先日までいた職場を去る時、少なからず不安なことが一つあった。それは会社の発行した保険証を返すことである。多くの人が当然にように持っている免許証というものを所持していない私にとって保険証は数少ない貴重な身分証明書の一つだ。これを除いたら、それこそパスポートしか残されていないだろう。

持っていない立場から見れば、免許証というのは非常に便利なものだ。写真が付いているというのも心強い。昨年の6月に簿記2級の試験を受ける時は、会場に「写真付きの身分証明書」を机の上に置かなければならなかった。多くの人は免許証か学生証を並べている中でパスポートを出していたの少数派だったに違いない。

「次の保険証をもらうまでに他の身分証明を作ったほうがいいかなあ」

と考えるようになった。そして、何年かに前ある人から、住基カード(住民基本台帳カード)が身分証明になるぞ、と言われたことを思い出す。次の職場に住民票を写しを提出する必要があるから、区役所に行くついでに住基カードも作ってもらおうと決める。ネットで調べると、証明写真1枚と手数料500円、そして身分証明書(笑)が必要だという。身分証明書を作るにも身分証明書が必要だというわけか。ここでもパスポートが活躍する。実際に利用したのはイギリスに1度行った時だけなのに、ここまで二次利用をさせてもらうとは予想外である。

こうして私はめでたく新しい身分証明書を手にすることができた。カードの申請から交付までにかかった日数はわずか3日間ほどである。

しかしこれが本当に免許証やパスポートの同等の働きをするのか、という疑念が自分には少し残っていた。そこでネットで住基カードについてもう少し調べてみるとその疑念が実際のものとなってしまう。

住基カードは必ずしも身分証明書としては完璧なものではなかったのだ。

ウィキペディアでも書いてあることだが、住基カードには「12345」というようなそのカード固有の番号が入っていない。名前、顔写真、住所、果てはICチップまで搭載されているのに番号が振られていないのというのがかなり痛い。そしてそのような欠点があるため、身分証明としては使えない業者(ソフトバンクモバイル、楽天銀行、じぶん銀行など)もあるという。

かつて住民基本台帳が導入されるという時、「国民総背番号制」がうんぬんと結構な議論になっていた。私も何となくこの制度を不気味に感じていたし、実際に導入されてから封書で、あなたの番号はこれこれです、という文書が届いた時もなんだか気持ち悪かったことを覚えている。

あれから何年経ったかわからないけれど、かつてはこの制度を反対していた民主党が納税記録や社会保障情報を管理する「マイナンバー」を導入することをこの2月に閣議決定した。

私にはこれによって、何が良くなり何が悪くなるのか、判断がつかない。しかし法律が変わったからといってこの使えないカードが身分証明として今よりも機能が向上することはないような気がする。

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