現在の勤務時間は午前9時半から午後5時半となっている。何もなければ定時で終わることができるが、作業の進行により6時あたりまで残業をする場合もある。

今日はBONNIE PINKのライブがある。開演は午後7時半だ。ザッと算出したところでは、どんなに頑張っても会場のなんばHatchまで1時間半は必要になってくる。定時になれば開演ギリギリ間に合うかどうだ。残業が生じれば、もちろん間に合わない。

そこで、あまりしたくないが、職場のボスに「予定あるんで、10分でも前倒しで切り上げさせてもらえませんかねえ?」と切り出した。ボスは渋い顔をしたが、じゃあ15分前に出勤したら?という名案が出されたのでそれで進めることにした。

結果として、仕事は8時間後の午後5時15分にキッチリ業務が終了した。水曜日は通常より人が足りないため残業が発生することも多かったが、この辺りで私の運が強かったのかもしれない。すぐに荷物を抱えて阪急の烏丸駅から梅田行きの特急に乗り込む。その時点で5時半だった。よほどのことが無い限り開演は間に合う感じだ。

こうやって時間を工面したライブ当日である。さぞかし私がライブを待ち望んでいたのであろうと思う方もいるかもしれないが、特に何かドキドキしながら電車に乗ったわけでもない。それは会場で出会ったライブ仲間にしても心境は似たようなものだろう。公演直前になっても過去の作品を2、3枚聴く程度であった。この人のライブに過剰な期待を抱くのは実に危険なのだから。

ただ、今回のライブは「デビュー20周年突入」も節目ということもあってか、いわゆる「サプライズ」といえるような企画が発表されていた。

<今回のBONNIE PINK TOUR 2014 "Almost 20"では、遂にデビューアルバム「Blue Jam」収録曲を演奏します!
ただし、各会場ごとにルーレットで選曲されるため、その時が来るまではBONNIEにもわかりません!!


と、公式サイトに書いていたのである。

95年に発表された「Blue Jam」は往年のファンにはかなり思い入れの強い作品で(最初に出したアルバム3枚が特に評価が高いように思われる)、また過去の作品は全くライブに取り入れないこの人にあっては実に貴重な機会なのは間違いない。だが、世間の反応は鈍いようでライブのチケットは軒並み「発売中」である。

しかし、いろいろと思いを巡らせてみれば、それも当然かもしれない。中川淳一郎さんが「ウェブはバカと暇人のもの:現場からのネット敗北宣言」(09年。光文社新書)のどこかに書いてあったことだが、例えばネットで新しい商品を話題にさせるためには、「従来の商品より100倍の◯◯!」というくらいのインパクトが無いと難しい、というのである(手元に本書が見当たらず正確な引用ができません。申し訳ありません)。

その辺りを踏まえると、アルバムから1〜2曲を披露する、という程度で話題を広げるのも難しい時代といえる。やはり「アルバム全曲再現!」くらいをして初めてネットで取り上げられるということだろう。実際、例えば佐野元春が「SOMEDAY」(83年)発売30周年を記念して全曲再現ライブを試みている。いや、もしかしたら、1枚アルバムをするくらいでは誰も驚かない状況になっているかもしれないが。

そんなことを車中で考えているうちに、グッスリと眠ってしまった。気が付けば終点の梅田である。所要時間は40分程度のはずだが、なんだか10分くらい遅れが出ている。アナウンスを聞いたところでは、何か電車の止まる事態があったらしい。寝ぼけながらも急いで地下鉄御堂筋線へ向かい難波駅へ。そしていつも通り「どこは向かえば会場なんだ?」と道に迷いながらなんとか会場へ着く。その時点で6時50分の少し前だったか。開演10分前である。思ったほど余裕がなかったな。

会場入りする前に入口にある看板代わりの電光掲示(というのか?)の写真をスマホで取ろうとしたら、それこそ「Blue Jam」から彼女を見ているBさんが後ろにいた。彼はデジカメで電光掲示を撮影していた。別に運命的というわけでもないが、結果として二人同時に入場となる。

いつもはファンクラブ会員であるBさんに便乗してチケットを取ってもらっていたが、今回は私が勘違いしたこともありファミリーマートの先行予約で買った席となる。勝手に席種が立ち見席と思ってしまい、

