野々村竜太郎議員は「15分間の名声」を手に入れたのか
2014年7月6日 時事ニュース7月2日の早朝、テレビから何かうめき声のようなものが突然聞こえてきて驚かされた。野々村竜太郎・兵庫県議会委員の記者会見である。
https://www.youtube.com/watch?v=kV28Nk0bQJY
Facebook上で誰かが、
「この国にはもう芸人いらないな」
とつぶやいていたのが印象的だったが、私も久しぶりにひっくり返ほど笑った映像である。まあ、「命(政治生命)をかけたパフォーマンス」と考えれば大半の芸人などとは比較にならないものが込められていたのかもしれない。
あまりにも衝撃の強い映像だったためか、YouTubeでの再生回数はとんでもない数になり、その波は国内のみならずイギリスやオーストラリア、ロシアなど海外メディアまで野々村議員の記者会見の模様を取り上げるまでに発展した。英タイムズ紙は、
「温泉スキャンダルでフルスロットルの謝罪」
と題してこの件を紹介していたという。もっともタイムズ紙のこれは誤報であり、会見の要約を読んだ限り野々村議員は実際の会見において謝罪どころか経費の具体的な説明も全くしていなかったようだが。
しかしながら、会見から数日たって少し冷めた視点で振り返ってみると、この一連の流れはなかなか恐ろしい光景に見えてくる。もはや政務活動費がどうとかいった本質的な問題など吹っ飛んでしまい、野々村議員の「パフォーマンス」だけが注目されているのだ。海外メディアにしても野々村議員そのものを取り上げる一方、彼に対するネット(2ちゃんなど)の反応を面白がっているフシもある。
とどのつまり、野々村議員の「パフォーマンス」が素材として面白かったという1点に尽きるのだろう。記者会見が取り上げられて以後、彼の言動を取り上げた「まとめサイト」のみならず、会見の音声を編集した作品までYouTubeやニコニコ動画に出現している。
私が気に入っているのは、ハードコア(?)の演奏に記者会見の音声を巧みに織り交ぜたこれである。
野々村竜太郎議員が叙情系ハードコアバンドに加入
https://www.youtube.com/watch?v=1Yg0EZOMWr4
「ログミー」というサイトには記者会見の文字起こしが載っているが、これも「作品」と言いたくなるものだ。文字化けする可能性もあるが引用してみる。
http://logmi.jp/16387
<※以下、野々村氏が取り乱して号泣しながら話しており、正確な聞き取りが困難なため、聞き取った言葉の表現は編集部の解釈に基づいております。あらかじめご了承ください。
野々村:大人の社会人として、こういうご指摘を真摯に受け止めて、私としては、実績に基づいて、適正……(聞き取り不明)諸実績に基づいて報告しておりますけれども、「議員」という大きな立場から見れば、やはりご指摘を真摯に受け止めて、どこかで折り合いをつけなければ、大人じゃないと思うんですよ! ですから、私はその議員という、本当にもう……小さな子どもが大好きで、本当に子どもが大好きなんで、ですから、もうそういう子ども達に申し訳なくて……。
こんな大人で、県民の皆さま、私も死ぬ思いで、もう死ぬ思いでもう、あれですわ。一生懸命、落選に落選を重ねて、見知らぬ西宮市に移り住んで、やっと県民の皆様に認められて選出された代表者たる議員であるからこそ、こうやって報道機関の皆さまにご指摘を受けるのが、本当にツラくって、情けなくって、子ども達に本当に申し訳ないんですわ。
ですから、……皆さんのご指摘を真摯に受け止めて、議員という大きな、ク、カテゴリーに比べたらア、政務調査費、セィッイッム活動費の、報告ノォォー、ウェエ、折り合いをつけるっていうー、ことで、もう一生懸命ほんとに、少子化問題、高齢ェェエエ者ッハアアアァアーー!! 高齢者問題はー! 我が県のみウワッハッハーーン!! 我が県のッハアーーーー! 我が県ノミナラズ! 西宮みんなの、日本中の問題じゃないですか!!
そういう問題ッヒョオッホーーー!! 解決ジダイガダメニ! 俺ハネェ! ブフッフンハアァア!! 誰がね゛え! 誰が誰に投票ジデモ゛オンナジヤ、オンナジヤ思っでえ!
