ふと頭から湧いてきた「自己責任論」
先週に引き続き3連休であるが、ゆっくりできる経済的な余裕もないので土曜日だけ休みにした(先週も同様)。台風が迫っていた1週間前とはうって変わって快晴だし、部屋にこもるのももったいない。そこで午前10時ごろ自転車で平安神宮方面へと向かう。

ラーメン激戦区で知られる京都にあって1軒、うどんで気を吐いている店がそこにある。「山元麺蔵(やまもとめんぞう)」という名前で、訪れるのは実に数年ぶりだ。かなり前から行列のできる店となっており、それゆえ土日や祝日に行くことはなかった。かつては平日に休みを入れ、開店時間直前にスッと入るということをしていた。混雑もそれほどでもなかったからである(最近はどうかわからないけど)。

「早めに行った方がええんとちゃう?」

連休前に勤務先の人とそんな会話をしていた。それで開店時間(11時)の30分前くらいに店へ行ってみることにする。早めに訪れて良かった。すでに店の前には10人以上も並んでいるではないか。もっと遅れて来ていたら余計に待たなければならなかっただろう。

「入店まではざっと1時間くらいかな」

そんな勘定をしながら、カバンをから本を取り出して待っている。すっかり朝晩は寒いくらいに涼しくなっているけれど、昼間はまだまだ暑い。お店もその辺りは配慮していて、並んでいる間に注文を確認するだけでなく、待ってる人に冷たいほうじ茶を出したり日傘や団扇を渡したりしていた。ここまでする店はあまり思いつかない。

開店時間を過ぎてからも列はなかなか解消されない。ラーメンと比べてうどんは茹でる時間もかかるかもしれないが、回転率が悪い理由はおそらく他に大きな原因がある。本を見ながら時おり行列を見ていると、外国人観光客、カップル、そして家族連れが目につく。2人以上のお客は一人と比べて座る時間も長いのは必然だ。

ようやく入店できたのは11時40分くらいだったか。入るなりお店の人が、

「すいません・・・相席でしたらすぐご案内できるんですが・・・」

と申し訳なさそうに言ってきた。別に抵抗もないので、

「それでお願いします」

と答えてテーブル席に着く。向かいにいる二人のお客は外国人だった。その二人が食べ終わって後にしたら、

「すいません・・・また相席でもよろしいでしょうか・・・」

とまた困った顔でお店の人に言われる。

「はい。どうぞ」

と私は即答した。

それから3分くらいでうどんが出てきた。

「早く食べないといけないかなあ」

と頼まれもしないのに、さっさと目の前のものを片付けた。そして席を立とうとしたら、

「あの・・・一口ですが杏仁豆腐です。あと、お茶のおかわりはいかがですか?」

とお店の人が小さいお鉢に入った杏仁豆腐を持ってきたではないか。

「ああ、お茶はもう大丈夫です」

と言いながら、杏仁豆腐を3秒で食べて会計を済ませようとしたら、

「相席にご協力いただいて、ありがとうございます」

と店のご主人が頭を下げてきた。もう何年も行列が続いてるというのに、こうした姿勢は信じられない.むしろこちらの方が恐縮してしまう。

「いえいえ。数年ぶりに来ましたけど、相変わらず繁盛してますね」

と笑顔で返してお店を後にした。1時間待ったものの、その接客の素晴らしさにまた近いうちに訪れたくなった。

ただ実際のところ、昨夜は遅くまで飲んでいたせいもあったかもしれないけれど、待っている間は日差しがけっこう体にこたえた。それでも入りたいから勝手に立って待っているわけで、これは自己責任というものである。

しかしながら、炎天下の中を小さい子が黙って待っている姿はなんとも痛々しい感じがする。この子たちは親に強制的に連れられてきたわけで、そう考えると余計に暗い気持ちになる。小さい子がラーメンやうどんをそこまでして食べたいとは到底思えないし。

少し前に音楽ライターの山崎智之さんがロック・フェスティバルについて書いた記事を思い出してしまった。

「ロック・フェスは幼児虐待の道具になっていないだろうか」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamazakitomoyuki/20130807-00027092/

<幅広い年齢層をターゲットにした、自然との調和を図るフェスティバルということで、近年は親子連れも目立つようになったフジ・ロック。ベビーカーをガラガラ押しながらステージを移動する姿は微笑ましいが、ハッキリ言って、この環境はかなり苛酷なものだ。降りしきる雨、時に顔を覗かす灼熱の太陽。大人でもキツイのだから、子供にとってはそうとうな試練であることは間違いない。しかも子供たちは音楽が好きで自主的に来ているわけでもなく、親に連れてこられただけだ。

ベビーカーにかけられた雨よけビニールの向こうにいる幼児の立場になってみよう。激しい雨がビニールにぶつかって、視界を閉ざされ、大音量の演奏と観衆の声援が耳をつんざく。しかもそれが何時間も、普段の就寝時間をはるかに過ぎた深夜まで続くのだ。初日、ナイン・インチ・ネイルズ終演後の午後11時半過ぎ、興奮に瞳孔を開かせながらベビーカーを押す父親がいた。その手首には、3日通し券のリストバンドがあった。これは幼児虐待といえるのではないだろうか。>

ロック・フェスとはだいぶ毛色は違うけれど、行列のできるラーメン店なども家族連れで行くにはあまり相応しくないのではないか。外で1時間とか待つのはなかなか辛抱がいるし、端からみれば滑稽な姿でもある。だからこそ、誰かを道連れにするような真似は避けなければいけないだろう。家族で来るなと言うつもりもないけれど、正直いって「他に選択肢があるのでは?」という疑問は抱いてしまう。

私がよく訪れる某ラーメン店は小さい子を連れたお客は入れない。いままでは「横暴なルールだなあ」とちょっと苦々しく思っていたけれど、今日になってそういう理屈もなんとなくわかる気がした。

さきほど私の後ろに並んでいたのは若い夫婦で、男性の方はまだ立つこともできないような子どもを胸に抱いていた。その子はやはり待つのが苦しいのか、しばしば泣きわめいている。

その声を後ろで聞いていた私は、

「ああ・・・あなたは不幸な星の下に生まれてきたのかもしれないねえ」

と頼まれてもいないのに、その子の将来を案じてしまった次第である。

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