「ゴールデンスランバー」を観た・読んだ・聴いた
1月30日(土)の初日にTOHOシネマズ二条で映画「ゴールデンスランバー」を観に行った。お客の入りは7割くらいだろうか。悪いスタートでは無いと感じたが、ネットを観る限りはけっこうヒットしているようだ。

内容も非常に面白かった。2月1日(月)には原作の小説も買ってみる。500ページほどある中編だが半日ほどで読み通してしまった。自分がいつも本を読むペースを考えると異様なスピードだが、これは私が早く本が読めるようになったとかではなく、映画を観ていたため小説の筋がある程度頭に入っていたからだと思われる。

それを読んでる時にビートルズの「アビイ・ロード」(69年)を引っぱりだして、その中に収録されている”ゴールデン・スランバー”を聴いてみた。小説のタイトルはこの曲から引用されている。ただ原題は”GOLDEN SLUMBERS”と複数形だ。「スランバーズ」だと響きが悪いとかそういう理由なのだろうか。最近はそんな日々を過ごしていたけれど、それくらいこの映画は気に入ったわけである。

「ゴールデンスランバー」は元・宅配ドライバーである青柳雅春が、仙台で旧友の森田森吾と久しぶりに再会している途中で総理大臣の暗殺犯に仕立て上げられ、2日間にわたって警察から逃亡するという内容である。

森田は、自分の妻がパチンコで抱えた借金を帳消しにすると誘われ、ある仕事を引き受けたと告白する。その内容とは、青柳を誘導することだったのである。しかし、それが危険な仕事だと気づいた森田は、

「警戒して、疑え。じゃねえと、おまえ、オズワルドにされるぞ」(本書P.112)

と青柳は意味深な忠告を受ける。

オズワルドとは、アメリカ第35代大統領ジョン・F・ケネディの暗殺犯とされているリー・ハーヴェイ・オズワルドのことだ。そのオズワルドも逮捕された2日後、ダラス警察署の地下でテレビ中継している最中ジャック・ルビーに射殺された。逮捕直後のオズワルドは、自分ははめられた、などと記者団の前で主張していたという。そして、ケネディ暗殺事件はいまでも真相は明らかになっていない部分が多い。

そうこうしているうちに、外では大きな爆発音が起こり、制服姿の警察官2人が近づいてくる。森田は続ける。

「おまえは逃げるしかねえってことだ。いいか、青柳、逃げろよ。無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。人間、生きててなんぼだ」(本書P.117)

森田にせかされるようにして青柳は逃げる。その青柳に対して警察は躊躇無く拳銃を発砲した。首相暗殺というのは確かに重大な罪ではある。しかしその容疑者をいきなり撃ってくるというのは異常な話だ。おそらくは、青柳を射殺し、それから彼を犯人であるかのようなストーリーを作り上げていくのだろう。青柳を追いつめているのは国家とか権力とか相当に大きなものらしい。果たして青柳は逃げ切ることができるのだろうか。

2時間13分とそこそこ長い映画の中で、青柳は最後の最後までとにかく逃げ回る。さまざまな人の手を借りながら、宅配便のトラックやポンコツの車を駆使したり、地下の雨水管の中に入り込んだりと、ひたすら逃げ続ける青柳の姿はスリリングであり終始飽きることなく観ることができた。

それから後で小説を読んでみて気づいたけれど、小説の大事なところを映画は実に見事に凝縮されている。印象的な部分については映画の中に全て収まったのではないだろうか。おそらくは原作者も満足な出来だったと想像する。

原作小説も「第5回本屋大賞」や「第21回山本周五郎賞」をもらうなど高い評価をされたけれど、個人的には「とにかく、まずは映画を!」と言いたいくらいに面白かった。

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