時のもので、この曲をバックにライブの風景がダーッと流れてくる。ライブの模様を断片的に紹介するよりも、この“夏が来た”のような手法にしたほうが良かったのではという気がする。
去年のライブは私もいろいろ行ったけれど(詩の朗読会、薬師寺、横浜、熊本、大阪と神戸のツアー、元日ライブ)、横浜ライブと「ココロ銀河ツアー」の神戸公演以外はそれほど印象には残っていない。しかし、こうしてダイジェストで辿ってみると観るべき点はあるかなとも思えてくる。
収録曲が昨年出たアルバム「ココロ銀河」の曲に比重が置いてあるのも、07年の記録と考えれば納得もいく。それから、最近の彼女の傾向からすれば「ココロ銀河」の収録曲が今後も演奏される可能性は低い。そういう意味でも貴重な記録となるかもしれない。
そう書きながらも、さきのメドレーや“Tokyo Calling”ばかりを繰り返している自分がいる。もっといえば、こうした瞬間に立ち会うがためにわざわざ横浜までライブを観に行ったわけだ。今年もこのような「瞬間」が訪れるのだろうか。今の私が彼女に期待することがあるとすれば、そういうことである。
(2)ムーンライトピクニック
(3)すき
(4)夏のカーブ〜一瞬の夏〜真夏のサンタクロース
(5)Tokyo Calling
(6)BIG WAVEやってきた
(7)チェリーが3つ並ばない
(8)夏だより
(9)ココロ銀河
(10)Cosmic Girl
(11)夏が来た!〜三百六十五歩のマーチ
(12)恋するパンクス〜ブルーライトヨコハマ
(13)輝く道
(14)37.2℃ (夢みるように うたいたい)
(15)Welcome
(16)月の砂漠
(17)SHOUT(ココロの花びら)
(18)もっと遠くへ・・・
(19)その手をつないで
(20)KISS & CRY
(21)LOVE IS HERE
(22)Oh! ダーリン
(23)Gift
(24)Long Night
(25)青い鳥
(26)私のカルテ
(27)熱情
(28)ココロ銀河
(29)10years
(30)My Revolution
(31)Lovin’ you
昨年から始まった渡辺美里のDVDシリーズ「Voice」の2作目が発売した。今回は07年の彼女の活動を追ったものである。
去年の美里はけっこう色々なことをした。与謝野晶子の詩の朗読会「言の葉コンサート」の参加、森林保護のために薬師寺でおこなわれた「Present Tree」、恒例の夏のライブは横浜、秋から冬にかけての「ココロ銀河ツアー」など。ライブした会場は多岐にわたる。
その中でも横浜でのライブは奇跡的な素晴らしさだった。序盤から本編終了までの流れは神がかりといえるもので、久しぶりに「信者」に戻りそうになるほど気分が高揚したことを覚えている。特に“夏のカーブ”〜“一瞬の夏”〜“真夏のサンタクロース”のメドレー、そして続く“Tokyo Calling”はこのライブと白眉といえよう。自分でも目の前で起こっていることが信じられなかった。膨大な名曲(主に80年代に作られたものだが)を持つ彼女のみができる力業である。
しかし、だからこそライブの模様が細切れになっているのが残念でならない。全ての活動を収めたい気持ちは理解できるけれど、2時間近く(正確には113分)でまとめれば無理がでてくる。結果として“夏のカーブ”メドレーも要約されてしまった。“一瞬の夏”が始まる時の、(尾崎豊の“卒業”を連想させる)あの学校のチャイムの音をまた聴きたかった。
ただ救いなのは、もう一つのハイライトである“Tokyo Calling”が完全に収録されていることだ。これは「快挙」という表現を使っても言い過ぎではない。88年のアルバム「ribbon」に収録されているこの曲が21世紀になって聴けるとは。会場でこの曲が出てくると思った人は皆無だったに違いない。嬉しいことに、今は何度も再生して観ることが可能だ。個人的にはそれだけでもDVDを買う価値はあると思っている。
他に1曲まるまる収めている曲といえば
夏だより
ココロ銀河
輝く道
夏が来た!
これくらいだったか。あとの曲は微妙にカットされていて「完全収録」とは言いづらいものばかりである。
“夏が来た!”は熊本城の下でおこなわれた時のもので、この曲をバックにライブの風景がダーッと流れてくる。ライブの模様を断片的に紹介するよりも、この“夏が来た”のような手法にしたほうが良かったのではという気がする。
去年のライブは私もいろいろ行ったけれど(詩の朗読会、薬師寺、横浜、熊本、大阪と神戸のツアー、元日ライブ)、横浜ライブと「ココロ銀河ツアー」の神戸公演以外はそれほど印象には残っていない。しかし、こうしてダイジェストで辿ってみると観るべき点はあるかなとも思えてくる。
収録曲が昨年出たアルバム「ココロ銀河」の曲に比重が置いてあるのも、07年の記録と考えれば納得もいく。それから、最近の彼女の傾向からすれば「ココロ銀河」の収録曲が今後も演奏される可能性は低い。そういう意味でも貴重な記録となるかもしれない。
そう書きながらも、さきのメドレーや“Tokyo Calling”ばかりを繰り返している自分がいる。もっといえば、こうした瞬間に立ち会うがためにわざわざ横浜までライブを観に行ったわけだ。今年もこのような「瞬間」が訪れるのだろうか。今の私が彼女に期待することがあるとすれば、そういうことである。
渡辺美里「ribbon」(88年)
2008年7月13日 渡辺美里
(1)センチメンタルカンガルー
(2)恋したっていいじゃない
(3)さくらの花の咲くころに
(4)Believe(Remix Version)
(5)シャララ
(6)19歳の秘かな欲望(The Lover Soul Version)
(7)彼女の彼
(8)ぼくでなくっちゃ
(9)Tokyo Calling
(10)悲しいね(Remix Version)
(11)10 years
先日のブログでこのアルバムについて述べているうちに、発売してから20年も経っていることに気づいてしまった。私が小学生だった80年代は遥か遠い昔である。
この「ribbon」はそんな80年代の邦楽を代表する1枚といえるかもしれない。なにしろ当時としては異例のミリオンセラーを記録したのだから。当時のキャッチコピーは、
「戦後最大のPOPアルバム」
というものだった。その大仰なフレーズにシラケた人もいただろう。しかし、このアルバムや当時の美里に対してそれだけの冠をつけてもおかしくはない、と私は今でも思っている。
91年に渡辺美里を本格的に聴き始めた私にとって「ribbon」は残念ながらリアルタイムで接したわけではない。それでもこのアルバムは彼女の作品の中で3指に入るものだ。それくらい強い思い入れを持っている。最高傑作は人によって好みは分かれるだろう。しかし彼女のファンで「ribbon」を否定する人はおそらくいない。なぜならば「ribbon」は「歌手」という枠を超えて「表現者」としての渡辺美里を確立した作品だからだ。このアルバムを抜きにして渡辺美里は語れない。
1枚目の「eyes」(85年)、そしてあの“My Revolution”が入っている2枚目の「Lovin you」(86年)の時点で彼女は表向きにはプロデューサーに入っていない。またこの時期はもっぱら他人の提供する歌詞を歌っていた。そのこと自体は否定するものではない。ただ、ここまでの彼女の役割はもっぱら「歌手」としてのものだったということを指摘したいだけである。
3枚目の「Breath」(87年)よりプロデューサーで彼女も名前を連ねる。そして歌詞は自身の作詞のみになった。つまり、歌だけでなく歌詞においても自身の個性を押し出していくように変化していったわけだ。美里の「表現者」としての出発といえよう。「Breath」は10代や20代の若者が持つ心情が鮮やかに刻み込まれた傑作ではある。しかし、ここでもまだ彼女の個性が全開したとはいえないだろう。作品の持つエネルギーは圧倒的なものの、そのベクトルは内に向かっている。それが魅力的であると思う時もあれば、痛々しく感じる瞬間もある。
これと比較してみると、「ribbon」も強いエネルギーの出ているアルバムであるけれどその方向は外へ広がっている。平たく言うと非常に開放的で風通しの良いアルバムに仕上がっているのだ。だからこそこれほどのセールスを記録したのだろう。
それでは「ribbon」をもって確立された彼女の個性とは何だろうか。それは私の言葉で「写実性」と表現したい。ここではこの「写実性」というものを軸にして渡辺美里と「ribbon」について書いてみたい。
いままで彼女について写実性という観点から述べた文章は見たことがない。けれど、私は10代の時から渡辺美里を写実的な表現者だと感じていた。いまもその印象は変わっていない。そして「ribbon」はその典型的な作品だと位置づけている。
論拠を示すため、「ribbon」の歌詞カードに載っている彼女の文章を取り上げたい。この21行の文章にアルバムの中身が見事に凝縮されている。
「私には手紙を通じての友だちがたくさんいます。
レコードを出す前からの友だち。
真夜中のラジオの生放送にハガキを送ってくれた友だち。
外国からのエアメイルをくれる友だち。
今もその頃の手紙を読み返したりすると
一緒にうれしくなったり時には悲しくなったり
また励まされたりします。
そんな人たちの現在を想いながら
いくつかの歌をつくってみました。
みんなとの結び目になればそしてありがとうの想いをこめて
このレコード「ribbon」を捧げます。
91匹のTinyカンガルー
右あがりの丸い文字の君、因数分解を教えてくれた君
やさしい目をしたティーンエイジママ
ファーストフードのレジ笑顔でたたいている君
彼女の彼、れんげ草をつんでくれた君
朝刊を運ぶ少年、よくにた瞳をした恋人
街を歩くピノキオ、歩はばをあわせて歩いてくれた君
汚れたシューズ、よれよれのシャツの君
屋上に腰かけて檸檬かじった君
そして、全てのセンチメンタルカンガルーへ」
アルバムを聴いている人には、この文章から音が聴こえてくる気がしてこないだろうか。たとえ聴いたことのない人でも、どんなアルバムかイメージが湧いてくるのではないか。
