(1)Tell Me Why テル・ミー・ホワイ
(2)After the Gold Rush アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ
(3)Only Love Can Break Your Heart オンリー・ラヴ
(4)Southern Man サザン・マン
(5)Till the Morning Comes やがて朝が・・・・
(6)Oh, Lonesome Me オー・ロンサム・ミー
(7)Don’t Let It Bring You Down ブリング・ユー・ダウン
(8)Birds バーズ
(9)When You Dance You Can Really Love アイ・キャン・リアリー・ラヴ
(10)I Believe in You アイ・ビリーヴ・イン・ユー
(11)Cripple Creek Ferry 壊れた渡し船

SHM-CDを普及させたいのか、ワーナーが「名盤50選」と題してレッド・ツェッペリンやザ・ドアーズなどのアルバムをSHM-CDで再発させている。その中にニール・ヤングの「ハーヴェスト」とこの「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」(After the Gold Rush)が含まれていた。

バッファロー・スプリングフィールドを解散してソロになったニールが3枚目に出したアルバムがこれだ。この時期にクロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤングの「デジャ・ヴ」も発表している。「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」は初めてのプラチナ・アルバムとなり、彼がスーパースターになる足がかりを作った。また、これを彼の最高傑作に挙げる方も多いだろう。私もけっこうニールの作品は接しているけれど、どれか1枚を挙げろと言われればこれを選ぶだろう。

といっても、どこの馬の骨かわからぬ人間が騒いでも説得力がない、そこで佐野元春の著書「ハートランドからの手紙」(角川文庫。94年)でニールについて書いた文章を引用させてもらう。「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」の魅力を彼は短い文章の中で見事にまとめている。

<これまでリリースされた数多くのアルバムの中で、最も僕の心を捉えたのは「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」だった。なぜならあのアルバムは裸の彼と仲間との交流をとてもよく伝えているからだ。しかも率直な詞の表現と荒削りな曲構成、それらがアレンジらしいアレンジもないままほとんど手を加えられることなく演奏されていた。>(P.214)

さすがミュージシャンというべきか。このアルバムの音楽的な特徴を的確に表現している。余計なアレンジなど施していない簡素な音作りのため、逆にニールの核となるソングライターとしての魅力が浮き上がっているのが本作の大きな特徴だ。ニールのアルバムは数多いけれど質はけっこうムラが多い。それは彼の才能うんぬんの問題ではなく、冒険や挑戦に対して積極的なためだと私は好意的に解釈している。しかしそれゆえ、彼のソングライターの資質がうまい具合にスタジオ・アルバムに反映されたものは少ない。「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」はその貴重な成功例の一つといえよう。

ただ、そんな名盤ではあるけれど、個人的にこのアルバムには不満めいたものを感じていた。私の持っているアルバムは昔のCDのため、音は今ひとつ良くないのだ。ただでさえ粗い作りのため、ちょっと味気ないなと感じる時もある。しかし、ここにきてのSHM-CDによる音質の向上だ。

例えばヴァン・モリソンのSHM-CDによる再発が最新のデジタル・リマスタリングも施している。しかしニールの再発は特にそんな配慮はされていない(CDの帯にもそんなことは触れていない)。だが、1曲目の”テル・ミー・ホワイ”のアコースティック・ギターの音を聴いた瞬間、

「買い直した価値あり!」

と確信する。いままでは聴こえてこなかった細かな音のニュアンスが伝わってくるのだ。音が少ないため味気ないと思っていた“サザン・マン”のあの長いギター・ソロも、以前にも増して力強い演奏で自分に迫ってくる。素晴らしいアルバムと思っていたけれどこれほどのものだったのか、と改めて感動してしまった。まさに畢生(ひっせい)の名盤といえる。

そういうこともあり、最近はこのCDばかり聴いている。たぶん近いうちに「ハーヴェスト」のSHM-CDも買ってしまうだろう。私のように既にこのアルバムを持っている方も、もし余裕があればぜひ買い直していただきたい。いまなら2300円(税込)だ。

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