170センチ後半はある坊主の男性が勤務先に現れたのは9月の後半からだったろうか。主婦の方ばかりのパートの中にあって、その長身でエプロンを着て作業する姿はなかなか異様なものがあった。年齢はまだ20歳だという。

就業形態もちょっと変わっていた。始業時間は私と同じ午前7時からだが、11時になったら「お疲れさまでした」と、いったん勤務先を離れてしまう。そして午後4時、私の業務が終わる頃にまたやってきて作業を再開するのだ。内勤の仕事が終わる午後7時まで働くらしい。

なぜこんな形になったかといえば、勤務先では朝のパートの他に午後に入れる人間も同時に募集をしていたからである。朝の勤務で応募してきた坊主の彼が面接をした際に、じゃあ午後の方もどうか?とボスが切り出して「します」と言ってこうなったらしい。

しかし、こんな歪な勤務形態がそれほど長くは続かなかった。勤務してすぐの金曜日、そして週明けの月曜日と立て続けに休んでしまう。

「I君(坊主のこと)、今日も休みだってさ。どう思う?こんなんじゃ計算が立たないじゃない!」

現場責任者の一人が、昼間の休憩所でややキレぎみにボヤいていた。

それでも坊主の彼はその後も断続的に出たり出なかったりしていった。そうして10月に入った頃、台風が通過するという日の前日だった、彼は「熱がある」ということでまた勤務先を訪れなかった。そうした連絡はボスの携帯に直接かかってくるらしい。

その翌日の朝、いつも通りに出勤すると、

「あの坊主、辞めたで」

と現場責任者の方が言ってきたのである。

「ああ、ついに・・・」

と特に意外とも思わなかった。

「やっぱり朝が辛かったんですかねえ」

とヘラヘラ笑いながら返して終わった。

しかし、あとで別の方から坊主の素性について話を聞いて少し呆れた。

「あの子、土日の水曜だったな、クラブでDJしてるんだって」

坊主頭だから野球でもしてるんじゃないかと勝手に思っていたが、DJだったとは・・・。しかしDJなんて夜行性の生き物が午前7時から仕事をするなんて土台無理な話である。ボスはそのあたりも面接で把握して雇ったのだろうか。それでも採用しなければならないくらい応募がないのか。

理由はどうあれ、朝の人員および夕方の人員を失ってしまった。そして、その代わりのメドもは立っていない。

もっといえば、パートは主婦ばかりなので色々な用事(運動会とか)で休むこともしばしばだ。先日の朝も人がいなくて、職場のボスと上の方が1人、要するに職場の2トップがパートと同じ作業をしていたのである。その光景は牧歌的といえる気がしないでもないが、「大丈夫なのかこの職場は?」と不安にもなってくる。しかし、繰り返すが、もはや私にはどうすることもできない話である。

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