たわいものないことが書いてると思う人もいるかもしれない。しかしこうしたたわいもなさが「ribbon」の本質である。「Breath」は大人の世界を目の前にして苦悩している若者が主に描かれていたのに対し、「ribbon」の登場人物はどこにでもいる街の人たちだ。そんな何気ない光景が彼女の手によって普遍的で鮮やかな11編の歌に変わっている。前作と比べて彼女の視点がずっと細やかになったことがうかがえよう。
渡辺美里という人は非常に簡潔にわかりやすく情景を描くのが上手な表現者である(であった、という方が適切だろうか)。しかしこうした彼女の才能を指摘する人を見たことがない。それはファンもアンチも同じである。たとえば意識的な音楽ファンや音楽ライターといった人たちは芸術家くずれのような人が多く、意味不明なものをありがたがり、いわゆる「わかりやすい」作品は「単純」などとレッテルを貼り敬遠するきらいがある。さらにはライター自身も訳のわからない文章を書いて自己満足しているから余計にタチが悪い。「わかりやすい表現」を嫌うのは一向に構わない。それは各人の趣味の問題だから。ただそれが悪いとか駄目だとか言って批判するのは浅薄な話であるということだけは言いたい。
人にパッと伝わるような表現をするのは簡単なことではない。ましてや文章や言葉ではなく音楽をもってするのはいっそう困難な作業である。それを自覚している人は残念ながら本当に少ない。知名度も評価も得られぬまま一生を終わってしまうであろう音楽ライターの皆さんは果たして他人に伝達可能な文章を書いているだろうか。一度は振り返ってみることをお勧めしたい。
本題が外れてしまった。私が強調したいのは、渡辺美里は写実的で鮮やかな光景を提示できる数少ない表現者であるということだ。いや個人的には彼女以外に私は知らない。だから今でも彼女を追いかけざるをえないのだ。昔のようなライブや作品は望めないにしても、代わりになる人がいないのだから仕方ない。
せっかくの機会だから色々書いてみたい。実は、美里のCDを聴くたびに恐れていることがある。10代に心を振るわせた音楽が年を経るごとに色あせていくのではないだろうか、という不安だ。
正直に言うと、歌詞については10代の頃にもっと共感していたような気がする。年をくってしまった自分には縁遠くなった部分が多くなったからだろう。しかしそれは仕方ない話である。そもそもロックやポップスというのはもともと若者のために作られた音楽なのだから。年齢を重ねたため作品に共感できなくなるというのは当然の現象である。それを駄目だという輩は何か勘違いしている。おじさんおばさんの身になってもまだロックやポップスに異様な執着をしているほうがよほど世間ズレているのだから。
ただ、音や歌声は色あせていないのにはホッとする。彼女の声がもつ力強さややさしさ、“さくらの花の咲くころに”の美しい情景、“恋したっていいじゃない”の可愛らしさ、“10 years”を聴く時のなんともいえない心境などはいまだに力を失っていない。
せめて彼女の歌の力だけはこのまま失わないで欲しいと願う。そして、このまま自分の人生が終わるまで、アルバムの輝きは消えないでほしい。私としては渡辺美里の作品をずっと座右に置きたいのである。
今年は20周年ということでデラックス・エディションなど出てくれたら、という思いもある。昔のライブ音源なんて追加されたら感涙ものだろう。といっても、BOOK OFFあたりで二束三文で売られているような状態では望むだけ無理な話だ。それならせめて、このような音楽を求めている人の手に渡ってほしいと願う。
思い入れの強い作品なので、最後に1曲ずつ簡単な感想などを記したい。ちなみにアルバムは88年5月28日に発売され、初登場1位を記録しそのまま4週連続で首位にとどまった。
【曲目解説】
(1)センチメンタルカンガルー(作詞:渡辺美里、作曲・編曲:佐橋佳幸)
88年7月21日、11枚目のシングルとなった曲。最高順位9位、8万枚を売り上げる。缶コーヒー「UCC」のCMにも使われた。「センチメンタルカンガルー」という印象的な言葉は彼女の造語で特に意味はないようだ。こうした一つ一つのフレーズに彼女の言葉に対する感覚の鋭さを感じるけれど、皆さんはいかがだろうか。
(2)恋したっていいじゃない(作詞:渡辺美里、作曲:伊秩弘将、編曲:清水信之)
88年4月21日、10枚目のシングル。最高位2位、24万6千枚を売り上げる。この曲も缶コーヒー「UCC」のCMにも起用された。アルバムの中で最もスピード感がある曲だ。歌詞のテーマはタイトルの通りのものだ。しかし、サビの「D.A.T.E!」などの可愛いらしいフレーズが随所にあったり、
「ルーズな街のインチキに打ちのめされても
流行のスタイルに流されないよ」
といった登場人物の芯の強い部分が見え隠れしたりと、単にハードでポップな曲にとどまらぬ鮮やかな世界を築いている。いまでもライブで披露されれば盛り上がる。彼女の代表曲の一つといえよう。
(3)さくらの花の咲くころに(作詞:渡辺美里、作曲:木根尚登、編曲:清水信之)
シングル曲ではないけれどファンの間では人気が高い。さくらの花の咲くころには、風の強い日には自分を思い出してほしいと呼びかける。春の光景を美しくやさしい視点で描いていて、こうした曲は前作までにはなかった。また2曲目とはうって変わって、アコースティックギターを主体にしたゆったりした曲調なのも印象を強めているような気がする。
(4)Believe(Remix Version)(作詞:渡辺美里、作曲:小室哲哉、編曲:大村雅朗)
86年10月22日にはすでにシングルとして出ている。最高2位、20万6千枚を売り上げた。TBS系ドラマ「痛快!OL通り」の主題歌に使われた。時期的には「Breath」であるけれどなぜかこのアルバムに収録された。歌詞も曲調も「Breath」の世界に近い。さっきは春の歌だがこちらは冬、しかも張りつめたような寒さを感じる曲である。しかし、むしろ清々しい印象を与えるのは彼女のキャラクターによるものだろう。いま思ったが、彼女は四季というものも歌にきっちりと描いている傾向も強い。この曲もその一端を示す作品である。
(5)シャララ(作詞:渡辺美里、作曲:岡村靖幸、編曲:佐橋佳幸・西平彰)
冒頭の「ウォーウォー」やサビの「シャララララララ」などコーラス(クレジットに「荒川少年少女合唱隊」という名前もある)に力を入れている。歌詞については、これから新しい出発をしようとしている人に向けているようだ。ただ、それよりもコーラスを含めた楽しい雰囲気に浸ったほうが正解だろう。聴くたびに気持ちが高揚させられる。また、
「教室のだれより 大人びた girl friend
今はやさしい目をしてる teenage mama ね
路地裏のヒーロー 憧れた girl friend
ファーストフードのレジ 笑顔でたたいている」
という若者に対する彼女の柔らかい視点も魅力的だ。
(6)19歳の秘かな欲望(The Lover Soul Version)(作詞:戸沢暢美、作曲:岡村靖幸、編曲:佐橋佳幸)
アルバムで唯一、彼女の作詞ではない作品だ。もともとは2枚目のアルバム「Lovin you」(86年)に入っていたものを再録音している。なぜそうしたか理由はよくわからないけど、過剰なくらい大仰なアレンジに変化してしまった。92年までの彼女はこの曲をライブで歌うたび、マイクなしで会場に生声を披露し強烈な印象を与えてきた。ノドに負担がかかるパフォーマンスだったためか、今ではもうこの曲を歌っていない。かつての彼女のライブを観た人にはこの曲は忘れられないだろう。
(7)彼女の彼(作詞:渡辺美里、作曲・編曲:佐橋佳幸)
歌詞の中に「カセット(テープ)」というフレーズが出てくる。当時はまだCDが出始めている時代だったのを覚えている人はどれほどいるだろう。明日から「彼女の彼」になるという好きな人に、今日だけは恋人のふりをして歩いて、と願う曲。たぶん生で聴く機会はないと勝手に思っていたけれど、06年7月22日に山梨県の山中湖畔でおこなわれたライブで披露された。客席からワーッと歓声があがったのをいまでも覚えている。
(8)ぼくでなくっちゃ(作詞・作曲:渡辺美里、編曲:清水信之)
シングル“センチメンタルカンガルー”のカップリング曲で収録されている。これは作曲も彼女自身がしている。
歌詞は、
「夜明け前ひとり
歩道橋にすわり
朝刊を運ぶ
少年をみている」
という朝の光景で始まる。伴奏はキーボードとピアノだけという非常に簡素な編成だ。音も曲調もゆったりしていてやさしい雰囲気に包まれている。
(9)Tokyo Calling(作詞:渡辺美里、作曲:伊秩弘将、編曲:清水信之)
曲名はクラッシュ(The Clash)の「London Calling」をもじったものだろう。ただ2つの曲に関連性は全くない。強いて挙げるとすれば、歌詞に少し社会性のあるテーマを取り扱っている点くらいだろうか。
高速道路の建設のために自然が破壊されていく高尾山(東京都)のことテーマにしているそうだ。ロケットの発射音やサイレンが冒頭に入るなど異色な印象を与えるものの、メッセージ性という点では特に強く感じるものはない。メッセージソングと解するより、破壊されていく世界の美しさのようなものを淡々と描いた作品と捉えたい。
「自然だけが息をしていた土手の上にも
容赦のないセメントが流し込まれる」
という感傷的な歌詞よりも、
「あの頃 きみはぼくにれんげ草をつんでくれた」
といった1行がずっと自分には残っている。どこかのブログで、このフレーズが好きだ、という人がいて嬉しかった。それは私も大いに共感するところだ。この曲も再演されることはないと勝手に思っていたけれど、07年7月29日に横浜でおこなったライブで突如うたわれてファンを驚かせた。
(10)悲しいね(Remix Version)(作詞:MISATO、作曲・編曲:小室哲哉)
87年12月9日に9枚目のシングルとして発売された曲。最高順位2位、17万5千枚を記録している。“Believe”と同じく冬の歌で、これもライブで披露される機会はいまでも結構ある。人気は高いと思われるけれど、私はいまひとつ好きになれない。悲しい悲しい、と落ち込んでいくばかりで彼女らしい上向きな部分(歌詞ではなくて、歌い方や声などの点で)が希薄に感じるからだ。ただライブ、たとえば「スタジアム伝説」(92年)でバイオリンだけをバックにこの曲を歌う姿には圧倒された。
