ヴァン・モリソン「魂の道のり」(74年。08年に再発。SHM-CD仕様)
2008年8月24日 CD評など
【ディスク1】
(1)Ain’t Nothin’ You Can Do エイント・ナッシン・ユー・キャン・ドゥ
(2)Warm Love ウォーム・ラヴ
(3)Into the Mystic イントゥ・ザ・ミスティック
(4)These Dreams of You ジーズ・ドリームス・オブ・ユー
(5)I Believe to My Soul アイ・ビリーヴ・トゥ・マイ・ソウル
(6)I’ve Been Working アイヴ・ビーン・ワーキング
(7)Help Me ヘルプ・ミー
(8)Wild Children ワイルド・チルドレン
(9)Domino ドミノ
(10)I Just Want to Make Love to You 君を愛したい
【ディスク2】
(1)Bring It on Home to Me 悲しき叫び
(2)Saint Dominic’s Preview セント・ドミニクの予言
(3)Take Your Hands out of My Pocket テイク・ユア・ハンド・アウト・オブ・マイ・ポケット
(4)Listen to the Lion リッスン・トゥ・ザ・ライオン
(5)Here Comes the Night ヒア・カムズ・ザ・ナイト
(6)Gloria グローリア
(7)Caravan キャラヴァン
(8)Cyprus Avenue サイプリス・アヴェニュー
〈ボーナストラック〉
(9)Brown Eyed Girl ブラウン・アイド・ガール
11人編成という大所帯バンド「カレドニア・ソウル・オーケストラ」を従えて73年の夏にアメリカとヨーロッパのツアーの模様を収めたライブ・アルバムである。「魂の道のり」(It’s Too Late to Stop Now... )と名付けられたこの作品は、トルバドール(ロサンゼルス)、サンタ・モニカ・シビック(サンタ・モニカ)、レインボー・シアター(ロンドン)の3か所からの音源が収録された。
収録曲はゼム時代の2曲、そして直前に出た「苦闘のハイウェイ」(73年)までの楽曲が入っている。そしてオリジナル以外に6曲のカバーが取り上げられた構成だ。
通して聴くと、ヴァン・モリソンという人の姿勢は変わっていないのを実感する。ステージで彼の好きな「ロック以前」の曲を配置しているというのは、21世紀に入った現在でも彼のライブの一貫した流れである。
このアルバムで取り上げている人は、
ボビー・ブランド(“Ain’t Nothin’ You Can Do”)
レイ・チャールズ(“I Believe to My Soul”)
サム・クック(“Bring It on Home to Me”)
ウィリー・ディクソン(“I Just Want to Make Love to You ”)
ソニー・ボーイ・ウィリアムス(“Help Me”、“Take Your Hands out of My Pocket”)
とソウルの巨人がズラリと並ぶ。特に“Help Me”に至っては、94年の「ア・ナイト・イン・サンフランシスコ」、06年のLive at Austin City Limits Festival」といったライブ盤でも演奏されているので、彼にとってかなり愛着のある曲と想像できる。
ただ、ヴァンはソウル以外にカントリーやロックンロール、スキッフルなどといった音楽もカバーしているのを考えると、ここでの選曲はかなり黒っぽさが強いものとなっている。この時期の彼は白人としてのソウル・シンガーを目指していたのだろうか。
このアルバムだけの魅力といえば、若き日のヴァンの歌声が聴けることではないだろうか。まだ20代後半だった彼の、いまでは到底みられない勢いや熱気が記録されているのは貴重というしかない。いまだにライブの観られない国の人間にとっては、余計にそう感じるだろう(私はライブを観てますけど)。
ライブの曲順も、現在のようには“Gloria”が最後ではなく、アンコールは“Cyprus Avenue”で締めるというのが当時の流れだった。さらにアンコールがあった時は“Brown Eyed Girl”が歌われた。それが今回ボーナストラックとして追加されたわけだ。
ジョニー・ローガンも伝記「魂の道のり」において、
〈《魂の道のり》は70年代初期のロックが誇る貴重な遺産であり、80年代にまでその価値が継承された、数少ない2枚組ライブ盤の一つだ。無論、その内容は完璧とはいえないまでも、一般的なロックのライブ・アルバムの低水準を考えれば、その占める地位の高さたるや相当のものである。〉(p.233)
と珍しく高い評価をしている。確かに「これがライブ・アルバムの音?」と思ってしまうほど完成度の高い演奏が続く。このアルバムはヴァン・モリソンの頂点を捉えたた記録と同時に、ライブ・アルバムの傑作としても列挙したくなる名盤である。さらにリマスタリングを施され、その内容はより強固なものになった。
このバンドでやり遂げたという意識が本人にもあったのだろう。この作品を出す直前にカレドニア・ソウル・オーケストラを解散してしまった。孤高のシンガーはまた新しい出発を踏み出すことになる。
