梅雨入りしてから天気が不安定な日々が続いている。夜から降り出した雨は今朝には上がり始め、いつも通り自転車で通勤することができた。その途中のコンビニで昼食を買い、今日も同じくらいの時間に派遣先を訪れて働き出す。そういうなんでもない日であったが、私も含めた職場の人たちは少し違い思いを抱いていたはずだ。

「今日でようやく、アレから解放される・・・」

職場のボスを含めて、そう思って安堵したに違いない。アレとは、日記をずっとご覧いただいている人は察してくれるだろうが、もう一人の派遣社員の体臭である。今日をもって彼は契約解除となり職場を去るからだ。

何度も書いていることだが、「臭い」という理由で契約解除になったわけではないし、おそらくそういうことは手続き的に不可能だろう。派遣社員がするような仕事のレベルを大きく下回る働きぶりだったからそのような結果になったまでである。

彼の働きぶりに関する恐ろしいエピソードとしては、日々の業務で何か書類を書き込む作業が挙げられる。派遣社員が書いたものをボスが見て「なんだこれ?」と目を疑ったという。彼に確認してみると、それはどうも数字の「0」だったが、何か変なのである。他にもそのような数字(?)があったが、もういちど訊いてみると今度はカタカナの「ロ」だったという。

つまり、「0」も「ロ」も、同じように「○」みたいな書き方をしていて分かち書きができないである。これがきっかけでボスは派遣会社の担当者に直接電話を入れて「もう勘弁してくれ、代わりを見つけてくれ」ということで先日決着したようである。本人に契約解除が伝わったのは、ボスが言うには6月20日の時点だったとのことだ。

当の派遣社員といえば、やはり契約解除の連絡にショックを受けたらしい。本人としてはこれからもここで働きたかったからだ。それはそうだろう。彼の1日の仕事の大半は、京都市内に商品を配送する車の助手席に座って待機するだけである。つまり、駐禁対策である(私は無免許なので、残念ながらこの作業ができない)。それで時給は1100円(推定)だから、働く立場としてはそこそこ良い条件ではないだろうか。しかし、紆余曲折あっての契約解除とはいえ、こうした誰でもできる代替可能な業務などいつ失ってもおかしくないと心得ておくべきだろう。まあ、刺激臭を出していても平気な人にはそのような社会を俯瞰するような視点などないかもしれないけれど・・・。

今日は月末のためか、仕事はけっこう長引いていた。定時より30分ほど遅れて業務は一段落する。そのあたりで派遣社員はいつもお役御免となるのだが、なにやら職場をウロウロして帰ろうとしない。この行動は以前から気付いていたが、こうやって終業時間を遅くして残業時間を5分でも10分でも伸ばそうとしているのである。

「もう他の人がしますから、いいですよ」

と機械的に彼に言うと、そのまま黙って職場から去っていた。それが彼の最後の姿だった。

派遣先の社員の人が勤務中にトイレで彼とすれ違ったので、「今日で終わりですよね?次は決まったんですか?」と訊いたそうだ。それに対する返事はやはり「まだ決まってません」ということだった。

「まあ、あんな人ですからね・・・」

と私が言うと、

「またゴミ収集車の後ろに走る仕事に戻るんじゃないかな。似合ってると思うよ」

などとその社員の人が続けた。適当で無責任なことを言うなあ。

またボスはボスで、もう彼を助手席に乗せることがなくなるためだいぶホッとしていた。そう、私たちはあの刺激臭とこの3ヶ月ほど戦っていたのである。そして今日はその戦いの幕が引いたのである。

だが、この戦いに勝った人は誰もいないだろう。確かなことは、仕事を失った派遣社員が一人負けしたということか。

ただ、もう飲み会の席でもない限り、彼についての話題は出てこないに違いない。世間とはそういうものである。

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