ヴァン・モリソン「BORN TO SING:NO PLAN B」(12年。輸入盤のみ)
2012年10月14日 CD評など
(1)Open The Door (To Your Heart)
(2)Going Down To Monte Carlo
(3)Born To Sing
(4)End Of The Rainbow
(5)Close Enough For Jazz
(6)Mystic Of The East
(7)Retreat And View
(8)If In Money We Trust
(9)Pagan Heart
(10)Educating Archie
この10月5日をもってビートルズがデビューから50周年を迎えた。個人的にはこのバンドに過剰な思い入れはないものの、ロックの歴史も相当に積み重なったのだなとは嫌でも感じてしまう。この間に素晴らしい作品や優れたミュージシャンが出てきた。
その一方、昨今はこの分野での偉人の訃報を目にすることも増えてくる。幸い私が観た人で鬼籍に入った人といえばジェイムス・ブラウンくらいしか思いつかないが、あと5年も10年もすれば辛い経験にたくさん直面することだろう。生きていたらそういう出来事に会うのは仕方ないことなのだが。
以前にも書いたことだけれど、好きなミュージシャンにはずっと活動を続けてほしい、などと現在の私は持っていない。残された人生を好きに使う権利は誰にだってある。自分もそれなりに年齢を重ねたためか、そのように考えられるようになったようだ。だが、こうやって最も好きなミュージシャンであるヴァン・モリソンが新作を出したというのはやはり嬉しいというしかないし、灰になるまで活動を続けてほしいと思ってしまう。彼は現在67歳だ。
ヴァンが「ゼム」というグループでデビューしたのは1964年のことだからビートルズとそれほどキャリアは変わらない。当時の英国は「ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれたように、黒人音楽の影響を受けながらもっと新しい音楽を作るグループがたくさん出てきた。先のビートルズを筆頭にローリング・ストーンズ、キンクス、フー、アニマルズなどなど。ゼムもそういう流れの中にいたバンドであり、そしてヴァンはそこから現在まで大きな空白期間もないまま活動を続けている。周囲に話してもまともに相手もしてくれないが「来日していない最後の大物ミュージシャン」と言われて久しい。いまだに待望している人もこの国には少なからずいるだろうが(私もそうだ)、たぶん無理だろうなと思って自分から英国まで出かけて彼のライブをみたのは今から5年前、2007年6月のことであった。
彼のやり方には肯定できない部分もあるけれど、この浮き沈みの激しい業界において自らのスタンスを変えることなく貫き通している姿はやはり凄いというしかない。しかも今だに現役でステージをこなし、こうして新作まで出してしまうのだから、それだけで頭が下がってしまう。ましてや、自らの道も決定できずフラフラしている私と比較してしまうと・・・本当にもう嫌になってくる。
それはともかくとして、スタジオ・アルバムとしては08年に出た「キープ・イット・シンプル」から4年ぶりの新作である。ベテラン・ミュージシャンでそのくらいのブランクは珍しくないと思うかもしれないが、彼のキャリアでここまで空白期間があったのはこれが初めてのことだ。そういう面を見ても彼がけっこうなペースで創作活動をしてきたといえる。
肝心の中身は、アルバム名に「シンプル」と入っていた前作が文字通り簡素な音作りだったのに比べて、今回はピアノやハモンド・オルガン、そしてホーン・セクションが活躍している。ヴァン本人がサックスをたくさん吹いている(10曲中6曲)のも大きな特徴だろう。また、聴いていてピアノの響きが妙に耳に入ってくると思ったらこちらも3曲で本人が弾いていた。95年のアルバム「デイズ・ライク•ディス」に入っている”エンシェント・ハイウェイ”という曲でいかにも彼らしい無骨なハモンド・オルガンの演奏を披露したこともあるが、今回のピアノも同じような印象を受けた。
それから、7分とか8分とか長めの曲が目立つ。ちょっと冗長かなあと思う曲も正直言ってあったが、2曲目の”Going Down To Monte Carlo”は淡々とした曲調ながら聴き手をジワジワと引っ張ってくる。こうした彼の力は今回も健在であった。
彼にたいして興味のない方だったらどれを聴いても同じように感じるのかもしれない。下手をしたら、昔のジャズやブルースと何の違いがあるの?と思うかも。
しかし個人的には、
「あ、ヴァンがピアノを弾いてる。サックスもたくさん吹いてるなあ」
「今回はジャズ寄りになってるような気がする」
などど小さな変化を見つけては喜び、また彼の40年以上のキャリアを貫いている変わらぬ部分に触れて感激していた。多分これが彼のファンのあり方なのだと思う。
mixiのコミュニティで書かれていた噂では、今回のアルバムが日本盤で出る予定はないという。彼のオリジナル・アルバムは今までは遅れても出ていたので、そうなったら非常に残念な話だ。
実は私も、国内盤が出たら手にいれようかなと思っていた一人ではあった。しかし今回の「BORN TO SING」(歌うために生まれた)という彼のようなミュージシャンにふさわしいタイトルを見て、これは傑作だろう!と確信したのでAmazonで輸入盤を手に入れた。そしてその期待はおおむね応えてくれるものだった。Amazonで近所のローソン受取りにして1613円である。しかも歌詞カードがしっかり付いてるし、何も迷うことはないだろう。ファンをしている方でこの文章が目に止まったら、ぜひ購入していただきたい。
もし国内盤が出たら?
