「黒い繋がり」は断ち切れるか
2011年8月28日島田紳助の芸能界引退に絡んで暴力団に関する内容がニュースで取りあげられている。ネットで過去の記事をいろいろとたどってみると、近年は警察庁をはじめ都道府県の自治体も暴力団対策にかなりの力を入れているようだ。昨年4月に福岡県から始まった「暴力団排除条例」では、暴力団とみなされた人は例えば銀行口座が開けなかったり、事務所(自宅)を借りることがでなくなるなどの処置がとられる。つまり暴力団を人間と見なさないというわけだ。
「現代ビジネス」が2011年1月13日に配信した「警察庁『山口組壊滅作戦』で地下に潜りマフィア化する暴力団の恐怖 安藤隆春警察庁長官への期待と不安」(執筆はジャーナリストの伊藤博敏氏)という記事で、今年の1月6日に警察庁の安藤隆春長官が記者会見でこう述べたことが紹介されている。
「今年は暴力団対策が最重要課題だと位置づけている」
「さらに暴力団対策を進めることで、日本の治安の風景を変える覚悟でやりたい」
暴力団を取り巻く状況を見ていると、安藤長官の年頭の発言はかなり本気度の高いものといえよう。多くの一般市民にとってはこうしたことは無条件に大歓迎するかもしれない。しかし個人的には警察などのやり方には不安がつきまとう。
例えば私たちがなんとなく怖がってしまう団体に「右翼」という人たちがいるけれど、おそらく日本で最も知名度の高い右翼である鈴木邦夫(一水会顧問)さんは著書「愛国者は信用できるか」(06年。講談社現代新書)でこう説明している。
<天皇制を批判したら、すぐに右翼が攻撃してくると思っている人が多いが、そんなことはない。論文や評論に対して抗議することはない。それは「言論の自由」だと思っている。そのくらいは、わきまえている。戦前のように、学者のアラ探しをして攻撃するようなことはない。>(P145)
暴力団にしてもそれは同様だ。端的にいえば、彼らの利益を侵害するような行為をしない限りはむやみに手を出してくることはない。
私は暴力団を擁護するような立場ではない。ただ、今回の暴力団排除条例や警察の努力によって彼らに打撃を与え弱体化したとしても、その結果市民が安心して暮らせる平和な社会が実現する可能性は限りなく低いと感じているだけである。いや、下手をしたらもっとややこしい社会ができてしまうかもしれないとすら思っている。
暴力団とも関係が深い話になるが、消費者金融という職業もグレーゾーンの撤廃などによってすっかり弱体化している。高い金利とキツい取り立てが批判を浴びた結果であるが、しかしそれはかなり一面的な見方と言わざるをえない。なぜ消費者金融の金利が高いかといえば、貸した金が戻ってこない可能性が高いためその分を上乗せしているだけだ。そもそも貸金業というのは原則的に借りたい人間がいるから成り立つ商売であり、業者を排除したからといってその需要が減るわけでもない。消費者金融から借りることができなくなった人は、代わってもっとヤバくて高金利な違法の闇金融業者に流れていくだけである。これは完全に法改正以前よりも事態が悪くなったとしかいえない。
同じことが今回の暴力団対策に対してもいえるのではなかろうか。さきの現代ビジネスの記事にはこのような予測も書かれている。
<「山口組壊滅作戦」を進めれば、弘道会=山口組は地下に潜って先鋭化、愛想のいい隣人、行きつけのパン屋、宅配の運転手、といった普通の人が、水面下で非合法活動をしている時代になるかも知れない。>
消費者金融の流れを見てみれば、暴力団対策によって闇の勢力が無くなっていくなどとは私には到底思えない。それはこの世界から戦争や飢えがなくなるということくらい夢物語な気がするのだが、いかがだろう。
【参考文献】
伊藤博敏「警察庁『山口組壊滅作戦』で地下に潜りマフィア化する暴力団の恐怖
安藤隆春警察庁長官への期待と不安』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1894
「現代ビジネス」が2011年1月13日に配信した「警察庁『山口組壊滅作戦』で地下に潜りマフィア化する暴力団の恐怖 安藤隆春警察庁長官への期待と不安」(執筆はジャーナリストの伊藤博敏氏)という記事で、今年の1月6日に警察庁の安藤隆春長官が記者会見でこう述べたことが紹介されている。
「今年は暴力団対策が最重要課題だと位置づけている」
「さらに暴力団対策を進めることで、日本の治安の風景を変える覚悟でやりたい」
暴力団を取り巻く状況を見ていると、安藤長官の年頭の発言はかなり本気度の高いものといえよう。多くの一般市民にとってはこうしたことは無条件に大歓迎するかもしれない。しかし個人的には警察などのやり方には不安がつきまとう。
例えば私たちがなんとなく怖がってしまう団体に「右翼」という人たちがいるけれど、おそらく日本で最も知名度の高い右翼である鈴木邦夫(一水会顧問)さんは著書「愛国者は信用できるか」(06年。講談社現代新書)でこう説明している。
<天皇制を批判したら、すぐに右翼が攻撃してくると思っている人が多いが、そんなことはない。論文や評論に対して抗議することはない。それは「言論の自由」だと思っている。そのくらいは、わきまえている。戦前のように、学者のアラ探しをして攻撃するようなことはない。>(P145)
暴力団にしてもそれは同様だ。端的にいえば、彼らの利益を侵害するような行為をしない限りはむやみに手を出してくることはない。
私は暴力団を擁護するような立場ではない。ただ、今回の暴力団排除条例や警察の努力によって彼らに打撃を与え弱体化したとしても、その結果市民が安心して暮らせる平和な社会が実現する可能性は限りなく低いと感じているだけである。いや、下手をしたらもっとややこしい社会ができてしまうかもしれないとすら思っている。
暴力団とも関係が深い話になるが、消費者金融という職業もグレーゾーンの撤廃などによってすっかり弱体化している。高い金利とキツい取り立てが批判を浴びた結果であるが、しかしそれはかなり一面的な見方と言わざるをえない。なぜ消費者金融の金利が高いかといえば、貸した金が戻ってこない可能性が高いためその分を上乗せしているだけだ。そもそも貸金業というのは原則的に借りたい人間がいるから成り立つ商売であり、業者を排除したからといってその需要が減るわけでもない。消費者金融から借りることができなくなった人は、代わってもっとヤバくて高金利な違法の闇金融業者に流れていくだけである。これは完全に法改正以前よりも事態が悪くなったとしかいえない。
同じことが今回の暴力団対策に対してもいえるのではなかろうか。さきの現代ビジネスの記事にはこのような予測も書かれている。
<「山口組壊滅作戦」を進めれば、弘道会=山口組は地下に潜って先鋭化、愛想のいい隣人、行きつけのパン屋、宅配の運転手、といった普通の人が、水面下で非合法活動をしている時代になるかも知れない。>
消費者金融の流れを見てみれば、暴力団対策によって闇の勢力が無くなっていくなどとは私には到底思えない。それはこの世界から戦争や飢えがなくなるということくらい夢物語な気がするのだが、いかがだろう。
【参考文献】
伊藤博敏「警察庁『山口組壊滅作戦』で地下に潜りマフィア化する暴力団の恐怖
安藤隆春警察庁長官への期待と不安』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1894
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