シンニード・オコーナーほか「ノー・プリマドンナ~トリビュート・トゥ・ヴァン・モリソン」(94年)
(1)フィール・ソー・フリー(シンニード・オコーナー)
(2)クイーン・オブ・ザ・スリップストリーム(ブライアン・ケネディ)
(3)コニー・アイランド(リアム・ニーソン)
(4)クレイジー・ラヴ(カサンドラ・ウィルソン)
(5)ブライト・サイド・オブ・ザ・ロード(ホットハウス・フラワーズ)
(6)アイリッシュ・ハートビート(ブライアン・ケネディ&シャナ・モリソン)
(7)疾風(エルヴィス・コステロ)
(8)テュペロ・ハニー(フィル・コウルター・オーケストラ)
(9)マダム・ジョージ(マリアンヌ・フェイスフル)
(10)フライデイ・チャイルド(リサ・スタンスフィールド)

先日まで簿記の勉強をしていたが、ひとり部屋に込もって自習しているとどうも気が滅入ってくる。そこで何か音楽でも流しながら勉強しようと思い立つ。あまりうるさい音楽も耳障りだし自分がいちばん聴きやすい音楽が良い。となれば、やはりヴァン・モリソンが真っ先に思いつく。そこで棚のCDを物色していたらこのアルバムが目についたので、パソコンに入れてしばらくの間繰り返し聴いていた。

「ノー・プリマドンナ」は「トリビュート・トゥ・ヴァン・モリソン」という副題の通り、ヴァン・モリソンの楽曲を他のアーティストたちがカバーした作品である。ヴァン自身が我が国の知名度はそれほどでもないが、このアルバムに至っては検索してもほとんど情報らしきものが出てこない。それならば私が書く意義も多少はあるだろう。

北アイルランドのベルファストに生まれ育ち、アイルランド民謡のカバー集「アイリッシュ・ハートビート」(88年)という作品も作っているヴァンであるから、カバーに参加している人もアイリッシュ系の人が目につく。アイルランド出身のシンニード・オコーナーやホット・ハウス・フラワーズ、エルヴィス・コステロもアイリッシュ系だ。あとはカサンドラ・ウィルソン、マリアンヌ・フェイスフル、リサ・スタンスフィールドと女性シンガーの比率が高いような気がする。

しかしながら、このアルバムにはもっと大きな特徴がある。それは、アルバムの隅から隅までヴァン本人の目が光っているという点だ。まずプロデューサーが彼であり、アルバムの表紙を飾っている女性はヴァンの(2番目の)奥さんだ。さらには(1番目の奥さんの)娘のシャナ・モリソンが1曲参加している。トリビュートされる本人がプロデュースする作品なんて聞いたことがない、と眉をひそめる人もいることだろう。しかしヴァン・モリソンというのは「そういう人」なのである。たとえカバーであっても自分の意に添わない内容のものは出したくないに違いない。長年のファンならばこのような私の思いを少しは共感してもらえるだろうが。

ところでトリビュート・アルバムについて書く場合、参加しているアーティストの紹介、そしてヴァン・モリソンの音楽との関連性などについて触れるのが正当な解説なような気もする。しかし申し訳ないが、個人的にはまったくそんなことをする気力がおきない。参加ミュージシャンの名前はなかなか興味深い人が揃っているとは思う。しかしこのアルバムを足がかりとして「もっとこの人の作品を聴いてみたい!」という気持ちにも全くならない。ヴァンと数年活動していたブライアン・ケネディの”クイーン・オブ・ザ・スリップストリーム”に少しハッとさせられたくらいか。参加ミュージシャンのファンにとってはあんまりな言い方なのは承知しているけれど、私はこの人のステージを観たいがためだけにイギリスまで行った人間だ。だから、こういう作品に対して「クールで客観的な評価」など私には最初から不可能な話であることはお断りしたい。

このアルバムを繰り返し聴くたびに出てくるのは、

「悪くないけど、やっぱりオリジナルには及ばないなあ」

という思いばかりである。

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