先日をもって半年勤めていた職場を去り、この7日からまた新しい場所で働くことになる。その間は特にすることもないので、自分の気持ちを整理するためにこの1年間を少し振り返ってみようと思う。そうすれば今年度の自分はどのような行動をとるべきか、そのあたりがボンヤリとでも出てくるのではという期待を込めながら。

昨年度で一番大きな出来事といえば、やはり10年近く在籍した会社を辞めたことである。次も決めないまま職場を去ったため、それから5ヶ月間も無職でフラフラする状態に陥った。そしてその経験から、お金って大事なんだな、と今更ながら痛感した次第である。

それまでの私はお金を貯蓄するという必然性が全く理解できなかった。「将来のため」とか「何かあった時のため」というのは貯金をするための常套句であるけれど、自分には全く説得力の欠ける理屈だ。1000万の貯金を築いたところで一生安泰に暮らせるのか?それだけでは絶対に無理だ。また最近は、先行き不明な時代なのを良い事に「老後は1億円は必要ですよ」などと不安を煽って投資話などを持ちかける連中もいるけれど、サラリーマンの生涯収入を考えればそれもまた実現不可能な話だ。

そもそもの話、私は浪費家の体質である。お金があればあるだけ使ってしまうタイプだ。たとえば、今の自分が欲しいものはオフィスのソフトが入ったノートパソコンである。最近だったら5万くらいで揃えられるらしい。ワードやエクセルをいじるくらいが目的ならそれで充分だろう。しかしもし予算が潤沢にあったとしたら、「レッツ•ノート(勝間和代さんなどが愛用しているパナソニッックのノート•パソコン)にしちゃおうかな?」などと思ってしまうような人間である。

会社の組織改編のため06年3月にも一度会社を辞めているけれど、その時に出た退職金も貯めることなく、「それなら死ぬ前にヴァン・モリソンのライブを観よう!」とイギリスへ行くのに使ってしまった。あれは50万くらい費用がかかっただろうか。1ポンドが250円ほどもした時代である。

それはともかく、お金を節約してその分を貯蓄に回す、という発想が私には皆無であった(実際のところ、今も行動パターンはそんなに変わっていない)。

そんな私がまがりなりにも現在生きていられるのも、退職金などいくばくかのお金があったからである。いや、そもそも退職金がなければ組織を離れる踏ん切りも就かなかったにちがいない。何も資金がなければそうした決断もできなかったことは否定できないだろう。

橘玲さんの著書「知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語」(10年。幻冬舎文庫)にこんなことが書かれてある。

<経済的な基盤がなければ、人は自由には生きられない。こんな単純なことに気付くまでに、ずいぶんと回り道をした。そして、自分の人生がいかに多くのものに依存しているかを知って慄然(りつぜん)とした。>(本書P.22)

「こんな単純なことに気付くまでに、ずいぶんと回り道をした。」というのは自分もまさに同じであり、またこれからは同じ轍を踏んではなるまい、とは思っている。

お金を持つことの重要性はザッと3つあると今の自分は思っている。一つは橘さんが指摘されている通り、自由に生きるための基盤としてのお金である。転職するにしても生活するにしても資本主義の社会を生きるためには最低限のお金が必要である。そしてもし働く必要がないほどのお金ができれば、嫌な仕事をしなくても済むようにもなる。究極的にはそういうことだろう。

そして二つ目は、精神的な安定を得るための貯金である。これは有吉弘行氏の著書「「お前なんかもう死んでいる ~プロ一発屋に学ぶ50の法則~」(10年。双葉社)が大いに参考となる。彼のエピソードで貯金残高で「100万円」という金額を死守したというものがあった。100万円を切って桁が変わったら不安になり、家の物を売るなどして必死で100万円に戻したというのだ。本書の感想は、

http://30771.diarynote.jp/201111050934507277/

でも書いたけれど、貯金があることにより安心を得るという効果は思いのほか大きい。これは実際に貯金残高が減っていく恐ろしさを知っている自分にはよくわかる。

そして最後に言いたいのは、自分の人生を先延ばしするためのツール(道具)としての貯金である。大きな経済成長がこれからは望めないであろう日本において、収入が上がることはあまり期待できない。いや、消費税の増税などの負担もあって実質的収入は下がっていくと考えたほうが良いだろう。

もし自分の月収が3万とか5万とか減っていって生活に困っていくとしたら、その仕事を辞めるべきだろうか?現状のままでは他を探さなければならないだろうが(ただし、もっと収入のある他の仕事が見つかる保証などない)、減った収入を穴埋めできるくらいの貯蓄があれば働き続けられる。

正直いってこの5年後、10年後、20年後のこの国がどうなっているのか見当もつかない。現状から考えればあまり楽観的な材料は無い気がするが、それでも私たちはどうにかして生きていかなければならない。そして、この困難な時代をやりくりしてどうにか生きるためにお金が大きな助けになる。

書いていて実に平凡で面白くもない結論になったと自分でも思う。しかしこれは一般論でもなんでもなく、収入源を断った状態を5ヶ月続けた自分が実体験から導いた答えだ。少なくとも自分はこの経験を大事にしてこれからを生きていきたいと思う。

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