ライブの日は休みたい。いや、休まないまでも時間に十分な余裕をもって出発したい。本日の感想について書こうとする時、まず頭に浮かんだのはそのことだった。

普段通りに仕事をして定時に職場を出たら17時30分である。開演時間の19時までに難波の会場へ果たして辿り着けるかどうか。それはいままでやったことのないしけれど、かなり危ない線である。だから今月の早い段階から「なんとか休めないでしょうか・・・」と上司に相談を持ちかけていたけれど、諸般の事情で叶わなかった。

そこで17時30分から出発する場合の経路をYahoo!の「路線情報」をもとにしミュレーションをしてみる。そして一番可能性が高いのは、17時53分に阪急「西京極」駅の普通列車に間に合えば開演10分前に最寄り駅の難波に到着できるというものだった。自転車やバスでは絶対にその時間に西京極へは行けない。そこで昼休みにタクシーを予約しておいた。午後5時を過ぎる頃からソワソワして落ち着かなくなってくる。

「いま職場を出れば確実に間に合うんだけどなあ・・・」

ちなみに本日は上司が既に外を出てしまったので、抜け駆けできないわけでもなかった。しかし、終業5分前に電話がかかってきたらどうしよう?という不安もあったし小心で小物の私にはできそうにない。そうして17時30分になったら、バッと職場の扉にカギをかけて入口までダッシュした。が、なぜかこの時点でくるはずのタクシー会社から連絡がこない。まさか時間を勘違いしたのか?とまずここから不安になった。が、職場の門まで走ると1台のタクシーがスーッと入ってくる。これだ。飛び込むようにそこに乗り間髪入れずの出発である。この時点で17時31分だったか。

「しかし時間通りきっちりに来るってどういうことだ?せめて3分前とか5分前に待機ておいてもいいのでは・・・」

とこの辺りですでに私は柄にもなくかなりイライラしていた。しかし乗ってしまったからには、もう仕方ない。あとは運転手に身をゆだねる、というか運を天にまかせるほかないだろう。だが、予想通りのことだが、夕方の道はけっこう混んでいた。普段なら気にしない目の前の車やバイク、赤信号や歩行者に対してもかなり憎悪が湧いてくる。

「邪魔なんだよ!ここが日本でなくてシエラレオネだったら、てめえら全員ケチャップまみれになってるぞ!」

例えが古いが、今は亡き横山やすしのような心境になっていたのではないか。しかし、それもこれもスレスレの時間だったのが一番の問題なのだ。これがもう10分遅れとか20分遅れだったら簡単に諦めがつく。しかし、この赤信号1つが点灯しなければ間に合っていた、というような微妙な線が続くから穏やかな心境になれるはずがない。

そうして17時48分、五条通を抜ければ駅前に着く、と思った時点で何度目かの赤信号である。

この時点で、

「ああ・・・駄目だったか・・・」

と一度だけ観念した。信号を抜けて右折をし西京極駅前に着いたのは17時50分である。

「走ろう!」

思ったのはそれだけだった。確かタクシー代は1600円くらいだったが、2000円出してすぐ外を出て行った。タクシーに乗っておつりを受け取らなかったのは、これが生まれて初めてのことである。

券売機でパッと梅田行きの券を買い、ダーッと階段を走る。ようやくホームに着いた時は17時51分、発車時刻のわずか2分前だった。間に合ったのである。そして17時59分には桂駅で通勤特急に乗り換える。これで開演20分前には梅田に着けるだろう。

とりあえずイライラした気持ちを押さえるために、携帯でBONNIEの「Chasing Hope」を聴きながら次の手を考えた。まだ安心できない。

「地下鉄に乗って難波に行ったら18時51分に到着だが、そこからスッとなんばHatchに行けるだろうか?地下道はゴチャゴチャした構造になってるし・・・」

と考えているうちに18時35分、やっと大阪の梅田に到着である。電車を降りたら、また走る走る。そしてタクシーをつかまえて飛び乗った。

「なんばHatch・・・湊町リバープレイスに行きたいんですが、わかりますか?」

と訊ねたら、

「わかりますよ」

運転手は淡々と言って走り出した。この時点で18時40分、開演まであと20分だ。

「道に迷ってバタバタするくらいなら、タクシーの方が確実だろう」

そう判断したのである。しかしご多分に漏れず、大阪の道もまた混雑していた。そうした渋滞のないだけ地下鉄の方が有利だったかもしれない。赤信号にも何度かぶつかる。これもまた賭けであった。5分、10分、15分、時間だけが残酷に流れていくが車はスムーズに進まない。ようやく道頓堀のそばに来てなんばHatchの姿が見えてきたのは18時50分だった。しかしここにきてまた信号は赤になる。あー、もう!

そこから右折してまた信号が2つ3つあった。いずれも赤信号である。しかし思いのほかパッと切り替わり、やっとやっとなんばHatchの前に辿り着く。タクシーのメータは1700円だった。

ここでも1000円札を2枚出して、

「これで!助かりました!」

と言い残してすぐに車を飛び出して走った。タクシーに乗っておつりを出さなかったは、これが生まれて二度目のことである。しかし、行きのタクシー代だけで400円か・・・。

ここまで来てやっと落ち着いてきたが、まだ走る。会場前にある階段が憎たらしい。そうしてやっとなんばHatchに入る。チケットをドリンク代500円を払い、エスカレーターもまた走る。ここでいったんトイレに入りドリンクを交換して、チケットを取ってくればBさんと合流する。やっとやっと座席に辿り着いた。この時点で18時57分、開演3分前であった。本当にギリギリの線であったが、職場から90分でなんばHatchに行けることを身をもって証明することができたわけだ(だからといって何も意味はないけどね)。