(11)10 years(作詞:渡辺美里、作曲:大江千里、編曲:有賀啓雄)
初出はこのアルバムであるけれど、88年10月21日に出た12枚目のシングル“君の弱さ”のカップリング曲としても収録されている。ファンには改めて説明するまでもないけれど、現在のライブではほぼ確実に歌われる、“My Revolution”と双璧をなす彼女の代表曲だ。また、作曲した大江千里もいつの頃か自分でも歌うようになった。
「10年」という時間をテーマにした曲で、
「あれから10年も
この先10年も」
というフレーズは年をつれて重みが増しているような気がする。「あれから」の10年を振り返り、「この先」の10年をどうするか、そんなことをあれこれ悩んだりするのを止めることはできそうにない。こうした人間の業のようなものがこの曲には含まれている。それが彼女の歌声と相まって多くの人の心に残る作品となったのであろう。おそらくこの曲を聴いて何も感じない人は渡辺美里に縁はない。彼女の全てではないにしろ、渡辺美里の核となる大事な部分が詰まっている。
(2)恋したっていいじゃない
(3)さくらの花の咲くころに
(4)Believe(Remix Version)
(5)シャララ
(6)19歳の秘かな欲望(The Lover Soul Version)
(7)彼女の彼
(8)ぼくでなくっちゃ
(9)Tokyo Calling
(10)悲しいね(Remix Version)
(11)10 years
先日のブログでこのアルバムについて述べているうちに、発売してから20年も経っていることに気づいてしまった。私が小学生だった80年代は遥か遠い昔である。
この「ribbon」はそんな80年代の邦楽を代表する1枚といえるかもしれない。なにしろ当時としては異例のミリオンセラーを記録したのだから。当時のキャッチコピーは、
「戦後最大のPOPアルバム」
というものだった。その大仰なフレーズにシラケた人もいただろう。しかし、このアルバムや当時の美里に対してそれだけの冠をつけてもおかしくはない、と私は今でも思っている。
91年に渡辺美里を本格的に聴き始めた私にとって「ribbon」は残念ながらリアルタイムで接したわけではない。それでもこのアルバムは彼女の作品の中で3指に入るものだ。それくらい強い思い入れを持っている。最高傑作は人によって好みは分かれるだろう。しかし彼女のファンで「ribbon」を否定する人はおそらくいない。なぜならば「ribbon」は「歌手」という枠を超えて「表現者」としての渡辺美里を確立した作品だからだ。このアルバムを抜きにして渡辺美里は語れない。
1枚目の「eyes」(85年)、そしてあの“My Revolution”が入っている2枚目の「Lovin you」(86年)の時点で彼女は表向きにはプロデューサーに入っていない。またこの時期はもっぱら他人の提供する歌詞を歌っていた。そのこと自体は否定するものではない。ただ、ここまでの彼女の役割はもっぱら「歌手」としてのものだったということを指摘したいだけである。
3枚目の「Breath」(87年)よりプロデューサーで彼女も名前を連ねる。そして歌詞は自身の作詞のみになった。つまり、歌だけでなく歌詞においても自身の個性を押し出していくように変化していったわけだ。美里の「表現者」としての出発といえよう。「Breath」は10代や20代の若者が持つ心情が鮮やかに刻み込まれた傑作ではある。しかし、ここでもまだ彼女の個性が全開したとはいえないだろう。作品の持つエネルギーは圧倒的なものの、そのベクトルは内に向かっている。それが魅力的であると思う時もあれば、痛々しく感じる瞬間もある。
これと比較してみると、「ribbon」も強いエネルギーの出ているアルバムであるけれどその方向は外へ広がっている。平たく言うと非常に開放的で風通しの良いアルバムに仕上がっているのだ。だからこそこれほどのセールスを記録したのだろう。
それでは「ribbon」をもって確立された彼女の個性とは何だろうか。それは私の言葉で「写実性」と表現したい。ここではこの「写実性」というものを軸にして渡辺美里と「ribbon」について書いてみたい。
いままで彼女について写実性という観点から述べた文章は見たことがない。けれど、私は10代の時から渡辺美里を写実的な表現者だと感じていた。いまもその印象は変わっていない。そして「ribbon」はその典型的な作品だと位置づけている。
論拠を示すため、「ribbon」の歌詞カードに載っている彼女の文章を取り上げたい。この21行の文章にアルバムの中身が見事に凝縮されている。
「私には手紙を通じての友だちがたくさんいます。
レコードを出す前からの友だち。
真夜中のラジオの生放送にハガキを送ってくれた友だち。
外国からのエアメイルをくれる友だち。
今もその頃の手紙を読み返したりすると
一緒にうれしくなったり時には悲しくなったり
また励まされたりします。
そんな人たちの現在を想いながら
いくつかの歌をつくってみました。
みんなとの結び目になればそしてありがとうの想いをこめて
このレコード「ribbon」を捧げます。
91匹のTinyカンガルー
右あがりの丸い文字の君、因数分解を教えてくれた君
やさしい目をしたティーンエイジママ
ファーストフードのレジ笑顔でたたいている君
彼女の彼、れんげ草をつんでくれた君
朝刊を運ぶ少年、よくにた瞳をした恋人
街を歩くピノキオ、歩はばをあわせて歩いてくれた君
汚れたシューズ、よれよれのシャツの君
屋上に腰かけて檸檬かじった君
そして、全てのセンチメンタルカンガルーへ」
アルバムを聴いている人には、この文章から音が聴こえてくる気がしてこないだろうか。たとえ聴いたことのない人でも、どんなアルバムかイメージが湧いてくるのではないか。
たわいものないことが書いてると思う人もいるかもしれない。しかしこうしたたわいもなさが「ribbon」の本質である。「Breath」は大人の世界を目の前にして苦悩している若者が主に描かれていたのに対し、「ribbon」の登場人物はどこにでもいる街の人たちだ。そんな何気ない光景が彼女の手によって普遍的で鮮やかな11編の歌に変わっている。前作と比べて彼女の視点がずっと細やかになったことがうかがえよう。
渡辺美里という人は非常に簡潔にわかりやすく情景を描くのが上手な表現者である(であった、という方が適切だろうか)。しかしこうした彼女の才能を指摘する人を見たことがない。それはファンもアンチも同じである。たとえば意識的な音楽ファンや音楽ライターといった人たちは芸術家くずれのような人が多く、意味不明なものをありがたがり、いわゆる「わかりやすい」作品は「単純」などとレッテルを貼り敬遠するきらいがある。さらにはライター自身も訳のわからない文章を書いて自己満足しているから余計にタチが悪い。「わかりやすい表現」を嫌うのは一向に構わない。それは各人の趣味の問題だから。ただそれが悪いとか駄目だとか言って批判するのは浅薄な話であるということだけは言いたい。
人にパッと伝わるような表現をするのは簡単なことではない。ましてや文章や言葉ではなく音楽をもってするのはいっそう困難な作業である。それを自覚している人は残念ながら本当に少ない。知名度も評価も得られぬまま一生を終わってしまうであろう音楽ライターの皆さんは果たして他人に伝達可能な文章を書いているだろうか。一度は振り返ってみることをお勧めしたい。
本題が外れてしまった。私が強調したいのは、渡辺美里は写実的で鮮やかな光景を提示できる数少ない表現者であるということだ。いや個人的には彼女以外に私は知らない。だから今でも彼女を追いかけざるをえないのだ。昔のようなライブや作品は望めないにしても、代わりになる人がいないのだから仕方ない。
せっかくの機会だから色々書いてみたい。実は、美里のCDを聴くたびに恐れていることがある。10代に心を振るわせた音楽が年を経るごとに色あせていくのではないだろうか、という不安だ。
正直に言うと、歌詞については10代の頃にもっと共感していたような気がする。年をくってしまった自分には縁遠くなった部分が多くなったからだろう。しかしそれは仕方ない話である。そもそもロックやポップスというのはもともと若者のために作られた音楽なのだから。年齢を重ねたため作品に共感できなくなるというのは当然の現象である。それを駄目だという輩は何か勘違いしている。おじさんおばさんの身になってもまだロックやポップスに異様な執着をしているほうがよほど世間ズレているのだから。
ただ、音や歌声は色あせていないのにはホッとする。彼女の声がもつ力強さややさしさ、“さくらの花の咲くころに”の美しい情景、“恋したっていいじゃない”の可愛らしさ、“10 years”を聴く時のなんともいえない心境などはいまだに力を失っていない。
せめて彼女の歌の力だけはこのまま失わないで欲しいと願う。そして、このまま自分の人生が終わるまで、アルバムの輝きは消えないでほしい。私としては渡辺美里の作品をずっと座右に置きたいのである。
今年は20周年ということでデラックス・エディションなど出てくれたら、という思いもある。昔のライブ音源なんて追加されたら感涙ものだろう。といっても、BOOK OFFあたりで二束三文で売られているような状態では望むだけ無理な話だ。それならせめて、このような音楽を求めている人の手に渡ってほしいと願う。
思い入れの強い作品なので、最後に1曲ずつ簡単な感想などを記したい。ちなみにアルバムは88年5月28日に発売され、初登場1位を記録しそのまま4週連続で首位にとどまった。
【曲目解説】
(1)センチメンタルカンガルー(作詞:渡辺美里、作曲・編曲:佐橋佳幸)
88年7月21日、11枚目のシングルとなった曲。最高順位9位、8万枚を売り上げる。缶コーヒー「UCC」のCMにも使われた。「センチメンタルカンガルー」という印象的な言葉は彼女の造語で特に意味はないようだ。こうした一つ一つのフレーズに彼女の言葉に対する感覚の鋭さを感じるけれど、皆さんはいかがだろうか。
(2)恋したっていいじゃない(作詞:渡辺美里、作曲:伊秩弘将、編曲:清水信之)
88年4月21日、10枚目のシングル。最高位2位、24万6千枚を売り上げる。この曲も缶コーヒー「UCC」のCMにも起用された。アルバムの中で最もスピード感がある曲だ。歌詞のテーマはタイトルの通りのものだ。しかし、サビの「D.A.T.E!」などの可愛いらしいフレーズが随所にあったり、
