今日は新しい職場で働き始める日だ。気合いを入れて朝5時に目覚ましをセットしたが、またしても4時半くらいに起きてしまった。身支度をしたりネットをしたり本を読んだりしても時間が余ってしまう。

「職場の様子がわからないし、周辺を歩き回ってみようか」

そう思い、さっさと部屋を出てバスに乗り込んだ。今度の勤務地は最寄りのバス停から一本で行けるところにある。所要時間は把握してなかったけれど、実際に行ってみたら25分程度だった。バスもあまり混んでおらず、職場まで席に座ることができた。

バス停を降りると、道の反対側のバス乗り場に、私の担当をしてくれた派遣会社のSさんが座っていた。約束の時間までまだ20分くらいあるけどずいぶん早い到着だなと感心する。そのSさんはひとまず置いて、勤務地周辺をしばらく散策してみた。そこは京都市内でもけっこう辺鄙な場所で閑静な住宅街の中にある。そして徒歩10分圏内にはコンビニすら立ってない。昼は外で食事を済ませるのはどうも無理みたいだ。こんなこともあるかと思い、バスに乗る前にローソンでパンとおにぎりを買っておいて正解だった。

15分ほど近辺を歩いてから、正面玄関でSさんと合流する。その場で勤務記録や給料振込、社会保険についてザッと説明される。社会保険については2ヶ月を超えて雇用契約が結ばれないらしい。もらえるとしたら7月からだそうだ。うわあ。それまでは病気になれないな。

何か疑問点はありませんかと言われたので、メールで労働条件の通知が届いていたのだが、勤務時間がどうも聞いてたのと違っていたのでSさんに、

「勤務時間が8時半から5時になってたけど、5時半じゃありませんか?」

と訊ねたら、

「ごめんなさーい。郵送する書面ではちゃんとしときますんでぇ」

とSさんの顔からは悪びれた様子は全くなし。まあ、可愛いから許してやるけどさ。そして私を指導してくれる勤務先のSさんが玄関に到着したら、

「では、頑張って仕事をしてください」

とSさんはその場を去っていった。早いなあ。そしていよいよ勤務開始である。

ここで詳しい仕事の内容を書くのは控えるけれど、仕事を指導するSさん、私と同じ派遣社員の男性1人、そしてパートの女性が2人というこじんまりとした職場であった。そこにほぼ1日ずっといるという具合だ。職場ではラジオ番組がずっとかかっている。これまでいた職場とはずいぶん雰囲気が違う。

私に仕事を教えてくれる方は4歳くらいしか年齢が変わらない男性で、ずいぶん親切に作業を教えてくれる。最初はできるわけないから、と無駄にプレッシャーをかけるような真似はしてこない。実際、かなり覚えることが多い業務(最初は何でもそうかな)なのでそう言ってもらえて心情としては助かった。ともかく作業をこなすだけで疲れるだけの初日だったけれど、こういう人の下でなら大丈夫かなと少し安心した。

それに比べると、少し前に半年間いた某所は悪夢としか思えないほどである。その職場で親しくしていた男性(20歳そこそこ。彼もそこを私と同時期に辞めた)に先日、働くところが決まったよ、とメールをしたらパッと返ってきたのが、

「金はいいの?」

というものだったので苦笑してしまった。本音を言えば、平日だけの派遣の仕事がそんなに待遇など良いわけがない。交通費も別途支給されるわけでもない。しかも給料は月末締めで翌月25日に支払いである。さすがにこれはあまりにあんまりだと思う。

それでも、仕事をする上での環境はかつてよりグッと改善されたことは間違いない。自分にとってはそれが一番貴重なことである。この部分は強調したい。

いまはすっかり著書も読まなくなったけれど、森永卓郎さんが仕事に関して述べていたことが今も頭に残っている。それは仕事を選ぶ基準についてであり、仕事は、

収入×苦痛の度合い

で考えよう、というようなものだった。森永さんは、楽して儲かる仕事なんて無い、という身もふたもないことを言ってからこの公式を挙げていたと思う。

給料が良くても体を酷使したり、精神的に無理がかかるような仕事をしても続かない。それで挫折でもしたら生涯年収としては逆に下がる可能性もある。いや、そもそもお金という尺度だけで人生を測るのはなかなか危険な行為ではないだろうか。確かにお金があればあるほど良いに決まってるが、それと同じくらい私は自分の時間が欲しいし無理な働き方もしたくない。健康のためなら死んでもいい、というような愚かな選択を取りたくないのである。

「金はいいの?」と言ってきた彼に対しては、

「人はパンのみにて生きるにあらず、という言葉を知らねえのか?」

と返してやりたい。よく、お金か自由か、などという青臭い二元論を聞くこともあるけれど、どちらが片方を取るというような問題ではないだろう。むしろ、この二つの要素をどうやってバランスを取るかが、その人の人生の充実度と繋がっていくと思う。

現在の私といえば、ピーク時からすれば収入は半分くらいになってしまった。しかし仕事のプレッシャーは思い切り解放されており、残業もほとんどしなくて済むようになった。そういう部分では自分の思い通りになっていっている。しかしこういう環境を整えるまで、かつての職場を去ってから1年ほど費やしてしまった。また、お金も人間関係も色々と失ったものもある。しかしどん底の状態はこれで一端は脱したと思う。なんとかこの状態を維持しながら、次の段階への足がかりを作っていきたい。そう願っている。

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