チケットでと引き換えたビールを飲みBさんとしばし談笑をして、ようやく気持ちも落ち着いてきた。正直いってこんな体験、ライブそのものよりもずっとスリリングだった。やはり私は開場1時間くらい前には大阪に着いて、周辺をフラフラしたり食事を済ませながら会場入りするというのが似合っている。もうこんな思いはしたくない。

さて今回のツアーであるが、会場は全て前方がイス席で後方が立ち見という形式になっている。そうなると必然的に収容人数も減ってしまうが、それでも当日券が出ていなのは少し寂しかった。ちなみに私は前から4列目の中央よりやや左よりという良席である。それもこれもFC枠を持っているBさんの計らいであるが。

ライブが始まったのは19時2分ごろだったろうか。アンデスの民族衣装のような格好をしたBONNIEが登場して”Stand Up!”の演奏が起きたらイス席のお客も立ち上がる。こちらはもう開演前から疲れているという感じだが、座っているとステージが見えなくなるし一緒に立つことにした。前回はアコースティック主体の演奏だったのでずっと座っていたのだが。

そこから”Animal Rendezvous”、”Mountain High”と新作アルバムから立て続けに演奏されるのは予想通りとして、それ以外の曲はけっこう意表を突かれた。「Just A Girl」(01年)より”コイン”、そして「Even So」(04年)から”The Answer -ひとつになる時-”と、アルバム発売寺のツアーしか歌っていないであろう曲も出てきたし、また赤髪だった頃の”Fallen Sun”と”He”については、当時のライブを観てない自分としては嬉しかった部分もある。

色々と考えた選曲だったなとは感じる。感じるんだけど、この内容で初日から千秋楽まで貫き通すというのもどうかなあ、と疑問も消えることはない。また、19曲の演奏のなかで新作は10曲と半分以上を占めるのだが、ライブ映えしそうな2曲(”ナツガレ”と”Baby Baby Baby”)を歌わなかったのかがどうにも不思議だ。個人的にはこの2曲は聴けるかなあと思っていたのだが。Bさんが初日の感想をブログで書いていて、

「予想の斜め上を行くセットリスト」

書かれているけれど、そう言われても仕方ない内容ではあるだろう。そんなわけで、楽しく観ていた部分もあるのが、なんともやり切れないような不完全燃焼という感じで終始ライブを観ていた。

印象的な場面を挙げると、”Bad Bad Boy”の時にバンド・メンバーの男性4人(Bad Bad Boys)のうちドラムスの白根賢一とギターの八橋義幸が上半身裸になって演奏していたこと、そしてそれが終わったらまた何事もなかったようにシャツを着直していたのがなんとも可笑しかった。それからアンコールの”Forget Me Not”ではメンバー全員がギターを持って(八橋だけ弦が8本あるマンドリンのような楽器を持っていた)演奏をするというジャム・セッションのようなことをしていた。あとは、”Animal Rendezvous” でのBONNIEが猫の手のようなポーズをとった(「Animal」だからだろう)のが可愛らしかったなあというところか。ずっと評判悪かった音響については、やはり去年から改善されたか、一つ一つの楽器が前よりクッキリと聴こえていたような気がする。

実際に自分がライブを観るまでセット・リストは知らないでおいているが、今回はあの”Heaven’s Kitchen”をしなかった、という情報だけは入っていた(というか、某所をクリックしたら目に飛び込んできた、というのが正確な話なのだが)。しかし今夜は最終日ということもあって、2回目のアンコールの際に飛び出してしまったのである。この曲で締められると俄然、いつもと内容は変わらなかったかなあ、という印象が強くなる気がする。こうして2時間ほどのライブは終了した。

終わってからしばらく会場前にいると、15人くらいのファンが入口に記念写真を撮っていて驚く。いつもはそんな人たちはいなかった気がするが、どうしたことだろう(Bさんは、最終日だからじゃないの、と言っていたが)。私の横では、いままで観た中で一番良かったですよ、と実に満足そうな表情をして話している男性もいる。こうした人たちをなんとか繋ぎ止めるようなライブもしないといけないが、果たして彼らは2度、3度とこれからも足を運んでくれるのだろうか。そんなことを心配する立場でもないのだけど、彼女のパフォーマンスが悪いとかそういう話ではないので問題は余計根深い。

そこからBさんやMさんを含めて5人で打ち上げをし、12時近くまで飲んだ。もはや京都まで帰ることもできなくなった私は今回、鶴橋にあるBさんの部屋に転がり込んでしまった。そこBONNIEのシングル”オレンジ”(95年)のプロモ盤などを見せてもらったり、Bさんの大好きなバケットヘッドの動画を一緒に観たりしているうちに午後3時となり、そこで就寝となった。最後に本日の曲目を記す。
※他の会場も曲目は一緒だそうです。ただ、東京2日目は2回目のアンコールで”Rumble Fish”を、大阪では”Heaven’s Kitchen”がありました。

【演奏曲目】
(1)Stand Up!

(2)Animal Rendezvous

(3)Mountain High

(4)コイン

(5)The Answer -ひとつになる時-

(6)My Angel

(7)Fallen Sun

(8)Passive-Progressivism

(9)He

(10)A Perfect Sky

(11)Bad Bad Boy

(12)Tiger Lily

(13)街の名前

(14)冷たい雨

(15)Don’t Cry For Me Anymore


<アンコール1>

(16)Forget Me Not

(17)Happy Ending

(18)Change

<アンコール2>
(19)Heaven’s Kitchen

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