「ルーズな街のインチキに打ちのめされても
流行のスタイルに流されないよ」
といった登場人物の芯の強い部分が見え隠れしたりと、単にハードでポップな曲にとどまらぬ鮮やかな世界を築いている。いまでもライブで披露されれば盛り上がる。彼女の代表曲の一つといえよう。
(3)さくらの花の咲くころに(作詞:渡辺美里、作曲:木根尚登、編曲:清水信之)
シングル曲ではないけれどファンの間では人気が高い。さくらの花の咲くころには、風の強い日には自分を思い出してほしいと呼びかける。春の光景を美しくやさしい視点で描いていて、こうした曲は前作までにはなかった。また2曲目とはうって変わって、アコースティックギターを主体にしたゆったりした曲調なのも印象を強めているような気がする。
(4)Believe(Remix Version)(作詞:渡辺美里、作曲:小室哲哉、編曲:大村雅朗)
86年10月22日にはすでにシングルとして出ている。最高2位、20万6千枚を売り上げた。TBS系ドラマ「痛快!OL通り」の主題歌に使われた。時期的には「Breath」であるけれどなぜかこのアルバムに収録された。歌詞も曲調も「Breath」の世界に近い。さっきは春の歌だがこちらは冬、しかも張りつめたような寒さを感じる曲である。しかし、むしろ清々しい印象を与えるのは彼女のキャラクターによるものだろう。いま思ったが、彼女は四季というものも歌にきっちりと描いている傾向も強い。この曲もその一端を示す作品である。
(5)シャララ(作詞:渡辺美里、作曲:岡村靖幸、編曲:佐橋佳幸・西平彰)
冒頭の「ウォーウォー」やサビの「シャララララララ」などコーラス(クレジットに「荒川少年少女合唱隊」という名前もある)に力を入れている。歌詞については、これから新しい出発をしようとしている人に向けているようだ。ただ、それよりもコーラスを含めた楽しい雰囲気に浸ったほうが正解だろう。聴くたびに気持ちが高揚させられる。また、
「教室のだれより 大人びた girl friend
今はやさしい目をしてる teenage mama ね
路地裏のヒーロー 憧れた girl friend
ファーストフードのレジ 笑顔でたたいている」
という若者に対する彼女の柔らかい視点も魅力的だ。
(6)19歳の秘かな欲望(The Lover Soul Version)(作詞:戸沢暢美、作曲:岡村靖幸、編曲:佐橋佳幸)
アルバムで唯一、彼女の作詞ではない作品だ。もともとは2枚目のアルバム「Lovin you」(86年)に入っていたものを再録音している。なぜそうしたか理由はよくわからないけど、過剰なくらい大仰なアレンジに変化してしまった。92年までの彼女はこの曲をライブで歌うたび、マイクなしで会場に生声を披露し強烈な印象を与えてきた。ノドに負担がかかるパフォーマンスだったためか、今ではもうこの曲を歌っていない。かつての彼女のライブを観た人にはこの曲は忘れられないだろう。
(7)彼女の彼(作詞:渡辺美里、作曲・編曲:佐橋佳幸)
歌詞の中に「カセット(テープ)」というフレーズが出てくる。当時はまだCDが出始めている時代だったのを覚えている人はどれほどいるだろう。明日から「彼女の彼」になるという好きな人に、今日だけは恋人のふりをして歩いて、と願う曲。たぶん生で聴く機会はないと勝手に思っていたけれど、06年7月22日に山梨県の山中湖畔でおこなわれたライブで披露された。客席からワーッと歓声があがったのをいまでも覚えている。
(8)ぼくでなくっちゃ(作詞・作曲:渡辺美里、編曲:清水信之)
シングル“センチメンタルカンガルー”のカップリング曲で収録されている。これは作曲も彼女自身がしている。
歌詞は、
「夜明け前ひとり
歩道橋にすわり
朝刊を運ぶ
少年をみている」
という朝の光景で始まる。伴奏はキーボードとピアノだけという非常に簡素な編成だ。音も曲調もゆったりしていてやさしい雰囲気に包まれている。
(9)Tokyo Calling(作詞:渡辺美里、作曲:伊秩弘将、編曲:清水信之)
曲名はクラッシュ(The Clash)の「London Calling」をもじったものだろう。ただ2つの曲に関連性は全くない。強いて挙げるとすれば、歌詞に少し社会性のあるテーマを取り扱っている点くらいだろうか。
高速道路の建設のために自然が破壊されていく高尾山(東京都)のことテーマにしているそうだ。ロケットの発射音やサイレンが冒頭に入るなど異色な印象を与えるものの、メッセージ性という点では特に強く感じるものはない。メッセージソングと解するより、破壊されていく世界の美しさのようなものを淡々と描いた作品と捉えたい。
「自然だけが息をしていた土手の上にも
容赦のないセメントが流し込まれる」
という感傷的な歌詞よりも、
「あの頃 きみはぼくにれんげ草をつんでくれた」
といった1行がずっと自分には残っている。どこかのブログで、このフレーズが好きだ、という人がいて嬉しかった。それは私も大いに共感するところだ。この曲も再演されることはないと勝手に思っていたけれど、07年7月29日に横浜でおこなったライブで突如うたわれてファンを驚かせた。
(10)悲しいね(Remix Version)(作詞:MISATO、作曲・編曲:小室哲哉)
87年12月9日に9枚目のシングルとして発売された曲。最高順位2位、17万5千枚を記録している。“Believe”と同じく冬の歌で、これもライブで披露される機会はいまでも結構ある。人気は高いと思われるけれど、私はいまひとつ好きになれない。悲しい悲しい、と落ち込んでいくばかりで彼女らしい上向きな部分(歌詞ではなくて、歌い方や声などの点で)が希薄に感じるからだ。ただライブ、たとえば「スタジアム伝説」(92年)でバイオリンだけをバックにこの曲を歌う姿には圧倒された。
(11)10 years(作詞:渡辺美里、作曲:大江千里、編曲:有賀啓雄)
初出はこのアルバムであるけれど、88年10月21日に出た12枚目のシングル“君の弱さ”のカップリング曲としても収録されている。ファンには改めて説明するまでもないけれど、現在のライブではほぼ確実に歌われる、“My Revolution”と双璧をなす彼女の代表曲だ。また、作曲した大江千里もいつの頃か自分でも歌うようになった。
「10年」という時間をテーマにした曲で、
「あれから10年も
この先10年も」
というフレーズは年をつれて重みが増しているような気がする。「あれから」の10年を振り返り、「この先」の10年をどうするか、そんなことをあれこれ悩んだりするのを止めることはできそうにない。こうした人間の業のようなものがこの曲には含まれている。それが彼女の歌声と相まって多くの人の心に残る作品となったのであろう。おそらくこの曲を聴いて何も感じない人は渡辺美里に縁はない。彼女の全てではないにしろ、渡辺美里の核となる大事な部分が詰まっている。
今日はこんな日、でも大間違い
2008年5月28日 渡辺美里さっき何となく「CDジャーナル」のサイトを覗いたら、右のほうにある「今日は何の日?!」というところに、
「渡辺美里が大ヒット・アルバムを発売」
と書いてあった。
http://www.cdjournal.com/main/calendar/today.php?tno=302
思いあたるフシがあったのでクリックしてみたら、やはり88年のアルバム「ribbon」についてであった。この作品はこの年の5月28日に発売され120万枚も売り上げた。彼女のセールスの最高記録である。
しかし、書いてあった文章がいただけない。
「渡辺美里の大ヒット3rdアルバム『ribbon』発売。当時にしては珍しいミリオン・セラーを達成し、同年の最高売り上げを記録したこのアルバムは、豪華な楽曲提供者によるヒット曲が満載であった。小室哲哉の「悲しいね」ほか、伊秩弘将「恋したっていいじゃない」、大江千里「10 years」、佐橋佳幸「センチメンタルカンガルー」、岡村靖幸「シャララ」、そして木根尚登「さくらの花の咲く頃に」など。美里姉御の元気で一生懸命な応援ソングが、時代と合致した時期であった。」
読んだ瞬間、ガックリと力が抜ける。「ribbon」は「4枚目」のアルバムだ。なんでこんな根本のところを間違えるのだろう。何も調べて書いてないのが一目瞭然である。
この文章の下には、
「2001年04月23日作成(掲載記事は基本的に作成時の内容のまま掲載しております。作成後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。)」
というただし書きが虚しい。動向とかは全く関係ないだろうが。つくづく、音楽誌もサイトもたいした情報がないのだなあと再確認した出来事だった。
「渡辺美里が大ヒット・アルバムを発売」
と書いてあった。
http://www.cdjournal.com/main/calendar/today.php?tno=302
思いあたるフシがあったのでクリックしてみたら、やはり88年のアルバム「ribbon」についてであった。この作品はこの年の5月28日に発売され120万枚も売り上げた。彼女のセールスの最高記録である。
しかし、書いてあった文章がいただけない。
「渡辺美里の大ヒット3rdアルバム『ribbon』発売。当時にしては珍しいミリオン・セラーを達成し、同年の最高売り上げを記録したこのアルバムは、豪華な楽曲提供者によるヒット曲が満載であった。小室哲哉の「悲しいね」ほか、伊秩弘将「恋したっていいじゃない」、大江千里「10 years」、佐橋佳幸「センチメンタルカンガルー」、岡村靖幸「シャララ」、そして木根尚登「さくらの花の咲く頃に」など。美里姉御の元気で一生懸命な応援ソングが、時代と合致した時期であった。」
読んだ瞬間、ガックリと力が抜ける。「ribbon」は「4枚目」のアルバムだ。なんでこんな根本のところを間違えるのだろう。何も調べて書いてないのが一目瞭然である。
この文章の下には、
「2001年04月23日作成(掲載記事は基本的に作成時の内容のまま掲載しております。作成後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。)」