ウーハッフッハーン!! ッウーン! ずっと投票してきたんですわ! せやけど! 変わらへんからーそれやったらワダヂが! 立候補して! 文字通り! アハハーンッ! 命がけでイェーヒッフア゛ーー!!! ……ッウ、ック。サトウ記者! あなたには分からないでしょうけどね! 平々凡々とした、川西(市役所)を退職して、本当に、「誰が投票しても一緒や、誰が投票しても」。じゃあ俺がああ!! 立候補して!!
この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッア゛ーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!
ですから皆さまのご指摘を、県民の皆さまのご指摘と受け止めデーーヒィッフウ!! ア゛ーハーア゛ァッハアァーー! ッグ、ッグ、ア゛ーア゛ァアァアァ。ご指摘と受け止めて! ア゛ーア゛ーッハア゛ーーン! ご指摘と、受け止めて! 1人の大人として社会人として! 折り合いを付けましょうと! そういう意味合いで、自分としては、「何で、実績に基づいてキッチリ報告してんのに、何で自分を曲げないといかんのや」と思いながらも!
もっと大きな、目標ォ! すなわち! 本当に、少子高齢化を、自分の力で、議員1人のわずかな力ではありますけれども、解決したいと思っているからこそォォ!!
ご指摘の通り、平成26年度には195回行きました。301万円支出させていただきました。日帰りでございました! そのご指摘を真摯に真剣に受け止めようとするから! >
極東の島国の1地方でおこなわれた記者会観の映像が編集され、「作品」として生まれ変わり、無軌道で世界に拡散されて話題をふりまき、そして短期間のうちに忘れ去られていく・・という光景は改めて凄い時代だと感じる。
この流れを見て、ポップアートの巨匠だった今は亡きアンディ・ウォーホル(1928-1987)が残した、
<将来は誰でも15分間だけ有名人になれるだろう>(In the future, everyone will be world-famous for 15 minutes)
という言葉を思い出した。これはけっこう有名な言葉なようで 「fifteen minutes of fame」(15分間の名声)という派生語もできたという。ウォーホルの言葉自体は色々な解釈が可能だが、「15分間の名声」というのは賞をもらったり人命救助などの行為をしたため新聞やニュースで取り上げられるようなことを指す。
参照先はこちら
http://applecheese.blog58.fc2.com/blog-entry-230.html
ウォーホルの手法の一つに、マリリン・モンローやコカコーラといった世間で有名になっているヒトやモノを素材にしてそれを何度もくり返して複製するというものがある。昨今のニュースで話題になったものがネット上で「作品」になって拡散・消費されていくという流れは、ウォーホルに通じるものがあるように感じる。現在の光景を彼が見たら何を思うのだろうか。そんなことも考えてしまった。
野々村議員も、見方を変えれば、「15分間の名声」を手に入れたのかもしれない。だがウォーホルが生きていた時代と現代とでは恐ろしい違いがある。野々村議員
の言動や記者会見の映像、そしてそこから出てきた「作品」の一群は消えることなくネット上を漂い続けるわけだ。
数年経ってからもたとえば街中で、
「あ!あんた。あの時の・・・ちょっと、名前が出てこないけど、アレ!アレ!アレ!記者会見で号泣した人でしょ?ほらほらほら!」
と誰かに言われながら、持っているスマホからYouTubeで記者会見の動画を取り出して見せられる、というようなこともあり得るわけだ。現代における「有名になること」の代償は極めて大きいと言わざるを得ない。私は無駄なリスクは背負いたくない人間なので有名になろうとは夢に思わないし、これからもそうありたいと願う。
それはともかく、もはや野々村議員に関する件は本質が思い切りズレてしまった。そもそも政務活動費に不透明な部分があったということで開いた会見だったのに、彼の「パフォーマンス」の方が話題になってしまった。「政務活動費の責任を取れ」というのならまだ筋が通っているが、「会見の姿が恥ずかしかった」から「議員を辞職しろ」、というのはあまりに惨めではないか。