「立ち見なら開演ギリギリの入場だし良い番号でも仕方ねえや」

と、さらに勘違いしたためである。実際は椅子を並べる指定席であったのだが。

私が座ったのは「M列」の右側だった。中央より少し後ろというところで、いつものファンクラブ先行と比べるとステージが遠く感じる。そして、イスを並べてみるとなんばHatchってこれくらいしか人がはいらないんだなあと気づき、節目のライブにしてはその辺が少し寂しくもあった。そんなことを思っていたら、すぐ10分ほど時間が経ち開演である。

1曲目は10年のアルバム「Dear Diary」から”Is This Love?”、そして01年の「Just A Girl」から”再生”という流れだった。どちらもアルバムを出した時のツアー以来披露していないような気がするが、相変わらず微妙な選曲という気がする。そして、ライブでは初めて演奏する、というようなことをMCで強調しながら歌われたのがシングル「カイト」(10年)のカップリング曲の”Busy-Busy-Bee”だった。この辺りまできて、「今日のライブも平常運転だなあ」という予測が立ってきた。

遠くからでも表情は冴えていたように見えたし、パフォーマンス自体は悪くなかったとは思う。ライブの節目節目でも、やはり20年目ということを意識している様子もうかがえる。八橋義幸と二人だけで”Grow”を歌ったり、久しぶりにエレキ・ギターを抱えて”Call My Name”を歌ったあたりはそんな気がしたのだ。しかしそれは過去の再現以上のものを見出せなかったのもまた苦しいところである。BONNIE、八橋、そして鈴木正人の3氏での”スキKILLER”のステップは可愛らしかったけどね。

そんなことを思いながら座ってほおづえを突いてライブを観ているうちに、ついに問題のコーナーの登場である。舞台の袖の左手にルーレットが現れた。が、遠くで確認できないものの、ルーレットは何かおかしい。BONNIE本人が、「Blue Jam」は8曲入ってるけどルーレットは6曲しかないという指摘はしないでください、というような説明があった。実際には”Freak”と”Maze Of Love”が抜けていたらしい。よって、これからまだツアーはいくつか残っているものの、この2曲が披露されるということはありえない。

文句を言っても仕方ないけれど、これは「看板に偽りあり」というものだろう。しかし一方、これがBONNIE PINKという人なのかなあと変に納得している自分もいる。

ルーレットは、会場から2人が壇上にあがり矢を放ってもらうというものだった。いずれも兵庫県から来た男性と女性が選ばれたが、二人とも”オレンジ”を当てたいと言っていたのが印象的だった。私はおそらく3回以上はライブで観ているので、”オレンジ”だけは止めてくれと思っていたが。結果として”Scarecrow”と”背中”が選ばれたのにはけっこう安堵した。いずれも私はライブで未見のものだったからだ。

私が彼女を初めて観たのが2000年8月4日であるから、14年目にしてこの2曲を聴けたことになる。そういうことを考えると貴重な一夜であったことは間違いないし、なんだかんだ言っても2曲聴けたのはとても嬉しかったと素直に書いておきたい。

アンコールを入れて18曲、2時間ほどの内容だった。終演後のライブ仲間との打ち上げで、2時間半ほどしてくれたら、という感想を言った方もいたが、平常運転の内容で2時間でも3時間も印象は変わらないような気がすると思ったのは私だけだろうか。

ライブの演出も実にシンプルだったし、デビュー10周年の時のようなシングルばかりをするということもなかった。だから、今日来た人がどれほど満足したのかというと、その辺りは微妙なところだったろう。私もルーレット以外に書くべきものがつかず感想を放置してしまったが、やはり「Blue Jam」の件は記したかったので遅めのレポート提出とさせてもらった。来年はアルバムを出すと言っていたし、2015年もどこかで動く姿は観られるだろう。その時もあまり期待せずに待つころにする。最後に曲目を記す。


【演奏曲目】
(1)Is This Love?
(2)再生
(3)Busy-Busy-Bee
(4)Rise and Shine
(5)スキKILLER
(6)Evil and Flowers
(7)Building a Castle
(8)Only For Him

<ルーレットのコーナー>
(9)Scarecrow
(10)背中

(11)Grow
(12)Home Sweet Home
(13)Fish
(14)Call My Name
(15)Heaven’s Kitchen
(16)Private Laughter

<アンコール>
(17)Tonight, the Night
(18)Last Kiss

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索