というただし書きが虚しい。動向とかは全く関係ないだろうが。つくづく、音楽誌もサイトもたいした情報がないのだなあと再確認した出来事だった。
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渡辺美里「yes」(08年)
2008年2月14日 渡辺美里
渡辺美里 Billy Joel 渡辺善太郎 住友紀人 CD エピックレコードジャパン 2008/02/06 ¥1,020
(1)yes
(2)And So It Goes〜そして今は・・・
この前(たしか木曜日)、ラーメン屋で昼食を取っていると店のテレビからこの“yes”が流れてきた。実はこの曲、TBS系 愛の劇場「三代目のヨメ!」という昼ドラの主題歌に採用されている。それが流れている時間にたまたま出くわしたわけだ。
“yes”は昨年のアルバム「ココロ銀河」(07年)にも参加した近藤薫が曲を提供している。
http://www.kondokaoru.com/
そのせいかこの曲も「ココロ銀河」の感触に近い気がする。ただ、“yes”はアルバムに入っているどの曲よりもずっとアップテンポな調子だ。歌詞も湿っぽいところは一切ない。シングルに選ばれたのも納得がいく。
もしあの地味な「ココロ銀河」の中にこの曲が含まれていたとしたら、アルバムの印象もかなり変わっていたのではないだろうか。シングルを繰り返し聴きながらそんなことをふと思った。ライブ映えする佳曲だとは思う。ぜひずっと歌い続けて彼女の新しいスタンダードに定着することを願う。だが、生で聴けるのはいつになるだろう。やはり夏の野外ライブだろうか。
2曲目の“And So It Goes〜そして今は・・・〜”はビリー・ジョエルのトリビュート・アルバム「WANNA BE THE PIANO MAN 」(06年)に提供したもので、実は昨年末にこのアルバムを入手してしまった。シングルに入ると知っていれば買わなかったのだが、時すでに遅しである。
ちなみにオリジナルは89年のアルバム「ストーム・フロント」に収録されている。そちらの方は聴いたことがないけれど、このカバーではストリングスをバックにした雄大なバラードへと仕上がっている。これも生で聴いてみたい気もするけれど、オーケストラとの共演でも無い限りは無理だろうな。
(1)yes
(2)And So It Goes〜そして今は・・・
この前(たしか木曜日)、ラーメン屋で昼食を取っていると店のテレビからこの“yes”が流れてきた。実はこの曲、TBS系 愛の劇場「三代目のヨメ!」という昼ドラの主題歌に採用されている。それが流れている時間にたまたま出くわしたわけだ。
“yes”は昨年のアルバム「ココロ銀河」(07年)にも参加した近藤薫が曲を提供している。
http://www.kondokaoru.com/
そのせいかこの曲も「ココロ銀河」の感触に近い気がする。ただ、“yes”はアルバムに入っているどの曲よりもずっとアップテンポな調子だ。歌詞も湿っぽいところは一切ない。シングルに選ばれたのも納得がいく。
もしあの地味な「ココロ銀河」の中にこの曲が含まれていたとしたら、アルバムの印象もかなり変わっていたのではないだろうか。シングルを繰り返し聴きながらそんなことをふと思った。ライブ映えする佳曲だとは思う。ぜひずっと歌い続けて彼女の新しいスタンダードに定着することを願う。だが、生で聴けるのはいつになるだろう。やはり夏の野外ライブだろうか。
2曲目の“And So It Goes〜そして今は・・・〜”はビリー・ジョエルのトリビュート・アルバム「WANNA BE THE PIANO MAN 」(06年)に提供したもので、実は昨年末にこのアルバムを入手してしまった。シングルに入ると知っていれば買わなかったのだが、時すでに遅しである。
ちなみにオリジナルは89年のアルバム「ストーム・フロント」に収録されている。そちらの方は聴いたことがないけれど、このカバーではストリングスをバックにした雄大なバラードへと仕上がっている。これも生で聴いてみたい気もするけれど、オーケストラとの共演でも無い限りは無理だろうな。
渡辺美里 東京公演(08年1月1日、渋谷C.Cレモンホール)
2008年1月1日 渡辺美里
午前8時半、元日でこの厳しい寒さの中、なぜか私は京都駅のホームにいた。これから新幹線で東京へ向かう。キオスクで買った「天むす」を車中で食べ、ニール・ヤングやサム・クックを iPodで聴きながらずっと本を読んでいた。
今日は渋谷で渡辺美里のライブがおこなわれる。元日にわざわざ京都から上京するなんて、と思う人もいるだろう。しかし、こんな日にすることがあるだろうか。年の始めに好きなミュージシャンを観られるというのはこのうえない喜びである。
チケットはすぐに完売した。しかも大半はファンクラブの先行予約でさばけてしまったらしい。それを逃した人は一般販売でも取れなくてチケットを入手できなかった、という話も聞いた。
11時少し前に東京駅に到着する。ニュースでは寒波だと騒がれていたけれど、どちらかといえば暖かいくらいだ。新宿周辺で昼食を済ませ、ブラブラしながら午後2時にはすでに渋谷のC.Cレモンホール前に着いてしまった。すでに人はいっぱいいて物販も始まっている。周囲を見ると、赤い福袋を手に提げている人が多い。どうやらこれも売っているようだ。これには興味がでてきて、列に並んで買うことにする。価格は1万円とけっこうな額だった。画像がそれである。ちなみに150個あった福袋は見事に完売した。
しかし、中身を開けてガックリする。これ1個あたり7000円くらい利益が出るのでは、というような内容だったからだ。具体的にいえば、
スタンダードフリース ブランケット:「膝掛け・肩掛けとしてお使いください」
と書いてある。コモモのイラストが貼っていた。
トランプ:「kokoro ginga」という字が入っている。
風呂敷:ペットボトルをリサイクルした、再生ポリエステル100%の風呂敷。
ポチ袋:5枚1組の、お年玉を入れるような袋。「misato」と小さな字が入っている。
サトウの福餅入り鏡餅 宝船:小さな鏡餅で、てっぺんには「美」と書かれた帆掛け船が乗っかっている。
美里おみくじ:運勢は「中吉」だった。そして,
二〇〇八年のアナタ「美容&健康に気をつかうと吉!?」
ラッキースポット「夏の東京&大阪」
ラッキーSONG「Believe」
となっていて、
「今日は二〇〇八年 美里新春ライブにようこそ。おみくじの結果はどうでしたか?お守り代わりにいつも近くに置いてくださいね。今日から初(原文ママ)まる366日、あなたにとってハッピーがたくさん起こりますように。」
この福袋を買ったおかげでもうすでにハッピーでないような・・・などと気落ちしながら近く「NHKスタジオパーク」に入る。
http://www.nhk.or.jp/studiopark/
普段は有料だが3が日はタダだったのは幸運だ。お客がニュースを読んだり天気図を指したりなどいろいろ体験できてなかなか面白い。ここで時間をしばらくつぶして、午後3時いよいよ会場に入る。
座席は「1階27列7番」だった。ピンとこないだろうが、最後尾から3列目の左端の方である。先行予約の際は、
「FC会員の方にどこよりも良い席をご用意いたします。」
という案内だったので多少は期待していた。そしてこの席だったので結構ガッカリする。いや、やはり彼女について妙な期待をしてはいけない、と気持ちを新たにする良い機会と思った。しかし、ステージを見るには十分だが表情はとても確認できそうにない。あと、入口では桝が配られていた。正月らしいけれど、使うことはないだろうな。
舞台は年末の「ココロ銀河ツアー」と同じ形だった。ただ、両端には門松が置いてあり正月の雰囲気を出している。選曲はツアーと変えてくるだろうか。私の興味はそれくらいでしかない。
午後3時35分ごろ照明が落ちる。そして「ココロ銀河ツアー」のごとく星空のような明かりが出てくる、かと思ったら真っ赤な光が出てきてドアーズ(The Doors)の“Break On Through”が流れ出し会場が沸く。この曲は93年の西武ライブから始まりの合図に使われたことでファンには記憶に残っている。最も新しいのは04年の西武ライブ以来だから懐かしいかな。
1曲目は、ツアーの時にアンコールで歌った“Long Night”、そして“サマータイム ブルース”、“恋したっていいじゃない”と盛り上がる曲が一気に演奏される。“恋したっていいじゃない”の演奏が始まると「謹賀新年」と書かれた幕がバッと下りてきた。ちょっと飛ばしすぎでは?というほど勢いのある序盤だった。
しかしそんな心配も杞憂に終わり、中盤はかなり大人しめの選曲となる。基本的にはツアーで演奏したものが中心で、しかし新たな曲もけっこう追加されていた。
まず、ツアーで大盛り上がりとなったカードで曲を選ぶコーナーでは、
・風待草 〜かぜまちぐさ〜
・悲しいね
・小指
・truth
・Gift
・また、明日
とカードも少し新しくなっている。ちなみに今回は、曲名を全て明らかにしたうえで選ばせていた。ただこのカードは・・・個人的にはどれでも良いです、という感想しかもてない。ただ年始といえば、歌詞に「年賀状」と出てくる“Gift”が浮いている。選んだニューハーフらしき人も謀ったように“Gift”に決めていた。
よく考えれば、この曲を聴くのはけっこう久しぶりな気がしないでもない。でも、一時期はことあるたびに歌われていたし、あんまり貴重だとも思えないというのが本音である。それから、“Oh! Hardest Night”も披露された。これは歌詞に「渋谷」が出てくるからだろう。実はこの曲が好きで、個人的にはこの日のハイライトと思っている、少数派かもしれないけれど。
“熱情”のあと「菊正宗」の樽が2つ出て来て鏡割りの儀式だ。さっきの桝はこのために使うものだったのか。一緒にする人を会場の中から美里が指名した。すると、中央で怪しい動きをしていた男性がステージに向かう。誰かと思ったら、それは槙原敬之だった。樽を割って、彼女に提供した“トマト”をデュエットしてあっさりと引っ込む。それにしても妙なテンションの人だった。その後はツアーと同じ流れで本編が終了する。
