昼の休憩時間は基本的に勤務先の休憩所で過ごしている。そこにはテレビは設置されていない。持っている携帯はiPhoneなのでワンセグ機能も備わってない。よって「笑っていいとも!」最終回を観ることはできない状態だった。

「電気店だったら観られるだろうが、歩いて行ける距離にもないしなあ・・・」

そんなことを考えながら勤務先を飛び出して、歩きながらネットをいじくっていたら、中国のサイトらしきものでフジテレビを視聴することができてしまった。電波が途切れて全てを観ることはできなかったけれど、テレフォンショッキングとギネスブックの受賞の光景はなんとか立ち会えたのは嬉しかった。ただ、日本のテレビ番組をわざわざ中国経由で受信して観るというのは、我ながらややこしいことをしてるなあと感じる。

最後のグランドフィナーレは最初から最後まで通して部屋で観た。過去の映像などで番組を振り返るなどではなく、昼間と同様にダラダラとやっているうちにいつの間にか3時間が過ぎていくという流れは実に「いいとも!」らしかった。そして最後のレギュラー陣全員に感謝のコメントをさせたのは、彼らに出番を作ろうというタモリの配慮だったのだろう。

番組を観ている間、あれこれ頭に思い浮かぶことがあった。「いいとも!」について一番不思議なのは、この番組を一体いつ観ていたのか?ということだった。番組の放送は平日の正午の1時間である。仕事や学校のある人は基本的に観ることはできない時間帯なのだ。いつも観られる立場にあるのは専業主婦や年金生活者、あとはニートくらいだろう。

にもかかわらず、「いいとも!」をそれなりの回数を観ていたという実感が自分の中にある。月曜から金曜まで通して観たことがあるかといえば、それは確実に何度かはあるだろう。

それはおそらく夏休みや冬休みや祝日、または熱を出して学校を休んだ時など学校に行ってない日に観ていたのである。物心がついた時(6歳)から放送が始まっていたので、そうした時期だけテレビを観ていたとしてもけっこうな蓄積はある。年に10回観ていたとしても、ゆうに300回を超えてしまう計算だ。まあ、社会に出てからは全く観る機会は失っていたわけだが。

しかし、休日しか観られないからといって何か過剰な期待してテレビの前にいたわけでもない。昼食をとるかとらないかのボヤーッとした状態のなか、オープニングで”ウキウキwatching”を歌うタモリ、そしてテレフォンショッキングや日替わりのコーナーを眺めていたらいつの間にか1時間が過ぎていく・・・。「いいとも!」を観るというのはそんな感じだったのではないだろうか。

しかし一方、

「オープニングでタモリが歌わなくなった」
「テレフォンショッキングのお友達紹介の直前にCMが入るようになった」
「テレフォンショッキングがお友達紹介の形でなくなった」

という具合に、番組内におけるちょっとした変化に視聴者が反応しラジオや雑誌などで取り上げられて話題になることもたびたびであった。そんなテレビ番組は他に思い浮かばない。そういう不思議な存在感が常に「いいとも!」にはあった。空気のような存在、といえば大仰な表現かもしれないが、あながち間違ってもいないと思う。

しかしそんな「いいとも!」も長寿番組ゆえのマンネリ化を指摘する声も聞かれるようになり、打ち切り説もこれまでに何度となく浮上した。長年観ていた人が世を去っていくためなのか、近年は視聴率も徐々に低迷していく。この「徐々に」という状態は実に厄介だったという気がする。何か新しい試みをしてテコ入れしようと思う一方、長年築き上げたスタンスを崩したらこれまでのファンに見限られてしまうのでは?というジレンマに番組関係者も直面していたと感じるからだ。興味のない人からすれば「オワコン(終わったコンテンツ)」の一言で済む話かもしれないけれど、個人的にはなんだか新聞産業の状況が似ている気がしてくる。そして「いいとも!」は2013年度の最後にその歴史に幕を下ろした。

ネットでは「タモロス」という言葉が目につく(別にタモリ自身が引退するわけでもないので「いいともロス」あたりが適当な表現だと思うが)。さきほど書いた通り、昼間に仕事や学校のある多くの人たちは番組が観れるわけでもないし大きな実害があるわけでもないろう。

にもかかわらず私自身、

「今日からは、もう、正午に”ウキウキwatching”が流れないんだなあ・・・」

といった喪失感にとらわれていることに気がついた。それは何十年も壁に貼っていたポスターをはがした時に出てくる真っ白な跡を眺めるような、そんな感覚に近い気がする。

「いいとも!」の終了によって、この32年間という時間の長さ、そしてテレビを取り巻く環境も凄まじく変質してしまったことに嫌でも気づかされてしまったということなのだろう。

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