個人的にはここまで笑わせてもらい、かつ、実害らしきものを受けていない立場からすれば、政務活動費を返して謝罪すればもう一回くらいチャンスを与えてもいいのでは?という思いである(彼が京都府議会議員だったらこうは言ってなかったと思う)。露骨な言い方をすれば、誘拐や殺人を犯したとしてもここまでの報道はされない。サッチー問題(例えが古くて申し訳ありません)でもこれほどまでにはならなったのはネット以前の時代だったからだろう。
今はただ、現在の野々村議員が街中を歩ける状態にあるのかなあ、と他人事ながらそんなことを気にしている次第である。
https://www.youtube.com/watch?v=kV28Nk0bQJY
Facebook上で誰かが、
「この国にはもう芸人いらないな」
とつぶやいていたのが印象的だったが、私も久しぶりにひっくり返ほど笑った映像である。まあ、「命(政治生命)をかけたパフォーマンス」と考えれば大半の芸人などとは比較にならないものが込められていたのかもしれない。
あまりにも衝撃の強い映像だったためか、YouTubeでの再生回数はとんでもない数になり、その波は国内のみならずイギリスやオーストラリア、ロシアなど海外メディアまで野々村議員の記者会見の模様を取り上げるまでに発展した。英タイムズ紙は、
「温泉スキャンダルでフルスロットルの謝罪」
と題してこの件を紹介していたという。もっともタイムズ紙のこれは誤報であり、会見の要約を読んだ限り野々村議員は実際の会見において謝罪どころか経費の具体的な説明も全くしていなかったようだが。
しかしながら、会見から数日たって少し冷めた視点で振り返ってみると、この一連の流れはなかなか恐ろしい光景に見えてくる。もはや政務活動費がどうとかいった本質的な問題など吹っ飛んでしまい、野々村議員の「パフォーマンス」だけが注目されているのだ。海外メディアにしても野々村議員そのものを取り上げる一方、彼に対するネット(2ちゃんなど)の反応を面白がっているフシもある。
とどのつまり、野々村議員の「パフォーマンス」が素材として面白かったという1点に尽きるのだろう。記者会見が取り上げられて以後、彼の言動を取り上げた「まとめサイト」のみならず、会見の音声を編集した作品までYouTubeやニコニコ動画に出現している。
私が気に入っているのは、ハードコア(?)の演奏に記者会見の音声を巧みに織り交ぜたこれである。
野々村竜太郎議員が叙情系ハードコアバンドに加入
https://www.youtube.com/watch?v=1Yg0EZOMWr4
「ログミー」というサイトには記者会見の文字起こしが載っているが、これも「作品」と言いたくなるものだ。文字化けする可能性もあるが引用してみる。
http://logmi.jp/16387
<※以下、野々村氏が取り乱して号泣しながら話しており、正確な聞き取りが困難なため、聞き取った言葉の表現は編集部の解釈に基づいております。あらかじめご了承ください。
野々村:大人の社会人として、こういうご指摘を真摯に受け止めて、私としては、実績に基づいて、適正……(聞き取り不明)諸実績に基づいて報告しておりますけれども、「議員」という大きな立場から見れば、やはりご指摘を真摯に受け止めて、どこかで折り合いをつけなければ、大人じゃないと思うんですよ! ですから、私はその議員という、本当にもう……小さな子どもが大好きで、本当に子どもが大好きなんで、ですから、もうそういう子ども達に申し訳なくて……。
こんな大人で、県民の皆さま、私も死ぬ思いで、もう死ぬ思いでもう、あれですわ。一生懸命、落選に落選を重ねて、見知らぬ西宮市に移り住んで、やっと県民の皆様に認められて選出された代表者たる議員であるからこそ、こうやって報道機関の皆さまにご指摘を受けるのが、本当にツラくって、情けなくって、子ども達に本当に申し訳ないんですわ。
ですから、……皆さんのご指摘を真摯に受け止めて、議員という大きな、ク、カテゴリーに比べたらア、政務調査費、セィッイッム活動費の、報告ノォォー、ウェエ、折り合いをつけるっていうー、ことで、もう一生懸命ほんとに、少子化問題、高齢ェェエエ者ッハアアアァアーー!! 高齢者問題はー! 我が県のみウワッハッハーーン!! 我が県のッハアーーーー! 我が県ノミナラズ! 西宮みんなの、日本中の問題じゃないですか!!
そういう問題ッヒョオッホーーー!! 解決ジダイガダメニ! 俺ハネェ! ブフッフンハアァア!! 誰がね゛え! 誰が誰に投票ジデモ゛オンナジヤ、オンナジヤ思っでえ!
