(1)Bright Side Of The Road ブライト・サイド・オブ・ザ・ロード
(2)Full Force Gale 疾風
(3)Steppin’ Out Queen ステッピン・アウト・クイーン
(4)Troubadours トルバドール
(5)Rolling Hills ローリング・ヒルズ
(6)You Make Me Feel So Free フィ−ル・ソー・フリー
(7)Angelou 愛しのエンジェル
(8)And The Healing Has Begun 癒える心
(9)It’s All In The Game オール・イン・ザ・ゲーム
(10)You Know What They’re Writing About ホワット・ゼイアー・ライティング・アバウト
〔ボーナストラック〕
(11)Steppin’ Out Queen (Alternative Take) ステッピン・アウト・クイーン(別バージョン)
(12)Troubadours (Alternative Take) トルバドール(別バージョン)
ヴァン・モリソンの音楽は古くならない、と言われることがある。まったくその通り。というよりも、彼の音楽と時代とは関連がない、と言うのが適切ではないだろうか。そうしたヴァンの音楽性はあの「アストラル・ウイークス」(68年)から現在までずっと続いている。
そんな彼の作品の中にあって、
「このアルバムはいつ聴いても新鮮だなあ!」
と毎回のように感心してしまうものが私にある。それが79年に発表されたこの「イントゥ・ザ・ミュージック」(Into the Music)だ。別に数えたわけではないけれど、オリジナル・アルバムで最も私が多く聴いた作品だと思う。
これを最初に買ったのはおそらく98年か99年のことである。どうして覚えているかといえば、アルバムを初めて聴いた時の印象が実に鮮烈だったからだ。
「発売(79年)から20年ちかく経っているのに全然古びてない!」
そう感激したのを、このアルバムをかけるたびに思い出す。
もちろん、世に出てから30年目を迎えようとしている今もその思いは全く変わらない。つくづく希有な作品と感じる。
繰り返すが、別に「ムーンダンス」(70年)でも「エンライトメント」(90年)でも、彼の他の作品も時代とは無縁の魅力を放ってはいる。それでもなお、私はこの「イントゥ・ザ・ミュージック」に強い思い入れを持ってしまうのだろうか。それはやはり、このアルバムにしかない魅力があるからとしかいいようがない。
この作品の特徴を一言で表現すれば「軽やかさ」である。ヴァン・モリソンは頑固とか、偏屈とか、求道者とか、孤高とか、どちらかといえば重たい印象のつきまとう人である。確かに頑固や偏屈といった人間性は間違っていないだろう。しかし、ファンにはあえて強調するまでもないが、こと音楽については全く違う。聴き手を拒絶するような要素はおおよそ無いといえる。いやそれどころか、これほど洗練された音楽を作る人はいないのではないだろうかと思うほどだ。そして「イントゥ・ザ・ミュージック」はこうしたヴァンの音楽性を証明する好例の一つといえる。
音作りでいえばフィドル(バイオリン)とホーン・セクションが効果的に働いているように思う。「アヴァロン・サンセット」(89年)のような壮大なオーケストレーションと違って、トラッドを連想させる雰囲気をフィドルが出している。そこにホーン・セクションが絡んで軽快な印象はさらに強くなる。
こうした「軽やかさ」のある空気がアルバム全体を包んでいるけれど、その中でも3曲目の“ステッピン・アウト・クイーン”が特に素晴らしい。今回追加された別バージョンと比較すればそれはさらに顕著である。別バージョンは未完成なもののすでに魅力的で個性的な曲だ。しかしそこをさらにアレンジを洗練させ、ホーンセクションとコーラスまで加えてあのオリジナル作品へと完成する。その流れを辿っていくと、いまさらながら彼の才能の凄さを感じてしまう。
ただ正直に感想をいえば、最後の3曲の流れは個人的に冗長で印象に残らない。7曲目まではスーッと気持ちよく聴いて8曲目の途中くらいから寝てしまう、というのが自分のパターンな気する。しかし、8曲目の“And The Healing Has Begun”はヴァンが長年ずっと歌のテーマにしている「癒し」を扱った重要な曲であり、ファンとしてはそれなりにしっかりと受け止めなければならないと思ってもいる。
好き嫌いはともかくとして特筆する部分の多い作品であることは異論ないだろう。私の中でも、最高傑作とは断言しにくいものの、5指に入る大事なアルバムである。数あるヴァンの作品の中でも最も推薦したくなる作品の一つだ。
いや、本音をいえば最高傑作とか他人の評価などはどうでもいい。ただ、このアルバムをかけるたび、草原を駆け抜ける風のような音が心地よい。それだけで私は満足している。こうした作品を手元におけるのは幸福というしかない。
