エウメネスの言葉
2010年9月30日から10月1日にかけての2日間は、私の人生で最も大きな分岐点の一つとなった。30日は個人的にショッキングな出来事に出会い、その晩は夜明け近くまで眠れず過ごした。しかしその翌日は人事異動の関係で9年ぶりに職場が変わるということもあって、否応無く新しい環境に放り込まれて働くこととなる。そんなこんなが入り交じって、仕事が終わる頃にはいまだかつてないほど精神がボロボロになってしまった。しかしその夜は周囲の友人の叱咤激励のおかげもあってなんとか気持ちも上向きになった。週明けには仕事も問題なくできる状態まで回復していることだろう。

ただ、今回自分が受けたダメージはおそらく死ぬまで自分につきまとうに違いない。

「寄生獣」で知られる岩明均の作品「ヒストリエ」は、アレクサンドロス大王(アレクサンドロス3世)の書記官だったエウメネスを主人公にしたマンガだ。紀元前4世紀ごろのギリシャ周辺を舞台にした非常にスケールの大きな歴史作品で、あまりマンガを知らない私にとって数少ない愛読書の一つとなっている。現在も「月刊アフタヌーン」で連載中で、単行本は6巻まで出ている。

そのヒストリエの5巻でエウメネスは非常に印象的なセリフを言っている。

エウメネスは故郷カルディアを追われた身であったが、紆余曲折を経て数年後に帰ってきた。その時、かつて父親を殺したゲラダスと再会してしまう。エウメネスに復讐されるのを恐れたゲラダスはエウメネスに斬りかかるも返り討ちに会う。

その翌朝、同じく数年ぶりに再会した兄・ヒエロニュモスに父親の仇討ちを果たしたことを讃えられる。ヒエロニュモスは、それに比べて自分は父親を殺した首謀者ヘカタイオスに面倒を見てもらっているような立場だと言って、

「だ、だってさァ、エウメネス!こ この町でヘカタイオスに逆らったら生きていけないんだよ?!ぼくなんかとても・・・」(P.93)

と卑下する。

そんな兄に対してエウメネスは微笑みながら、それでいいんだ、と言って遠い目をしながらこう続ける。

「人はそれぞれ・・・スッキリしないものをいくつか抱えたまま生きてる・・・それが普通なんだと思う。
心に傷を負ったままでも楽しく暮らす事はできるさ・・・」(P.94)

生きている限り、辛い経験や悲しい出来事に遭遇することは避けられない。そして「それが普通」なのだろう。

それにしても、18歳ないし19歳(生年月日が不明だから)にしてこんなセリフが口から出てくるエウメネスはつくづく波瀾万丈な生き方を送ったのだなと再認識する。

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