その時はその時で、また買うだけだろう。
このアルバムの触りをYou Tubeで15分ほど聴くことができる。作品の感じは十分つかめると思うのでお試しいただければと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=x7Rm7eT6hqw
(2)Going Down To Monte Carlo
(3)Born To Sing
(4)End Of The Rainbow
(5)Close Enough For Jazz
(6)Mystic Of The East
(7)Retreat And View
(8)If In Money We Trust
(9)Pagan Heart
(10)Educating Archie
この10月5日をもってビートルズがデビューから50周年を迎えた。個人的にはこのバンドに過剰な思い入れはないものの、ロックの歴史も相当に積み重なったのだなとは嫌でも感じてしまう。この間に素晴らしい作品や優れたミュージシャンが出てきた。
その一方、昨今はこの分野での偉人の訃報を目にすることも増えてくる。幸い私が観た人で鬼籍に入った人といえばジェイムス・ブラウンくらいしか思いつかないが、あと5年も10年もすれば辛い経験にたくさん直面することだろう。生きていたらそういう出来事に会うのは仕方ないことなのだが。
以前にも書いたことだけれど、好きなミュージシャンにはずっと活動を続けてほしい、などと現在の私は持っていない。残された人生を好きに使う権利は誰にだってある。自分もそれなりに年齢を重ねたためか、そのように考えられるようになったようだ。だが、こうやって最も好きなミュージシャンであるヴァン・モリソンが新作を出したというのはやはり嬉しいというしかないし、灰になるまで活動を続けてほしいと思ってしまう。彼は現在67歳だ。
ヴァンが「ゼム」というグループでデビューしたのは1964年のことだからビートルズとそれほどキャリアは変わらない。当時の英国は「ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれたように、黒人音楽の影響を受けながらもっと新しい音楽を作るグループがたくさん出てきた。先のビートルズを筆頭にローリング・ストーンズ、キンクス、フー、アニマルズなどなど。ゼムもそういう流れの中にいたバンドであり、そしてヴァンはそこから現在まで大きな空白期間もないまま活動を続けている。周囲に話してもまともに相手もしてくれないが「来日していない最後の大物ミュージシャン」と言われて久しい。いまだに待望している人もこの国には少なからずいるだろうが(私もそうだ)、たぶん無理だろうなと思って自分から英国まで出かけて彼のライブをみたのは今から5年前、2007年6月のことであった。
彼のやり方には肯定できない部分もあるけれど、この浮き沈みの激しい業界において自らのスタンスを変えることなく貫き通している姿はやはり凄いというしかない。しかも今だに現役でステージをこなし、こうして新作まで出してしまうのだから、それだけで頭が下がってしまう。ましてや、自らの道も決定できずフラフラしている私と比較してしまうと・・・本当にもう嫌になってくる。
それはともかくとして、スタジオ・アルバムとしては08年に出た「キープ・イット・シンプル」から4年ぶりの新作である。ベテラン・ミュージシャンでそのくらいのブランクは珍しくないと思うかもしれないが、彼のキャリアでここまで空白期間があったのはこれが初めてのことだ。そういう面を見ても彼がけっこうなペースで創作活動をしてきたといえる。
肝心の中身は、アルバム名に「シンプル」と入っていた前作が文字通り簡素な音作りだったのに比べて、今回はピアノやハモンド・オルガン、そしてホーン・セクションが活躍している。ヴァン本人がサックスをたくさん吹いている(10曲中6曲)のも大きな特徴だろう。また、聴いていてピアノの響きが妙に耳に入ってくると思ったらこちらも3曲で本人が弾いていた。95年のアルバム「デイズ・ライク•ディス」に入っている”エンシェント・ハイウェイ”という曲でいかにも彼らしい無骨なハモンド・オルガンの演奏を披露したこともあるが、今回のピアノも同じような印象を受けた。
それから、7分とか8分とか長めの曲が目立つ。ちょっと冗長かなあと思う曲も正直言ってあったが、2曲目の”Going Down To Monte Carlo”は淡々とした曲調ながら聴き手をジワジワと引っ張ってくる。こうした彼の力は今回も健在であった。
彼にたいして興味のない方だったらどれを聴いても同じように感じるのかもしれない。下手をしたら、昔のジャズやブルースと何の違いがあるの?と思うかも。
しかし個人的には、
「あ、ヴァンがピアノを弾いてる。サックスもたくさん吹いてるなあ」
「今回はジャズ寄りになってるような気がする」
などど小さな変化を見つけては喜び、また彼の40年以上のキャリアを貫いている変わらぬ部分に触れて感激していた。多分これが彼のファンのあり方なのだと思う。
mixiのコミュニティで書かれていた噂では、今回のアルバムが日本盤で出る予定はないという。彼のオリジナル・アルバムは今までは遅れても出ていたので、そうなったら非常に残念な話だ。
実は私も、国内盤が出たら手にいれようかなと思っていた一人ではあった。しかし今回の「BORN TO SING」(歌うために生まれた)という彼のようなミュージシャンにふさわしいタイトルを見て、これは傑作だろう!と確信したのでAmazonで輸入盤を手に入れた。そしてその期待はおおむね応えてくれるものだった。Amazonで近所のローソン受取りにして1613円である。しかも歌詞カードがしっかり付いてるし、何も迷うことはないだろう。ファンをしている方でこの文章が目に止まったら、ぜひ購入していただきたい。
もし国内盤が出たら?
その時はその時で、また買うだけだろう。
このアルバムの触りをYou Tubeで15分ほど聴くことができる。作品の感じは十分つかめると思うのでお試しいただければと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=x7Rm7eT6hqw
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