白眉はアンコールだろう。“My Revolution”の後で、懐かしいキーボードの音が鳴り出す。なんと“JUMP”だった。最後の西武ライブ(05年)以来でスタジアムでしか歌ってない印象の曲なので、嬉しい不意打ちだった。“すき”を挟んで、これまた3年ぶりの“Lovin’ You”も歌われて、これで上京した甲斐はあったかなという気持ちになる。
ここでバンド全員が前に出て来て終了と思いきゃ、この場所ではこれを歌わないと、とか言って“eyes”を披露する。それから2月に出るという“yes”を触りだけ歌った。終わったのは6時半、約3時間と予想を上回る長さだった。夏のライブ並みである。
最後の方のMCで、今年の夏は東京でライブをおこなうと発表していた。まだ未定なものの大阪も検討しているらしい。しかし、東京は8月9日(土)、いつも仕事の入る時期にあたる。果たしてどうなるか、いまはまだわからない。
会場を出ると、
「やっぱり福袋を買ったのは失敗だったな」
という後悔の念がまた出てくる。しかし、買わなかったら買わなかったで悔いが残ったかもしれないが。美里の状態は無難な感じだったが、アンコールの2曲(“JUMP”、“Lovin’ You”)が聴けたので個人的には良しとしよう。さて、今年は何本のライブを観るのだろう。
ライブが終わったのはまだ早い時間だったので京都に戻る予定だったが、知り合いから連絡があったため一緒に食事をして、新宿のカプセルホテルで一夜を過ごした。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)Long Night
(2)サマータイムブルース
(3)恋したっていいじゃない
(4)青い鳥
(5)Believe
(6)私のカルテ
(7)I wish
(8)Gift※6枚のカードから選ぶ
(9)Oh! Hardest Night
(10)熱情
(11)トマト※槙原敬之とデュエット
(12)Cosmic Girl
(13)パイナップルロマンス
(14)ムーンライトダンス
(15)ココロ銀河
(16)10 years
〈アンコール〉
(17)My Revolution
(18)JUMP
(19)すき
(20)Lovin’ You
(21)eyes
(22)yes※触りだけを歌う
今日は渋谷で渡辺美里のライブがおこなわれる。元日にわざわざ京都から上京するなんて、と思う人もいるだろう。しかし、こんな日にすることがあるだろうか。年の始めに好きなミュージシャンを観られるというのはこのうえない喜びである。
チケットはすぐに完売した。しかも大半はファンクラブの先行予約でさばけてしまったらしい。それを逃した人は一般販売でも取れなくてチケットを入手できなかった、という話も聞いた。
11時少し前に東京駅に到着する。ニュースでは寒波だと騒がれていたけれど、どちらかといえば暖かいくらいだ。新宿周辺で昼食を済ませ、ブラブラしながら午後2時にはすでに渋谷のC.Cレモンホール前に着いてしまった。すでに人はいっぱいいて物販も始まっている。周囲を見ると、赤い福袋を手に提げている人が多い。どうやらこれも売っているようだ。これには興味がでてきて、列に並んで買うことにする。価格は1万円とけっこうな額だった。画像がそれである。ちなみに150個あった福袋は見事に完売した。
しかし、中身を開けてガックリする。これ1個あたり7000円くらい利益が出るのでは、というような内容だったからだ。具体的にいえば、
スタンダードフリース ブランケット:「膝掛け・肩掛けとしてお使いください」
と書いてある。コモモのイラストが貼っていた。
トランプ:「kokoro ginga」という字が入っている。
風呂敷:ペットボトルをリサイクルした、再生ポリエステル100%の風呂敷。
ポチ袋:5枚1組の、お年玉を入れるような袋。「misato」と小さな字が入っている。
サトウの福餅入り鏡餅 宝船:小さな鏡餅で、てっぺんには「美」と書かれた帆掛け船が乗っかっている。
美里おみくじ:運勢は「中吉」だった。そして,
二〇〇八年のアナタ「美容&健康に気をつかうと吉!?」
ラッキースポット「夏の東京&大阪」
ラッキーSONG「Believe」
となっていて、
「今日は二〇〇八年 美里新春ライブにようこそ。おみくじの結果はどうでしたか?お守り代わりにいつも近くに置いてくださいね。今日から初(原文ママ)まる366日、あなたにとってハッピーがたくさん起こりますように。」
この福袋を買ったおかげでもうすでにハッピーでないような・・・などと気落ちしながら近く「NHKスタジオパーク」に入る。
http://www.nhk.or.jp/studiopark/
普段は有料だが3が日はタダだったのは幸運だ。お客がニュースを読んだり天気図を指したりなどいろいろ体験できてなかなか面白い。ここで時間をしばらくつぶして、午後3時いよいよ会場に入る。
座席は「1階27列7番」だった。ピンとこないだろうが、最後尾から3列目の左端の方である。先行予約の際は、
「FC会員の方にどこよりも良い席をご用意いたします。」
という案内だったので多少は期待していた。そしてこの席だったので結構ガッカリする。いや、やはり彼女について妙な期待をしてはいけない、と気持ちを新たにする良い機会と思った。しかし、ステージを見るには十分だが表情はとても確認できそうにない。あと、入口では桝が配られていた。正月らしいけれど、使うことはないだろうな。
舞台は年末の「ココロ銀河ツアー」と同じ形だった。ただ、両端には門松が置いてあり正月の雰囲気を出している。選曲はツアーと変えてくるだろうか。私の興味はそれくらいでしかない。
午後3時35分ごろ照明が落ちる。そして「ココロ銀河ツアー」のごとく星空のような明かりが出てくる、かと思ったら真っ赤な光が出てきてドアーズ(The Doors)の“Break On Through”が流れ出し会場が沸く。この曲は93年の西武ライブから始まりの合図に使われたことでファンには記憶に残っている。最も新しいのは04年の西武ライブ以来だから懐かしいかな。
1曲目は、ツアーの時にアンコールで歌った“Long Night”、そして“サマータイム ブルース”、“恋したっていいじゃない”と盛り上がる曲が一気に演奏される。“恋したっていいじゃない”の演奏が始まると「謹賀新年」と書かれた幕がバッと下りてきた。ちょっと飛ばしすぎでは?というほど勢いのある序盤だった。
しかしそんな心配も杞憂に終わり、中盤はかなり大人しめの選曲となる。基本的にはツアーで演奏したものが中心で、しかし新たな曲もけっこう追加されていた。
まず、ツアーで大盛り上がりとなったカードで曲を選ぶコーナーでは、
・風待草 〜かぜまちぐさ〜
・悲しいね
・小指
・truth
・Gift
・また、明日
とカードも少し新しくなっている。ちなみに今回は、曲名を全て明らかにしたうえで選ばせていた。ただこのカードは・・・個人的にはどれでも良いです、という感想しかもてない。ただ年始といえば、歌詞に「年賀状」と出てくる“Gift”が浮いている。選んだニューハーフらしき人も謀ったように“Gift”に決めていた。
よく考えれば、この曲を聴くのはけっこう久しぶりな気がしないでもない。でも、一時期はことあるたびに歌われていたし、あんまり貴重だとも思えないというのが本音である。それから、“Oh! Hardest Night”も披露された。これは歌詞に「渋谷」が出てくるからだろう。実はこの曲が好きで、個人的にはこの日のハイライトと思っている、少数派かもしれないけれど。
“熱情”のあと「菊正宗」の樽が2つ出て来て鏡割りの儀式だ。さっきの桝はこのために使うものだったのか。一緒にする人を会場の中から美里が指名した。すると、中央で怪しい動きをしていた男性がステージに向かう。誰かと思ったら、それは槙原敬之だった。樽を割って、彼女に提供した“トマト”をデュエットしてあっさりと引っ込む。それにしても妙なテンションの人だった。その後はツアーと同じ流れで本編が終了する。
白眉はアンコールだろう。“My Revolution”の後で、懐かしいキーボードの音が鳴り出す。なんと“JUMP”だった。最後の西武ライブ(05年)以来でスタジアムでしか歌ってない印象の曲なので、嬉しい不意打ちだった。“すき”を挟んで、これまた3年ぶりの“Lovin’ You”も歌われて、これで上京した甲斐はあったかなという気持ちになる。
ここでバンド全員が前に出て来て終了と思いきゃ、この場所ではこれを歌わないと、とか言って“eyes”を披露する。それから2月に出るという“yes”を触りだけ歌った。終わったのは6時半、約3時間と予想を上回る長さだった。夏のライブ並みである。
最後の方のMCで、今年の夏は東京でライブをおこなうと発表していた。まだ未定なものの大阪も検討しているらしい。しかし、東京は8月9日(土)、いつも仕事の入る時期にあたる。果たしてどうなるか、いまはまだわからない。
会場を出ると、
「やっぱり福袋を買ったのは失敗だったな」
という後悔の念がまた出てくる。しかし、買わなかったら買わなかったで悔いが残ったかもしれないが。美里の状態は無難な感じだったが、アンコールの2曲(“JUMP”、“Lovin’ You”)が聴けたので個人的には良しとしよう。さて、今年は何本のライブを観るのだろう。
ライブが終わったのはまだ早い時間だったので京都に戻る予定だったが、知り合いから連絡があったため一緒に食事をして、新宿のカプセルホテルで一夜を過ごした。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)Long Night
(2)サマータイムブルース
(3)恋したっていいじゃない
(4)青い鳥
(5)Believe
(6)私のカルテ
(7)I wish
(8)Gift※6枚のカードから選ぶ
(9)Oh! Hardest Night
(10)熱情
(11)トマト※槙原敬之とデュエット
(12)Cosmic Girl
(13)パイナップルロマンス
(14)ムーンライトダンス
(15)ココロ銀河
(16)10 years
〈アンコール〉
(17)My Revolution
(18)JUMP
(19)すき
(20)Lovin’ You
(21)eyes
(22)yes※触りだけを歌う
渡辺美里 大阪公演(2007年12月9日、NHK大阪ホール)
2007年12月9日 渡辺美里振り返ってみれば今年も渡辺美里のライブはけっこう観た。列挙すると、