ウーハッフッハーン!! ッウーン! ずっと投票してきたんですわ! せやけど! 変わらへんからーそれやったらワダヂが! 立候補して! 文字通り! アハハーンッ! 命がけでイェーヒッフア゛ーー!!! ……ッウ、ック。サトウ記者! あなたには分からないでしょうけどね! 平々凡々とした、川西(市役所)を退職して、本当に、「誰が投票しても一緒や、誰が投票しても」。じゃあ俺がああ!! 立候補して!!
この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッア゛ーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!
ですから皆さまのご指摘を、県民の皆さまのご指摘と受け止めデーーヒィッフウ!! ア゛ーハーア゛ァッハアァーー! ッグ、ッグ、ア゛ーア゛ァアァアァ。ご指摘と受け止めて! ア゛ーア゛ーッハア゛ーーン! ご指摘と、受け止めて! 1人の大人として社会人として! 折り合いを付けましょうと! そういう意味合いで、自分としては、「何で、実績に基づいてキッチリ報告してんのに、何で自分を曲げないといかんのや」と思いながらも!
もっと大きな、目標ォ! すなわち! 本当に、少子高齢化を、自分の力で、議員1人のわずかな力ではありますけれども、解決したいと思っているからこそォォ!!
ご指摘の通り、平成26年度には195回行きました。301万円支出させていただきました。日帰りでございました! そのご指摘を真摯に真剣に受け止めようとするから! >
極東の島国の1地方でおこなわれた記者会観の映像が編集され、「作品」として生まれ変わり、無軌道で世界に拡散されて話題をふりまき、そして短期間のうちに忘れ去られていく・・という光景は改めて凄い時代だと感じる。
この流れを見て、ポップアートの巨匠だった今は亡きアンディ・ウォーホル(1928-1987)が残した、
<将来は誰でも15分間だけ有名人になれるだろう>(In the future, everyone will be world-famous for 15 minutes)
という言葉を思い出した。これはけっこう有名な言葉なようで 「fifteen minutes of fame」(15分間の名声)という派生語もできたという。ウォーホルの言葉自体は色々な解釈が可能だが、「15分間の名声」というのは賞をもらったり人命救助などの行為をしたため新聞やニュースで取り上げられるようなことを指す。
参照先はこちら
http://applecheese.blog58.fc2.com/blog-entry-230.html
ウォーホルの手法の一つに、マリリン・モンローやコカコーラといった世間で有名になっているヒトやモノを素材にしてそれを何度もくり返して複製するというものがある。昨今のニュースで話題になったものがネット上で「作品」になって拡散・消費されていくという流れは、ウォーホルに通じるものがあるように感じる。現在の光景を彼が見たら何を思うのだろうか。そんなことも考えてしまった。
野々村議員も、見方を変えれば、「15分間の名声」を手に入れたのかもしれない。だがウォーホルが生きていた時代と現代とでは恐ろしい違いがある。野々村議員
の言動や記者会見の映像、そしてそこから出てきた「作品」の一群は消えることなくネット上を漂い続けるわけだ。
数年経ってからもたとえば街中で、
「あ!あんた。あの時の・・・ちょっと、名前が出てこないけど、アレ!アレ!アレ!記者会見で号泣した人でしょ?ほらほらほら!」
と誰かに言われながら、持っているスマホからYouTubeで記者会見の動画を取り出して見せられる、というようなこともあり得るわけだ。現代における「有名になること」の代償は極めて大きいと言わざるを得ない。私は無駄なリスクは背負いたくない人間なので有名になろうとは夢に思わないし、これからもそうありたいと願う。
それはともかく、もはや野々村議員に関する件は本質が思い切りズレてしまった。そもそも政務活動費に不透明な部分があったということで開いた会見だったのに、彼の「パフォーマンス」の方が話題になってしまった。「政務活動費の責任を取れ」というのならまだ筋が通っているが、「会見の姿が恥ずかしかった」から「議員を辞職しろ」、というのはあまりに惨めではないか。
個人的にはここまで笑わせてもらい、かつ、実害らしきものを受けていない立場からすれば、政務活動費を返して謝罪すればもう一回くらいチャンスを与えてもいいのでは?という思いである(彼が京都府議会議員だったらこうは言ってなかったと思う)。露骨な言い方をすれば、誘拐や殺人を犯したとしてもここまでの報道はされない。サッチー問題(例えが古くて申し訳ありません)でもこれほどまでにはならなったのはネット以前の時代だったからだろう。
今はただ、現在の野々村議員が街中を歩ける状態にあるのかなあ、と他人事ながらそんなことを気にしている次第である。
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