こんなボケたことを言うのもどうかと思うが、どうしてフィオナ・アップルのチケットを取ったのだろう。私は別に彼女のファンでも何でもない。確か、知り合いの音楽ファンが来日を騒いでいたのに触発されたのがきっかけだったと思う。

ところで、BONNIE PINKファンの間でも今回のフィオナ来日はちょっとした話題になっていて「行く」「行きたい」という声をネットで見かけた。かつてBONNIEがフィオナを絶賛していて、それがきっかけで聴いたBONNIEファンも多いようである。

心斎橋クラブクアトロに集まった人たちは、別に派手な格好をしているわけでもなく、きわめて平凡な音楽ファンが集まったという印象だ。年配の人や外国人も目についたけれど、おおむね20代後半から30代前半くらいが圧倒的な客層だった。
チケットは完売せず当日券がでていたものの、8割方は埋まっていただろう。私はカウンターのある中央の位置を確保した。

7時10分近くになって照明が落ち開演である。まずバンドが現れ、続いてフィオナは真ん中のマイクに立つ、のかと思ったらステージ左側にあるピアノの前に座って歌い出した。バンドの編成はやや変わっている。ベース、キーボード、ドラムス、そしてフィオナがピアノと歌というもので、ギターがいない。さらに、ステージ右側後方に1人、何もしていない人がいる。演奏中もグラスでワインを飲んでいいるではないか。この人は何だろうと思っていたら、フィオナが3曲歌い終わって中央のマイクに移動した時に入れ替わりでピアノの前に座った。フィオナが弾き語りをしない時にはこの人がピアノを担当するわけだ。

バンドの演奏をパッと聴いた時は、少しドラムスの音が小さすぎる印象を受けた。だが、歌が入ると非常にバランスの良い音響であることに気づく。フィオナの声がクッキリと前面に出るような配慮がなされているのだ。こういう場面に出会うと英米と日本との落差を感じてしまう。

肝心のフィオナについてであるが、歌っている時の眉間にシワを寄せて歌う表情やステージをフラフラと動く姿など、おおよそ健康的ではなくて個人的にはちっとも可愛いと思えない。しかし、体の中から振りしぼるようにして歌う姿には圧倒される。ほとんどMCらしいMCもなく歌い続け、お客が手拍子を入れるような余地もなく非常に張りつめた空気を出していた。そんな状態では盛り上がらなかったと思う人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。1曲が終わるたびに会場からは力のこもった拍手が送られる。

1時間40分ほどのステージはほとんど知っている曲もなかったし、今日の彼女を観てファンになったわけでもないけれど、貴重な体験ができた一夜だった。最後に曲目を記す。ちなみ名古屋、大阪、そして東京2公演とも同じ内容である。

(演奏曲目)
(1)Get Him Back
(2)To Your Love
(3)Shadowboxer
(4)The Way Things Are
(5)I Know
(6)Sleep to Dream
(7)Limp
(8)Paper Bag
(9)Tymps
(10)Oh Well
(11)On the Bound
(12)Slow Like Honey
(13)Not About Love
(14)Better Version of Me
(15)Get Gone
(16)Fast As You Can

<アンコール>
(17)Extraordinary Machine
(18)Criminal

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