(2)Full Force Gale 疾風
(3)Steppin’ Out Queen ステッピン・アウト・クイーン
(4)Troubadours トルバドール
(5)Rolling Hills ローリング・ヒルズ
(6)You Make Me Feel So Free フィ−ル・ソー・フリー
(7)Angelou 愛しのエンジェル
(8)And The Healing Has Begun 癒える心
(9)It’s All In The Game オール・イン・ザ・ゲーム
(10)You Know What They’re Writing About ホワット・ゼイアー・ライティング・アバウト
〔ボーナストラック〕
(11)Steppin’ Out Queen (Alternative Take) ステッピン・アウト・クイーン(別バージョン)
(12)Troubadours (Alternative Take) トルバドール(別バージョン)
ヴァン・モリソンの音楽は古くならない、と言われることがある。まったくその通り。というよりも、彼の音楽と時代とは関連がない、と言うのが適切ではないだろうか。そうしたヴァンの音楽性はあの「アストラル・ウイークス」(68年)から現在までずっと続いている。
そんな彼の作品の中にあって、
「このアルバムはいつ聴いても新鮮だなあ!」
と毎回のように感心してしまうものが私にある。それが79年に発表されたこの「イントゥ・ザ・ミュージック」(Into the Music)だ。別に数えたわけではないけれど、オリジナル・アルバムで最も私が多く聴いた作品だと思う。
これを最初に買ったのはおそらく98年か99年のことである。どうして覚えているかといえば、アルバムを初めて聴いた時の印象が実に鮮烈だったからだ。
「発売(79年)から20年ちかく経っているのに全然古びてない!」
そう感激したのを、このアルバムをかけるたびに思い出す。
もちろん、世に出てから30年目を迎えようとしている今もその思いは全く変わらない。つくづく希有な作品と感じる。
繰り返すが、別に「ムーンダンス」(70年)でも「エンライトメント」(90年)でも、彼の他の作品も時代とは無縁の魅力を放ってはいる。それでもなお、私はこの「イントゥ・ザ・ミュージック」に強い思い入れを持ってしまうのだろうか。それはやはり、このアルバムにしかない魅力があるからとしかいいようがない。
この作品の特徴を一言で表現すれば「軽やかさ」である。ヴァン・モリソンは頑固とか、偏屈とか、求道者とか、孤高とか、どちらかといえば重たい印象のつきまとう人である。確かに頑固や偏屈といった人間性は間違っていないだろう。しかし、ファンにはあえて強調するまでもないが、こと音楽については全く違う。聴き手を拒絶するような要素はおおよそ無いといえる。いやそれどころか、これほど洗練された音楽を作る人はいないのではないだろうかと思うほどだ。そして「イントゥ・ザ・ミュージック」はこうしたヴァンの音楽性を証明する好例の一つといえる。
音作りでいえばフィドル(バイオリン)とホーン・セクションが効果的に働いているように思う。「アヴァロン・サンセット」(89年)のような壮大なオーケストレーションと違って、トラッドを連想させる雰囲気をフィドルが出している。そこにホーン・セクションが絡んで軽快な印象はさらに強くなる。
こうした「軽やかさ」のある空気がアルバム全体を包んでいるけれど、その中でも3曲目の“ステッピン・アウト・クイーン”が特に素晴らしい。今回追加された別バージョンと比較すればそれはさらに顕著である。別バージョンは未完成なもののすでに魅力的で個性的な曲だ。しかしそこをさらにアレンジを洗練させ、ホーンセクションとコーラスまで加えてあのオリジナル作品へと完成する。その流れを辿っていくと、いまさらながら彼の才能の凄さを感じてしまう。
ただ正直に感想をいえば、最後の3曲の流れは個人的に冗長で印象に残らない。7曲目まではスーッと気持ちよく聴いて8曲目の途中くらいから寝てしまう、というのが自分のパターンな気する。しかし、8曲目の“And The Healing Has Begun”はヴァンが長年ずっと歌のテーマにしている「癒し」を扱った重要な曲であり、ファンとしてはそれなりにしっかりと受け止めなければならないと思ってもいる。
好き嫌いはともかくとして特筆する部分の多い作品であることは異論ないだろう。私の中でも、最高傑作とは断言しにくいものの、5指に入る大事なアルバムである。数あるヴァンの作品の中でも最も推薦したくなる作品の一つだ。
いや、本音をいえば最高傑作とか他人の評価などはどうでもいい。ただ、このアルバムをかけるたび、草原を駆け抜ける風のような音が心地よい。それだけで私は満足している。こうした作品を手元におけるのは幸福というしかない。
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