1月27日、東京・天王洲銀河劇場:詩の朗読会「言の葉コンサート」
3月11日、東京国際フォーラムCホール:谷村新司の「ココロの学校」のゲスト出演
5月19日、奈良・薬師寺:Present Tree Live
7月29日、横浜みなとみらい・新港埠頭特設ステージ横浜ライブ:恒例の野外ライブ
8月18日、熊本城・奉行丸特設ステージ:これも野外ライブ
11月24日、神戸国際会館こくさいホール:「ココロ銀河ツアー」
そして本日のNHK大阪ライブを入れると7本になった。BONNIE PINKでも3本だから数では突出している。1月の詩の朗読会や「ココロの学校」など意味不明な内容もあったものの、7月のライブは奇跡的なほど良かったし、こないだの神戸公演もそれに次ぐ素晴らしいものだった。突出した内容を2度観られたのだから、今年の美里は良かった方だと言いたい。
そして今回のNHK大阪ホールは私にとって今年最後のライブである。果たして有終の美を飾れるかどうか。そんなことを思いながらの開演だ。
内容は基本的にこないだの神戸と変更はない。唯一変わってくる5曲目は“BELIEVE”になった。冬のこの時期だからということだろうが、無難な選曲になってしまった感がある。神戸のみで披露された“Boys Cried ”は貴重であったというしかない。
そして今回のツアー恒例の、カードをお客が引いて曲を選ぶコーナーでは、なんと曲名をあらかじめ見せる方法になった。今日のカードは、
小指
Blue Butterfly
Heart Of Gold
風待草〜かぜまちぐさ〜
truth
I wish
この曲名を見た時にはかなり失望する。他の会場ではあった“Kick Off”のカードが入ってなかったからだ。この曲を聴ける可能性がこの瞬間に断たれてしまう。結局、美里が指名した最前列の女性は“I wish”を選ぶ。この6曲の中でとなれば妥当な選択には違いない。
それにしても、このカードで曲を選ぶコーナーだが、わざわざ客席に選ばせるような類の曲だろうか。見れば、“I wish”以外は全て21世紀に出た曲ばかりである。彼女が本当に歌いたければ、わざわざコーナーなど設けずに通常のセット・リストに組み込めば良いと思うのだが。このあたりに表現者と受け手との超え難い断絶を感じてしまう。
全体の選曲についても疑問がある。今回のライブの曲目を見ると「ココロ銀河」の収録曲ばかりで、「ソレイユ」(01年)、「ORANGE」(03年)、「Blue Butterfly」(04年)、「Sing And Roses」(05年)など最近のアルバムの曲がまったく入っていないのだ。振り返ってみると最近のツアーはいつもこんな感じだ。新作の曲は今回限りで、次のツアーには全く演奏されない。なんだか使い捨ての気がしてあまりに悲しい。
この10年ほどで発表された曲では“サンキュ”くらいしかファンに定着していない気がするが、彼女にしても曲を根付かせようとする意識が高いと思えない。ならば新作など出さず80年代から90年代前半の曲ばかり歌ったらどうだろう。長年のファンだったらその方がずっと喜ぶに決まっている。それに新規のファンなどほとんど開拓されてないわけだし。
年内最後のライブでなんだか厳しいことを言った気がする。別に内容が悪かったわけではない。ただ神戸公演があまりに良かったため大阪ではアラが見えてしまったというのが正直なところである。また選曲に関する不満というのは常にくすぶっているため、たまたまここで噴出したと理解してもらえればと思う。
今年はこれで終わりだが、来年はもう元日にC.Cレモンホールでライブがある。08年を占う意味でもけっこう重要な意味をもつのではないだろうか。大きな期待は抱かないように注意しながら、彼女の行く末を追いかけていきたい。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)その手をつないで
(2)KISS& CRY
(3)サマータイム ブルース
(4)青い鳥
(5)BELIEVE
(6)私のカルテ
(7)LOVE IS HERE
(8)I wish
(9)熱情
(10)また、明日
(11)Cosmic Girl
(12)パイナップル ロマンス
(13)ムーンライト ダンス
(14)ココロ銀河
(15)10years
〈アンコール〉
(16)Long Night
(17)とびだせ青春
(18)My Revolution
(19)eyes
1月27日、東京・天王洲銀河劇場:詩の朗読会「言の葉コンサート」
3月11日、東京国際フォーラムCホール:谷村新司の「ココロの学校」のゲスト出演
5月19日、奈良・薬師寺:Present Tree Live
7月29日、横浜みなとみらい・新港埠頭特設ステージ横浜ライブ:恒例の野外ライブ
8月18日、熊本城・奉行丸特設ステージ:これも野外ライブ
11月24日、神戸国際会館こくさいホール:「ココロ銀河ツアー」
そして本日のNHK大阪ライブを入れると7本になった。BONNIE PINKでも3本だから数では突出している。1月の詩の朗読会や「ココロの学校」など意味不明な内容もあったものの、7月のライブは奇跡的なほど良かったし、こないだの神戸公演もそれに次ぐ素晴らしいものだった。突出した内容を2度観られたのだから、今年の美里は良かった方だと言いたい。
そして今回のNHK大阪ホールは私にとって今年最後のライブである。果たして有終の美を飾れるかどうか。そんなことを思いながらの開演だ。
内容は基本的にこないだの神戸と変更はない。唯一変わってくる5曲目は“BELIEVE”になった。冬のこの時期だからということだろうが、無難な選曲になってしまった感がある。神戸のみで披露された“Boys Cried ”は貴重であったというしかない。
そして今回のツアー恒例の、カードをお客が引いて曲を選ぶコーナーでは、なんと曲名をあらかじめ見せる方法になった。今日のカードは、
小指
Blue Butterfly
Heart Of Gold
風待草〜かぜまちぐさ〜
truth
I wish
この曲名を見た時にはかなり失望する。他の会場ではあった“Kick Off”のカードが入ってなかったからだ。この曲を聴ける可能性がこの瞬間に断たれてしまう。結局、美里が指名した最前列の女性は“I wish”を選ぶ。この6曲の中でとなれば妥当な選択には違いない。
それにしても、このカードで曲を選ぶコーナーだが、わざわざ客席に選ばせるような類の曲だろうか。見れば、“I wish”以外は全て21世紀に出た曲ばかりである。彼女が本当に歌いたければ、わざわざコーナーなど設けずに通常のセット・リストに組み込めば良いと思うのだが。このあたりに表現者と受け手との超え難い断絶を感じてしまう。
全体の選曲についても疑問がある。今回のライブの曲目を見ると「ココロ銀河」の収録曲ばかりで、「ソレイユ」(01年)、「ORANGE」(03年)、「Blue Butterfly」(04年)、「Sing And Roses」(05年)など最近のアルバムの曲がまったく入っていないのだ。振り返ってみると最近のツアーはいつもこんな感じだ。新作の曲は今回限りで、次のツアーには全く演奏されない。なんだか使い捨ての気がしてあまりに悲しい。
この10年ほどで発表された曲では“サンキュ”くらいしかファンに定着していない気がするが、彼女にしても曲を根付かせようとする意識が高いと思えない。ならば新作など出さず80年代から90年代前半の曲ばかり歌ったらどうだろう。長年のファンだったらその方がずっと喜ぶに決まっている。それに新規のファンなどほとんど開拓されてないわけだし。
年内最後のライブでなんだか厳しいことを言った気がする。別に内容が悪かったわけではない。ただ神戸公演があまりに良かったため大阪ではアラが見えてしまったというのが正直なところである。また選曲に関する不満というのは常にくすぶっているため、たまたまここで噴出したと理解してもらえればと思う。
今年はこれで終わりだが、来年はもう元日にC.Cレモンホールでライブがある。08年を占う意味でもけっこう重要な意味をもつのではないだろうか。大きな期待は抱かないように注意しながら、彼女の行く末を追いかけていきたい。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)その手をつないで
(2)KISS& CRY
(3)サマータイム ブルース
(4)青い鳥
(5)BELIEVE
(6)私のカルテ
(7)LOVE IS HERE
(8)I wish
(9)熱情
(10)また、明日
(11)Cosmic Girl
(12)パイナップル ロマンス
(13)ムーンライト ダンス
(14)ココロ銀河
(15)10years
〈アンコール〉
(16)Long Night
(17)とびだせ青春
(18)My Revolution
(19)eyes
渡辺美里 神戸公演(07年11月24日、神戸国際会館こくさいホール)
2007年11月24日 渡辺美里もうすぐ2007年も終わる。あっという間に過ぎてしまい、何もしていないような気もする一方、思い起こせば6月に初めて海外へ行ってイギリスでヴァン・モリソンを観たりもしたから、自分ではいろいろと象徴的な1年であったのは間違いない(対外的には何のアピールにもならないだろうが)
そういえば8月も「青春18きっぷ」で旅をして九州にも初上陸したのだった。ちなみに熊本城の下で渡辺美里のライブをこの時に観ている。
なぜいま今年を振り返っているのかといえば、ライブについても残り2本しかないからである。そして、それは両方とも渡辺美里だ。彼女のライブはそれこそ熊本以来である。7月の横浜公演は奇跡的なほど良かったけれど、この時の内容は今ひとつだった。この「ココロ銀河ツアー」は果たして07年を締めくくるライブになるかどうか。夏のライブを思えば期待は五分五分というところだろう。
神戸公演の席は前から4列目とかなり良い席である。プログラムくらい買おうかとグッズ売り場に行ったけれど、DVD付きプログラムというものしか無かったのでやめた。そういえば横浜でも同じようなプログラムを買ったが開けてすらいない。別にライブ映像が入っているわけでもないし、こうした商品には積極的な興味が湧かないのが正直な気持ちだ。
