音楽産業というものがどうなろうとCDの売上げが落ちようと、個人的にはもはやどうでもいい。そんなことを先日の日記で少し述べた。しかしながらまた音楽に関する「暗いニュース」が目に飛び込んできてなかなか興味をそそられたので、同じようなテーマになってしまうが書かせてもらおういと思う。

出典元はニュースブログ「サイゾーウーマン」の

<やっぱりお寒い音楽業界 AKB48、CDバカ売れの陰で、新人アーティストは「初回プレス50枚」の現実>

であった。

http://www.cyzowoman.com/2013/02/post_7915.html

題名を見ただけで内容の想像がつくと思われるが、2012年度のヒットチャートはAKB関連とジャニーズ関係だけで埋め尽くされるという結果になっている。そうした状況の中でこれからデビューする新人アーティストの扱いはかなり悲惨なものになっているというのだ。

<「先日ソニー・ミュージックエンタテインメントからデビューすることになった新人アーティストですが、CDの初回プレス枚数はたったの50枚だったそうです。これはつまり、CDのヒットや売上などはまったく視野に入っていないということ。今は、音楽配信が主流ですし、それでもあえてCDを作ったのは、CDジャケットを制作するデザイナーや、プレス工場に仕事を与えるためでしょうね。50枚といったら、試聴機用や各テレビ・ラジオ局に配布されるプロモーション版と変わらない枚数で、大型のタワーレコードや新星堂に1枚ずつ置かれれば、すぐになくなくなってしまいますよ。こんな時代にデビューするアーティストは、正直不幸だと感じます」(レコード業界関係者)

 かつてノンタイアップの新人の初回プレスというと、およそ3,000〜5,000枚というのが相場だった。しかし現在は、その1/100程度の枚数しか作らないというのだから、もはやインディーズどころか、路上アーティストの見本盤や、身内で交換するため作られたオリジナルCD-Rのような感覚だ。>

ご存知のようにソニー・ミュージックエンタテインメントといえば音楽会社でも大手になるけれど、「CDの初回プレス枚数はたった50枚」というのである。こんな枚数では見本として関係各位に送ったらおしまいではないか。これでどうやって広報宣伝を展開しようというのか。

そもそも大手のレコード会社からデビューするのは、大きな資本力と幅広い流通網や広報媒体が背景にあるからだ。しかしCDのプレス枚数がインディーズ並み、しかし経営方針は変わらず無意味でくだらないプロモーション活動を押しつけられるとしたら、もはや何のメリットもないだろう。しかしそれでも、ソニーから出たい!とか思うミュージシャンもいるに違いない。

しかし、そんなことを考えているうちに、

「あれ?これって音楽業界に限らず、どこの産業でも同じ状況では?」

という思いに至った。これは全ての衰退産業が辿る道ではないか、と。

ある企業の売上げが頭打ちになるとする。そうなったら経営陣が真っ先に考えることは各種経費の削減だ。儲かっている時は調子に乗って営業規模を拡大したものを縮小しようとする。支社や営業所を削減し生産量を少なくし、それにともない人員も切っていき、それでなんとか持ちこたえようとする。新しく打つ手がなければ、9割9分の会社はこうしたやり方をするだろう。

焦った経営陣が考えることは、ただ一つである。

「せめて現状維持を」

しかし、そうなると会社の中はどうなっていくか。まず、「経費削減ありき」で仕事をするため、業務内容もいきおい後ろ向きなものになっていく。新しいことをしようにも「経費がかかる」という理由で採用されない。

一番つらいのは、これは私がかつての職場でさんざん押しつけられた業務であるが「辞めたいけど辞められない業務」というものである。経費がかかるばかりで「不良債権」としかいいようのない業務だが、取引先との関係上(ひらたく言えば「お付き合い」というやつだ)続けざるをえない。ある程度の規模の企業になるとそういうわけのわからない仕事も存在するのである。

悲惨なのは、その現場担当者である。頑張って遂行しても全く評価のされない仕事を、しかも「経費を削ってやれ」と現状のわからない無能な上司(これも「不良債権」だ)に命令され、あとは全ての業務を現場担当者に丸投げする。これで上司の仕事はおしまい。

こうして私はつぶされました。めでたし、めでたし。

というのは全くの余談だが、そういう経験からいえばこの現在に大手企業へ志望することにはあまり賛成できない。待遇はどんどん悪くなるうえ、つまらない仕事しか残っていないだろうから。

しかし世の中がどんどん不安になっていけばいくほど、若い方にも安定志向、いや「安定幻想」といったものに取り憑かれているような印象を受ける。しかしさきほど取り上げたソニーの新人アーティストの現状を見ていると、現実には「安定」なんてもはや無いぞ、と繰り返し言いたくなってしまうのだ。

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