ヴァン・モリソン CD ユニバーサルインターナショナル 2006/06/07 ¥2,548
ゼア・スタンズ・ザ・グラス
ハーフ・アズ・マッチ
シングス・ハヴ・ゴーン・トゥ・ピーセズ
ビッグ・ブルー・ダイヤモンズ
プレイハウス
ユア・チーティン・ハート
ドント・ユー・メイク・ミー・ハイ
マイ・バケッツ・ゴット・ア・ホール・イン・イット
バック・ストリート・アフェア
ペイ・ザ・デヴィル
ホワット・アム・アイ・リヴィング・フォー?
ディス・ハズ・ゴット・トゥ・ストップ
ワンス・ア・デイ
モア・アンド・モア
ティル・アイ・ゲイン・コントロール・アゲイン

昨年「マジック・タイム」という新作を発表したばかりのヴァン・モリソンが早くも次のアルバムを出すという情報を得たのは今年の初めのことである。ただ、カバー・アルバムということなのであまり期待していなかった。

ヴァン・モリソンはもう40年ほどキャリアがあるのでカバー・アルバムもけっこう出している。同郷のチーフタンズとともにアイルランド民謡に挑戦した「アイリッシュ・ハートビート」(88年)、ジョージィ・フェイムらとのジャズ・アルバム「ハウ・ロング・ハズ・ジス・ビーン・ゴーイング・オン」(96年)、同じくジャズのモーズ・アリソンのカバー集「テル・ミー・サムシング」(97年)、ロニー・ドネガンとスキッフルを共演した「The Skiffle Sessions Live in Belfast」(00年、輸入盤のみ)、そしてリンダ・ゲイル・ルイス(ジェリー・リー・ルイスの娘)とハンク・ウィリアムスの曲などをデュエットした「ユー・ウィン・アゲイン」(00年)と、この辺りがカバー・アルバムの範疇といって良いだろう。

こうした作品を列挙しているうちに、ヴァン・モリソンはやっぱり偏屈なミュージシャンなのかなあと思ってしまった。アイルランド民謡にジャズにスキッフルにカントリーと、いわゆるロックという音楽とは離れた内容ばかりである。しかし、そもそもロックから離れたものを作りたいという思いが「アストラル・ウイークス」(69年)に結実したのである。むしろボブ・ディランやニール・ヤングなどと並んで「ロックの巨人」のように言われるのは彼の本意ではないかもしれない。

しかし本人のそうした思いはともかく、オリジナル・アルバムと同じくらいに彼のカバー・アルバムを好んで聴いた人は、熱心なファンでも少ないのではないだろうか。「アイリッシュ・ハートビート」を除いて、上に挙げた作品群の中で傑作と思える作品は個人的にはない。絶賛する意見も見たことがない。ひとことで言えば、可もなく不可もなく、である。

そういうわけでこの「ペイ・ザ・デヴィル」も期待せずに買った。ファンだから買ってあげようという感じである。しかし自分の思いは良い意味で裏切られた。いきなりスライド・ギターの音色が出てきて面食らい、さらに驚くことに、そんなバックの音とヴァンの歌声が意外なほど合っているのだった。

試しに同じカントリーの曲を集めた「ユー・ウィン・アゲイン」を引っぱり出して聴き比べてみた。しかし「ユー・ウィン・アゲイン」はただ大昔の曲を再演したという感じの音だし、デュエットという特殊な形式のためにヴァンの魅力が全面に出ているとは言い難い作品である。

これに対して「ペイ・ザ・デヴィル」は、ヴァンの歌声にこんな魅力が隠されていたのかという新鮮な感動を自分に起こさせた。彼の音楽を聴いたことのない方々に薦められるかはわからないけれど、長年のファンには是非とも聴いてほしい作品である。あえて雰囲気が似ているアルバムといえば79年の「イントゥ・ザ・ミュージック」あたりだろうか。軽やかな雰囲気だが味わい深いアルバム、という点でである。

ただ悔やまれるのが、すでに輸入盤が出て3ヶ月も経ってから国内盤が発売されたことである。カバー・アルバムという性質からして国内盤は出ないと踏んで私は輸入盤を買ってしまった。国内盤を優先して買う人間としては無念である。アルバム解説にはどんなことが書いてあるのだろうか。買った方がいたら教えてほしいと願う。

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