1月22日、ソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEOは都内で会見し、09年度にグループ全体で計2500億円のコスト削減をはかると発表した。

2500億円という金額は途方もないと思う一方、「構造改革」などと称した具体的な中身は何も目新しいものではない。骨子となるのは事業所の統廃合などによる生産規模の縮小、そして人員削減だ。これで14年ぶりという営業赤字をなんとか耐え抜いていこう、という極めて「わかりやすい」方針である。

しかし、ソニーは2005年にも今のハワード氏が会長兼CEOに就任し、1万人を削減している。その甲斐もあってか2008年には過去最高の連結最終利益をあげたものの、またもやのリストラである。確かに現在の不況は急激で深刻とはいえ、ソニーなどの大企業はいつまでこんな経営方針を続けるのだろう。

大きな会社では参考にならないかもしれないけれど、「痛くない注射針」などを開発した岡野工業は代表社員の岡野雅行さんを含めて6人だ。しかも、岡野さんは社員数を増やさないし会社の規模も大きくしないと決めている。それはなぜか。岡野さんは著書「学校の勉強だけではメシは食えない!」(こう書房。07年)でこう言っている。

<うちの会社はたった6人の従業員でまわしている。俺がちょっとした山師で、100人や200人体制で運営しようと思ったら、明日からだってできるだろう。だけど俺はそうはしない。6人の体制を守っていくことに決めている。
 どうしてか?そりゃ世間では会社を大きくすることイコール成功だと思われているだろう。常識で考えると、上場企業や最大手の企業と取引を行うようになれば、会社を大きくしようと考えるよな。
 だけど腹に脂肪を蓄えて、メタボリック症候群になりそうなオヤジがスリムになるのが難しいように、会社だって一度大きくしてしまうと昔の体型に戻るのは大変なんだよ。>(P.107-108)

最後の「会社だって一度大きくしてしまうと昔の体型に戻るのは大変なんだよ。」という部分が特に強い印象を私に与える。こうした問題は多くの大企業がいま抱えている問題ではないだろうか。勢いのままに企業を大きくするのは自然な流れかもしれない。だが現在のような経済状況に陥った場合、フットワーク軽く経営方針を転換するのは難しい。

また岡野さんは、バブル時代に町工場の社長たちが技術を磨くことを二の次に簡単で儲かる仕事に飛びついていたことを触れて、こう語っている。

<そんななか、岡野工業の業績はどうだったか想像つくか?日本中が沸きあがっているときに、俺の会社の業績はずっと変わらなかった。同業者も他の業者も、どんどん脚光を浴びている場所に集まっていったけど、俺のところは今までやってきたことを続けていただけだ。増えもしないし減りもしない。だって流行を追っていないんだから、そりゃ平行線を描くだろう。>(P.198)

6人体制を維持するのは大変だという岡野さんだが、バブル期にも自身のスタンスを変えなかったのも凄い。当時の日本は猫も杓子も、土地や株の財テクにあけくれていたのだから。

岡野工業の例は特筆ものとはいえ、景気の時は無思慮に業務を拡大し不景気になったら人員削減、というやり方を繰り返す企業のやり方には辟易する。

もしまた景気が上向くとしたら、ソニーも人員を再び増やすのだろうか。しかしまた、ソニーだったら入りたいという人もたくさん出てくるんだろうな。

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