友人というほどには親しくないが、ある人が以前辞めた職場に復帰したがって色々と画策しているという噂を聞いた。そしてこのたび、社員としてではなくアルバイトして再雇用されるという結果になったという。

その職場というのは仕事内容は「それなり」のレベル(「よっぽどの人」でなければできる業務)であり、社員とアルバイトとでも待遇はそれほど大きくはない。ただ、そこは人員が足りていない事情もあるため今回のような処置となったのだろう。

しかし、当然のことであるが、職場にいる方々の反応は一様に厳しいものがある。

「あんな仕事、職安に行けばいくらでもあるやろ。なんで戻ってくるんや?しかも社員でなくアルバイトからなんて、ワシなら絶対やらんわ」

まさに、返す言葉もない指摘である。

個人的には、仕事が嫌になって辞めるのはまあ仕方ないとは思う。ただ、かつていた職場に戻りたがるというのは駄目だろう。

以前の職場に未練が出てくるのは、大きく分けて2つの理由が思いつく。

まず、転職先の労働条件や待遇などが以前よりグッと悪くなったという場合である。外的要因というか環境の問題だ。

これについては「リサーチ不足だ」と糾弾するのは簡単である。しかし職安に載っている条件が入ってみたら実際は全く違っていたというのはよく聞く話であり一概に労働者側を責めることもできないだろう。ただ一般論として「転職したら給料が下がる」というのは頭に入れておくべきだ。森永卓郎さんが何かの本で、2回転職すれば年収が半分になる、ということを言っていた。何も実績もない人が転職をするならそれくらい覚悟しておかないと後悔する結果になるのは必然である。また、そういうことが予測できるからこそ昨今のサラリーマンは離職など考えず、「病気」とか色々な手段で会社にしがみついて正社員という既得権を手放さないのだろう。

そしてもう一つ考えられる要因として、仕事でベストを尽くさないまま職場を去ったため不完全燃焼な思いが残っているということがあるのではないか。これはその人自身の中にある内面的な問題である。もしも職場に在籍している間に「やるだけのことをやった」という自信があれば、戻りたくなる理由などあるわけないだろう。

今回話題にしている彼にしても、お世辞にも仕事を頑張っていたとは評価されてない(これは彼を見る人間全ての意見である)。しかし周囲の評価や実績よりも、自分が仕事についてどう思っているがこの点では重要だ。

ニール・ヤングの代表曲の一つである”Hey hey my my”の一節(これは自殺したカート・コバーンの遺書にも書かれていた)に、

“It’s better to burn out than to fade away”(錆び尽きるよりは燃え尽きたい)

という歌詞があるが、仕事にしてもそういう思いで取り組まなければ次にも繋がらないだろう。

私自身に置き換えてみれば、いくつか職場を転々としているが、そこを去るにあたって未練のようなものは一切ない。どこにいっても後悔をしない働き方はしているつもりだ。10年ちかく在籍した最初の会社も同じで、特に最初の4年ほどは業界の歴史でも類をみない工夫(これは誇張ではない)をして業務に取り組んできた。

しかし、ある時にそうした努力をすることをいっさい放棄する。いくら一個人が真摯に仕事をこなしたところでその業界や会社には何も未来がない、ということを悟ったからである。そしてしばらくしてから業界そのものから足を洗うこととなる。

同じ職場に復帰するという彼は、果たして自分のおかれている環境を、また自身の人生をどのように捉えているのだろうか。彼が辞める以前と現在とでは職場はおそらく何も変わっていない。そして彼自身の意識も一緒だとすれば、かつてと同じような結果がほどなくして出てくるにちがいない。

ちなみに彼が辞めた時の話も、かつての日記で触れている。興味のある方はご参照いただきたい。

周囲がよく見えることは良いことなのか、悪いことなのか(2014年11月10日)
http://30771.diarynote.jp/201411100833273805/

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