(1)Ain’t Nothin’ You Can Do エイント・ナッシン・ユー・キャン・ドゥ
(2)Warm Love ウォーム・ラヴ
(3)Into the Mystic イントゥ・ザ・ミスティック
(4)These Dreams of You ジーズ・ドリームス・オブ・ユー
(5)I Believe to My Soul アイ・ビリーヴ・トゥ・マイ・ソウル
(6)I’ve Been Working アイヴ・ビーン・ワーキング
(7)Help Me ヘルプ・ミー
(8)Wild Children ワイルド・チルドレン
(9)Domino ドミノ
(10)I Just Want to Make Love to You 君を愛したい
【ディスク2】
(1)Bring It on Home to Me 悲しき叫び
(2)Saint Dominic’s Preview セント・ドミニクの予言
(3)Take Your Hands out of My Pocket テイク・ユア・ハンド・アウト・オブ・マイ・ポケット
(4)Listen to the Lion リッスン・トゥ・ザ・ライオン
(5)Here Comes the Night ヒア・カムズ・ザ・ナイト
(6)Gloria グローリア
(7)Caravan キャラヴァン
(8)Cyprus Avenue サイプリス・アヴェニュー
〈ボーナストラック〉
(9)Brown Eyed Girl ブラウン・アイド・ガール
11人編成という大所帯バンド「カレドニア・ソウル・オーケストラ」を従えて73年の夏にアメリカとヨーロッパのツアーの模様を収めたライブ・アルバムである。「魂の道のり」(It’s Too Late to Stop Now... )と名付けられたこの作品は、トルバドール(ロサンゼルス)、サンタ・モニカ・シビック(サンタ・モニカ)、レインボー・シアター(ロンドン)の3か所からの音源が収録された。
収録曲はゼム時代の2曲、そして直前に出た「苦闘のハイウェイ」(73年)までの楽曲が入っている。そしてオリジナル以外に6曲のカバーが取り上げられた構成だ。
通して聴くと、ヴァン・モリソンという人の姿勢は変わっていないのを実感する。ステージで彼の好きな「ロック以前」の曲を配置しているというのは、21世紀に入った現在でも彼のライブの一貫した流れである。
このアルバムで取り上げている人は、
ボビー・ブランド(“Ain’t Nothin’ You Can Do”)
レイ・チャールズ(“I Believe to My Soul”)
サム・クック(“Bring It on Home to Me”)
ウィリー・ディクソン(“I Just Want to Make Love to You ”)
ソニー・ボーイ・ウィリアムス(“Help Me”、“Take Your Hands out of My Pocket”)
とソウルの巨人がズラリと並ぶ。特に“Help Me”に至っては、94年の「ア・ナイト・イン・サンフランシスコ」、06年のLive at Austin City Limits Festival」といったライブ盤でも演奏されているので、彼にとってかなり愛着のある曲と想像できる。
ただ、ヴァンはソウル以外にカントリーやロックンロール、スキッフルなどといった音楽もカバーしているのを考えると、ここでの選曲はかなり黒っぽさが強いものとなっている。この時期の彼は白人としてのソウル・シンガーを目指していたのだろうか。
このアルバムだけの魅力といえば、若き日のヴァンの歌声が聴けることではないだろうか。まだ20代後半だった彼の、いまでは到底みられない勢いや熱気が記録されているのは貴重というしかない。いまだにライブの観られない国の人間にとっては、余計にそう感じるだろう(私はライブを観てますけど)。
ライブの曲順も、現在のようには“Gloria”が最後ではなく、アンコールは“Cyprus Avenue”で締めるというのが当時の流れだった。さらにアンコールがあった時は“Brown Eyed Girl”が歌われた。それが今回ボーナストラックとして追加されたわけだ。
ジョニー・ローガンも伝記「魂の道のり」において、
〈《魂の道のり》は70年代初期のロックが誇る貴重な遺産であり、80年代にまでその価値が継承された、数少ない2枚組ライブ盤の一つだ。無論、その内容は完璧とはいえないまでも、一般的なロックのライブ・アルバムの低水準を考えれば、その占める地位の高さたるや相当のものである。〉(p.233)
と珍しく高い評価をしている。確かに「これがライブ・アルバムの音?」と思ってしまうほど完成度の高い演奏が続く。このアルバムはヴァン・モリソンの頂点を捉えたた記録と同時に、ライブ・アルバムの傑作としても列挙したくなる名盤である。さらにリマスタリングを施され、その内容はより強固なものになった。
このバンドでやり遂げたという意識が本人にもあったのだろう。この作品を出す直前にカレドニア・ソウル・オーケストラを解散してしまった。孤高のシンガーはまた新しい出発を踏み出すことになる。
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