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「二毛作、三毛作飲食店が急増」

という見出しが目につく。この記事は「週刊文春」2010年8月5日号のものであった。一般に「二毛作」といえば、同じ耕地で一年に二回、別々な作物を栽培することを指すが、ここでの話は飲食店のことだ。たとえば昼はラーメン店だが夜は居酒屋を経営する、といった営業形態のことである。そして東京や大阪でこのような店が増加しているらしい。

大阪の京橋にある「立ち呑み畑ECODEN」にいたっては、朝がモーニング喫茶、昼はクレープ、そして夜は立ち飲みの「三毛作」をしているという。そういえばここ京都でも、一乗寺にある老舗のラーメン店「天天有」がいままで夜のみの営業だったのを、この5月から昼間の営業も開始し「ひるまや」という屋号で夜とは全く違うタイプのラーメンを提供するようになった事例もある。

しかしながら、果たして二毛作だの三毛作だのといった経営手法はそれほど優れたものなのだろうか。昼と夜で全く違う営業をするとしたら、仕込み・オペレーション・片付けなどの作業がいずれも変わってくる。それは作業量の増加にほかならない。

「設備費や食材、人材コストの削減が可能」(西葛西で三毛作の飲食店を営業している店の経営母体である「APカンパニー」広報担当・岡田英樹氏の発言)などと記事では書いてあるが、この西葛西の事例は同じ店舗の中で外食・中食・小売りの3つをおこなっているという形態である。このような真似は人手の足りない飲食店では到底できない。

パッと考えれば二毛作や三毛作はメリットよりデメリットの方が目立つ。それでもあえて利点があるとすれば、居酒屋やラーメン屋など1つの業種で勝負するよりも複数の業種になればその分だけ当たる確率が増えることくらいか。これはこれで一つの重要な要素かもしれないが、むやみやたらに業種を増やすのが賢い選択でもないだろう。

この記事の最後で、フードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」の佐藤こうぞう編集長の分析が載っているが、

「飲食店が不況で厳しいなか、うちは何屋ですという打ち出し方が限界にきている。」

というのも意味がよくわからない。どんな業種にせよセールスポイントのわからないような店が成功するわけがない。やはり二毛作・三毛作は「数打ちゃ当たる」の実践なのだろう。

そもそもこの週刊文春で取り上げられている店の中で、例えば昼も夜も繁盛しているような事例があるのだろうか。この記事を読んでその辺がもっとも疑問に残った。

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