席について待っていると、私の携帯ではまだ5時になっていないのに会場が暗くなって開演する。ステージの上にはプラネタリウムのごとく星空のような照明が浮き上がる。「銀河」と付くツアーということでの演出だろう。しかし会場も「おー!」とどよめきが起きるほど美しい光景だった。
“その手をつないで”、“KISS& CRY”とアルバム「ココロ銀河」(07年)の曲を立て続けに歌ったあと、ずっとアンコールの定番だった“サマータイム ブルース”が3曲目にして登場する。この時、これはいつものライブと違うのでは?と直感した。実際、今回のツアーの流れはこれまでとはかなり異色だ。
まず中盤ではキーボードの前に座って“私のカルテ”と“LOVE IS HERE”を歌った。これも個人的には驚きである。美里がキーボードの弾き語りするのを生で観るのはこれが初めてだったからだ(ライブ映像では観ているが)。ただ、バラードでもないこの2曲をどうして弾き語りする必然性があるのか理解できなかったけれど。
会場がこれ以上ないほど盛り上がった(やかましくなった)のはこの弾き語りの後だった。ずっと歌っていない曲があって、とかなんとか前置きをして大きなトランプのようなカードが6枚でてくる。バンドのメンバーがそれぞれ1枚を持ちだす。カードには曲名が入っていて、この中から選ばれた曲を歌うというのである。
誰にカードを引いてもらおう、などと美里が言えば会場が騒ぐわ騒ぐわ。中には、
「お願いします!」
と懇願するように叫ぶ人も出てくる。もちろんそんな輩を相手をする美里ではなく、前の席にいた小学生の男の子を指名して選ばせる。そして、そのカードの曲名が“Heart Of Gold”であった。うーん、“Heart Of Gold”かあ。好きな曲だけど、別にいままで演奏していないとかそういうわけでもないだろう。他の会場の曲目を調べると、札幌ではなんと“Kick Off”が演奏されたらしい。アルバム「Lucky」(91年)に入っているこの曲はおそらく、91年以来ずっと歌っていない。それこそ貴重な話であるし、他のカードの曲も同じレベルにしてほしかった気はする。ただ、私はまだ大阪公演が残っているので、聴ける可能性はまだあるかもしれないが。
今年出たアルバム「ココロ銀河」(07年)の楽曲からは、7月の横浜ライブで披露されなかったものが目立つ。おそらく意識的にそうしているのだろう。おとなしい曲が多いアルバムなので中盤はちょっと静かな気もしたが、“Cosmic Girl”、“パイナップル ロマンス”などで盛り上がる部分もあったし、美里の声もよく出ていた。
アンコールで“Long Night”や“eyes”が聴けたというのも新鮮な体験だった。“Long Night”は西武ライブでしか聴いたことがないし、“eyes”は99年の「うたの木」以来だと思う。さらに“Boys Cried”にいたっては、記憶が間違っていなければ92年の「スタジアム伝説」、つまり私が生まれて初めて観たライブから聴いてないと思う。生きていたら色々なことが経験できるなと感じた瞬間であった。
15年ほど彼女のライブに立ち会った身としては、とにかく今回の選曲は実に新鮮だった。まだ大阪でもう1度ライブが観られるのは嬉しい。会場を出る時にそう感じるくらいに楽しめて満足できた公演であった。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)その手をつないで
(2)KISS& CRY
(3)サマータイム ブルース
(4)Boys Cried (あの時からかもしれない)
(5)青い鳥
(6)私のカルテ
(7)LOVE IS HERE
(8)Heart Of Gold
(9)熱情
(10)また、明日
(11)Cosmic Girl
(12)パイナップル ロマンス
(13)ムーンライト ダンス
(14)ココロ銀河
(15)10years
〈アンコール〉
(16)Long Night
(17)とびだせ青春
(18)My Revolution
(19)eyes
そういえば8月も「青春18きっぷ」で旅をして九州にも初上陸したのだった。ちなみに熊本城の下で渡辺美里のライブをこの時に観ている。
なぜいま今年を振り返っているのかといえば、ライブについても残り2本しかないからである。そして、それは両方とも渡辺美里だ。彼女のライブはそれこそ熊本以来である。7月の横浜公演は奇跡的なほど良かったけれど、この時の内容は今ひとつだった。この「ココロ銀河ツアー」は果たして07年を締めくくるライブになるかどうか。夏のライブを思えば期待は五分五分というところだろう。
神戸公演の席は前から4列目とかなり良い席である。プログラムくらい買おうかとグッズ売り場に行ったけれど、DVD付きプログラムというものしか無かったのでやめた。そういえば横浜でも同じようなプログラムを買ったが開けてすらいない。別にライブ映像が入っているわけでもないし、こうした商品には積極的な興味が湧かないのが正直な気持ちだ。
席について待っていると、私の携帯ではまだ5時になっていないのに会場が暗くなって開演する。ステージの上にはプラネタリウムのごとく星空のような照明が浮き上がる。「銀河」と付くツアーということでの演出だろう。しかし会場も「おー!」とどよめきが起きるほど美しい光景だった。
“その手をつないで”、“KISS& CRY”とアルバム「ココロ銀河」(07年)の曲を立て続けに歌ったあと、ずっとアンコールの定番だった“サマータイム ブルース”が3曲目にして登場する。この時、これはいつものライブと違うのでは?と直感した。実際、今回のツアーの流れはこれまでとはかなり異色だ。
まず中盤ではキーボードの前に座って“私のカルテ”と“LOVE IS HERE”を歌った。これも個人的には驚きである。美里がキーボードの弾き語りするのを生で観るのはこれが初めてだったからだ(ライブ映像では観ているが)。ただ、バラードでもないこの2曲をどうして弾き語りする必然性があるのか理解できなかったけれど。
会場がこれ以上ないほど盛り上がった(やかましくなった)のはこの弾き語りの後だった。ずっと歌っていない曲があって、とかなんとか前置きをして大きなトランプのようなカードが6枚でてくる。バンドのメンバーがそれぞれ1枚を持ちだす。カードには曲名が入っていて、この中から選ばれた曲を歌うというのである。
誰にカードを引いてもらおう、などと美里が言えば会場が騒ぐわ騒ぐわ。中には、
「お願いします!」
と懇願するように叫ぶ人も出てくる。もちろんそんな輩を相手をする美里ではなく、前の席にいた小学生の男の子を指名して選ばせる。そして、そのカードの曲名が“Heart Of Gold”であった。うーん、“Heart Of Gold”かあ。好きな曲だけど、別にいままで演奏していないとかそういうわけでもないだろう。他の会場の曲目を調べると、札幌ではなんと“Kick Off”が演奏されたらしい。アルバム「Lucky」(91年)に入っているこの曲はおそらく、91年以来ずっと歌っていない。それこそ貴重な話であるし、他のカードの曲も同じレベルにしてほしかった気はする。ただ、私はまだ大阪公演が残っているので、聴ける可能性はまだあるかもしれないが。
今年出たアルバム「ココロ銀河」(07年)の楽曲からは、7月の横浜ライブで披露されなかったものが目立つ。おそらく意識的にそうしているのだろう。おとなしい曲が多いアルバムなので中盤はちょっと静かな気もしたが、“Cosmic Girl”、“パイナップル ロマンス”などで盛り上がる部分もあったし、美里の声もよく出ていた。
アンコールで“Long Night”や“eyes”が聴けたというのも新鮮な体験だった。“Long Night”は西武ライブでしか聴いたことがないし、“eyes”は99年の「うたの木」以来だと思う。さらに“Boys Cried”にいたっては、記憶が間違っていなければ92年の「スタジアム伝説」、つまり私が生まれて初めて観たライブから聴いてないと思う。生きていたら色々なことが経験できるなと感じた瞬間であった。
15年ほど彼女のライブに立ち会った身としては、とにかく今回の選曲は実に新鮮だった。まだ大阪でもう1度ライブが観られるのは嬉しい。会場を出る時にそう感じるくらいに楽しめて満足できた公演であった。最後に演奏曲目を記す。
【演奏曲目】
(1)その手をつないで
(2)KISS& CRY
(3)サマータイム ブルース
(4)Boys Cried (あの時からかもしれない)
(5)青い鳥
(6)私のカルテ
(7)LOVE IS HERE
(8)Heart Of Gold
(9)熱情
(10)また、明日
(11)Cosmic Girl
(12)パイナップル ロマンス
(13)ムーンライト ダンス
(14)ココロ銀河
(15)10years
〈アンコール〉
(16)Long Night
(17)とびだせ青春
(18)My Revolution
(19)eyes
不運が続く中の幸運か
2007年11月3日 渡辺美里昨日までずっとバタバタしていた感があるが、今日はほとんど部屋で寝て過ごす。おかげで体も少し楽になったような気がする。昨日までひどかった鼻水もかなり治まった。
そんな折、渡辺美里のファンクラブ「DO!」より11月24日の神戸公演のチケットが届く。開けてみたら、
「1階4列22番」
と、久しぶりに良い席である。前の方が観られるのはやっぱり嬉しい。ファンクラブもようやく会員にメリットを与えてくれるよう頑張りだした証拠だろうか。
これで神戸公演のチケットが完売すればもっと良いのだが、「ぴあ」のサイトでは「△」(お早めに)である。
ちなみに大阪公演は完売だ。このチケットも間もなく届くだろう。これの席も多少は期待しても良いかな?
そんな折、渡辺美里のファンクラブ「DO!」より11月24日の神戸公演のチケットが届く。開けてみたら、
「1階4列22番」
と、久しぶりに良い席である。前の方が観られるのはやっぱり嬉しい。ファンクラブもようやく会員にメリットを与えてくれるよう頑張りだした証拠だろうか。
これで神戸公演のチケットが完売すればもっと良いのだが、「ぴあ」のサイトでは「△」(お早めに)である。
ちなみに大阪公演は完売だ。このチケットも間もなく届くだろう。これの席も多少は期待しても良いかな?