映画「第9地区」を観る
全米初登場1位にして今年のアカデミー賞に4部門がノミネートされたなどの話題作らしいが、個人的にほとんど関心がなかった。試写会の仕事でこの作品が上映されたこともあり観よう思っただけで、そうでなければ観る機会もなかっただろう。

「第9地区」は南アフリカ共和国を舞台にしたSF作品だ。ある日ヨハネスブルグの上空に正体不明の大きな宇宙船が現れた。中に入っていたのは多くの不気味なエイリアンであり、彼らは難民として地球で生活することとなる。その区域が「第9地区」と呼ばれたが、しかし言葉も通じない容姿の不気味なエイリアンと人間との間には紛争が絶えることがなかった。解決に乗り出したのは超国家機関のMNU(Mulit-National United)であり、エイリアンを人間の住むところとは離れた強制収容所に移住させる計画を立てる。

その困難な作業の白羽の矢を立てられたのがヴィカス(シャルト・コプリー)という1人の男で、彼が陣頭に立ってエイリアンの住む場所に戸別訪問して任務に当たる。ケガを負うなどしながらその日の仕事を終えて部屋に戻ってくると、家族たちから昇進の祝福を受ける。しかしその途中、ヴィカスは黒い血を吐き出して倒れてしまう。エイリアンに接触した彼の体にはいつの間にか恐ろしい変化が起きていたのだ。それによって彼自身の人生も大きく変わっていく・・・。

「ロード・オブ・ザ・リング」で知られるピーター・ジャクソンの名前はあるものの、他には監督も俳優陣も南アフリカで活動している無名な人たちばかりの作品だ。しかしながら、映画の世界は非常にスケールが大きく内容は濃い。南アフリカの広大な光景と、エイリアンや宇宙船がうろうろしている異様な環境の取り合わせは不思議なほど調和している。

後半の主人公ヴィカスやエイリアン、そして宇宙船の行く末を考えると悲しくもやりきれない余韻の残す結末は待っている。ただ最後まで飽きることのなくつき合える傑作であるのは間違いない。

特筆すべきは、地球にやってきたエイリアンの姿の気持ち悪さだろう。あの外見やしぐさはどうにも好きになれないように設計されているのは、おそらく意図的なものに違いない。難民として必死に生きている彼らの立場となって考えるとなんとも理不尽な扱いかもしれないが、そういう気持ちがそれほど起きなかった。やはり私は「人間」の立場で映画を観ていたということになるだろう。

それにしても、かすんだ空にボーッと浮かぶ宇宙船の姿は妙にリアルに映った。CGの技術って凄いなあと感じた次第である。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索