国内政治において、多くの国民にとっては不可解な出来事が続いている。

一つは、浜岡原発の停止についてだ。浜岡についてはこれまで経済産業省も電力会社も「安全です!」と言い続けてきた発電所である。そんな浜岡に対して菅直人総理は突然に停止を要請し、なんと中部電力もそれを受け入れてしまったのだ。わけがわからない。

それについて内田樹さんは5月20日のブログで「脱原発の理路」という文章を書いており、こう説明している。

<政府と霞ヶ関と財界が根回し抜きで合意することがあるとしたら、その条件は一つしかない。アメリカ政府からの要請があったからである。>

引用元はこちら:http://blog.tatsuru.com/2011/05/20_0900.php

なるほど。アメリカからの圧力のおかげであって、別に国民の意思が顧みられたとかいうはないわけではないのだ。理由を聞けば実にわかりやすい話である。

そしてもう一つわけがわからないのは、菅内閣に対する不信任案決議に関わる一連の騒動だ。当初はマスコミの多くも不信任案が通るとさかんに言っていたのにあの結果である。

これについては渋谷陽一氏(「ロッキング・オン」代表取締役社長、音楽評論家)が6月3日のブログでこう要約してくれている。

<まず不信任案を自民公明が出そうしたのは、民主党を壊したいから。菅に反発する小沢グループ鳩山グループが反乱を起こしそうだという動きに乗って民主党を分裂させて、自分たちの勢力を伸ばしたかったのだ。次に小沢グループ鳩山グループが方針をいきなり変えたのは、民主党最大の支持基盤である連合が手打ちしろと言って来たから。
民主党が分裂して困るのは連合で、自分たちの力を失いたくなかったから。
何で菅が辞任を匂わしたかといえば、そうしないと不信任案が可決されて自分たちの力を失いそうだったから。>

引用元はこちら:http://ro69.jp/blog/shibuya/52147

なるほど。民主党の最大のスポンサーである連合の介入があったことでこのような急旋回が起きたわけだ。しかし、ここでも国民の声というのは全く反映されていない。

この2つの出来事を見ると、民主党がどこを見て動いているのかが実によくわかる。同盟国のアメリカ(向こうにとって日本は属国だろうが)、また支持母体である連合の顔色をうかがっているのだ。

しかし、こうしたことはいつまでも続くということもないだろう。時事通信社の5月20日における調査では民主党の支持率はわずか10.2%である。菅内閣の「不支持率」にいたっては59.5%に達している。もしもいま総選挙を実施したとしたら、その結果は惨憺たるものとなるのは容易に想像がつく。

たとえ連合がせっかくつかんだ政治力を奪われたくないからと今回の介入に至ったといっても、選挙で民主党が大敗して議席を減らしてしまえば必然的にその力も失ってしまう。そんなことを考えれば、今回の騒動もたんなる内閣の先送り以上のものはなかったのかもしれない。

現在の小選挙区制度のもとでは、かつての小泉政権も民主党もすさまじい結果を出した実績もあるが、その逆の結果も大いにあり得る。よって、議員の選出については国民の力が一番大きいには違いない。ただ、せっかく投票して結果を出してもその先の行動がともなっていないところが辛い。最近の政治を見ていると、誰を選んでも同じ、という虚無主義(ニヒリズム)が国内に蔓延しているような気がする。

もし次に選挙がおこなわれるとしたらどうなるだろう。おそらく全体的に投票率が大幅に下がり、それによって相対的に自民党が少し回復する、というようなつまらない結果が出てきそうだ。しかし、村井嘉浩・宮城県知事が、

<県議選もできないのに、(国政の)選挙の実施は不可能。選挙ができると思っている国会議員には、女川町や南三陸町、気仙沼市に足を運んでほしい>(2011年6月2日10時22分 読売新聞)

と嘆いたように、そんなことをしている余裕はこの国には無いはずである。

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