いま働いている派遣先には、自分のいる部署以外にも派遣社員がいる。そのうちの一人が契約期間を待たずに辞めた、という話を聞いた。表向きの理由は「体調不良」とのことだが、実際は仕事がきつかったからだろう、というのが同じ部署にいる社員の見方だ。

「あの部署はいつも8時くらいまで残らないといけないし、周囲の人も冷たくてね・・・。何かあったら責任押し付けられるし。あと、仕事の内容は正社員と一緒だし・・・」

と、まあ辞めても仕方ないな、という理由をズラズラと並べてくれた。

そして、

「渡部くんも、そっちの部署だったら辞めていたと思うよ」

と最後に言われた。

確かにその指摘は間違っていない。私のいる部署はだいたい定時(5時半)に帰られるし、めったに怒られないし、むやみに仕事を振られることもない。働く環境は他部署とはまったく逆なのだ。そして「これでギャラは同じ」である。

そのおかげで、他部署の派遣社員の入れ替わりは激しいが、私といえば一番長くいる派遣社員になってしまったようだ。

3年以上とどまってる私と、契約期間を待たずに自ら辞めた人とでは、いったい何がどう違っていたのだろう。むろん「自分が優秀だから」などと結論が導き出せるわけがない。さきのように二人の取り巻く環境はありとあらゆる面で異っていたからに決まっている。

「向こうが無能で努力足りないからじゃねえの?」としたり顔で言う人間もいるに違いない。むろん世界は「環境」と「自分」との相互作用で成り立っているのだから、「能力」や「努力」といった本人の問題は必ずある。だが、さきに挙げた通り、職場環境というのは派遣社員の立場でどうにもできる部分は基本的にはない。そして問題の「能力」だが、人間の知能や性格に関する部分は思春期を過ぎて成人になったら安定するようにできていて、それ以後は変わる余地がない。そう考えると「努力」でどうにかなる部分というのはどれほど残っているのだろう。努力と根性を強調する人はいつの世にもいるが、冷静に見てみるとそれは怪しい気がする。

別に私は本人の努力は否定してないし、自分でも日々「それなりに」努力はしているつもりだ。ただ、それで全てが解決するとも思ってないし、できなかったら「全部自分が悪い」と決めつけることもない。なぜならば「努力」などというのは成功要因のほんの一部に過ぎないのだから。

こういう話は絶対に納得しない能力主義者はいつの世にも必ずいるが、そういう人に対しては、

「あなたはもともと有能なんですよ。ワシは、こ・れ・し・か・で・き・ん・か・ら!」

と答えるしかない。

結論をまとめると、自分のできる範囲(これしかできん)を冷静に把握していて、職場環境の全体像をつかめば、自分がやっていけるかどうかの見当はだいたいつくはずなのだ。

さきの派遣社員が次にマシな環境で働ける保証なんてどこにもない。私自身も最初の派遣先は逃げるように辞めていった過去がある(今の場所が3度目)。しかし、もう「これしかできん」の限界を超えたらさっさとそこから退出するのが賢明ではないか。

果たして、先日辞めていった人はすぐに次のところが見つかるのだろうか。まあ、この日記を書き上げた翌日は忘れている話には違いないが。

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