いちおうベスト・アルバムを買ってはみたものの、ほとんど聴くこともなくライブ当日を迎えてしまった。レオン・ラッセルの曲で覚えたのはかの”A song for you”のみである。アルバムを流してみても、どうも彼の歌声が好きになれないのだ。ただ、シンガー・ソングライターと呼ばれる人はとりあえず興味があるのでチケットを取ってしまった。

会場に入ると、これは今日の客は少ないと感じた。椅子とテーブルが並べているからである。クアトロでお客が多い時は椅子などいれない。整理番号が9番だったので最前列も確保できたけれど、そこまで熱心に観るつもりもないので中央後方の椅子のある場所に座った。

客層はやはり年配が多い。あとは自分くらいの年齢の人間もちらほらいる。自分の隣は右も左も40代くらいの男性である。開演が近くなるにつれてそれなりに人も入ってくる。ざっと200人くらいだろうか。

午後7時、ほぼ時間通りに照明が落ちる。クアトロで定時にライブが始まるという経験はこれが最初な気がする。編成はギター、ベース、ドラムスに黒人の女性コーラスである。そしてレオン・ラッセルが目の前に現れた。写真で観たことはあるけれど、髪もヒゲもものすごく伸びているうえにサングラスまでかけているのでほとんど顔が見えない。何かに似ているなと考えていると、ペルシャ猫が思い浮かんだ。

ゆっくりとキーボードの前に座ったと思ったら、すぐに演奏が始まった。その瞬間に会場の空気は一変する。とんでもなくファンキーな演奏である。淡々としたステージだと勝手に予測したので驚いた。さらにそのまま一言もしゃべらずに、ほとんど休むこともなく1時間ほど演奏を続けてしまう。こんな真似をするからこの時代のミュージシャンは恐ろしい。ベースやドラムスは演奏の合間をぬって水を飲んでいて大変そうだ。この時点で知っていた曲は、レイ・チャールズの「わが心のジョージア」のみだった。

レオンがバンドのメンバーを紹介してから、コーラスの女性がアカペラで歌って。レオンが一人で弾き語りをする。ここで”A song for you”が飛び出した。しかし、キーボードの音が少し派手なのが気になった。なんだか80年代を連想させるような、とでも表現すればわかりやすいだろうか。この辺はできればピアノで聴きたかった。

そして再びバンドが現れて数曲演奏して、ライブが終わる。出てくる時と同じようにゆっくりとレオンはステージから消えていった。見れば、杖をついて歩いているではないか。そんな状態であの演奏をするとは、改めてミュージシャンとしての底力を感じた瞬間である。

会場が明るくなって片付けが始まっても、お客は拍手をやめない。観た人はみなライブに満足した証拠であるが、しかし残念ながらレオンは出てこなかった。杖をついて再び出てくるのはやはり大変なのだろう。

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